音楽はPAL版の方が好きですけどね
ローカル・ヒーロー 夢に生きた男
1983年 ビル・フォーサイズ作
ローカル・ヒーロー
イギリスの若手映画マン「ビル・フォーサイス」が脚本も兼ねて監督したヒューマン作品。
本国だけでなく世界中で高い評価を得、多くの賞を受賞している。
コメディ映画だと思ったら意外に騒がしくなく
静かで、どこかほのぼのする爽やかな作品である。
ヒューストン石油会社のエリート社員が土地買収の為
スコットランドの田舎にやってくるという筋。
そこに住む人々は皆、風変わりで、余裕があり、飄々としている。
ただただ美しい海に囲まれ、排気ガスもなく高層ビルもない町並み。
多忙で息の詰まる会社員人生を送っていた主人公は
静かな風土と個性豊かな現地人達との交流を通し、全く新しい「人生」を堪能するが・・・
日本では1985年に東京国際映画祭で初上映。
(審査員が本作品のプロデューサー「デヴィッド・パットナム」だったからか)
そこで好評を博し1986年にヘラルド系統で公開された。
日本公開時「夢に生きた男」なる副題が付けられたが
まさに配給社社員は本作のメッセージを完璧に受け止めていた。
ローカル・ヒーローとは主役の商社マン。
夢に生きた男とはバート・ランカスターである。二人の主役を表すタイトルである。
爽やかと書いたが、イギリス映画ぽいブラックジョークを意識した作りではなく
日本人好みというか素直で真っ直ぐで泣ける映画となっている。
ダイナーストレイツのマーク・ノップラーが手がけた音楽も底抜けに有名である。
日本人ウケ間違いなしの主題曲。青春映画を感じる。
ビル・フォーサイズ自身がイギリス嫌いなので
アメリカ的ストレートさを追求した結果なのかもしれない。
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田舎でユートピアを過ごした主人公は自宅に戻って物思いに耽り
やかましく汚らしい街並みと高層ビル群を、夜空と共に見つめるのみ。
しかし、高層ビルに見る輝きがイヤに美しいのは
田舎で見た煌びやかな海と対になる。どこか皮肉を感じる。
どちらも美しい。しかし生きていくにはどちらかを選ばなければならない。
主人公は結局、現代的でごった返す人工的な輝きを選んだのである。
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雑誌特集
・・・
こういうのを観ると、やはり人間は原点回帰しなければならないとか考えますね。どっちが幸せなのか。
原点回帰とは、原始時代とか。
物が溢れていても人間の心は豊かにはならない。
本来固めるべきでない物事をガチガチに縛り付けて「常識化」する現代。
まさしく、現代は「ロボット化」時代なのである。
庶民が奴隷だという流れは変わっていないが、昔の方がラフだった。現代は息苦しい。
ともかくユルく、いや、好き勝手に生きていく事こそ
人間の未来というお題目なんだと思う。22世紀にはドラえもんが誕生して働かなくてもよくって〜みたいな。
まあ、少なくとも「どちらかを選ばなくてはならない」という時点で息苦しい。
ここにきて「人間らしさ」とはなにかと。
人それぞれの答えが出ると思うが、少なくとも
現代社会が「人間らしさを守るシステム」を構築しているか否か。
これを肯定する人は少ないんじゃないか。人間らしさとは集団組織と、個人の自由の二つを意味する。
現代はストレス社会だと言われている。それもこれも抑圧と、我慢比べのせいだ。
好き勝手に楽しみだけを授受する人生こそ
今まさに望まれる、我々が作っていかなければならない社会なのだ。
それが出来ない限り「ロボット化」の時代は終わらない。
本作はロボット時代へ大いなる警鐘を鳴らしている。
フォーサイスは我々の「夢に生きる為」の行動を望む。
主人公(ローカル・ヒーロー)は集団か個人の自由か、どちらを選ぶべきか揺れているのだが・・・。
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人生を自由に、思うがままに、つまり「本気で生きている」人間は
周りの常識や目線を気にしない。
もったいないし、そんなこと気にしていられないからである。
たった一度の人生というが、まさしくソレ。
何をしようが失敗しようが恥をかこうが
自分の人生に一切負い目を感じる必要はないのである。悪いことしてなきゃ。
本作の主人公が都会に戻ったのが「体面を捨てられなかったから」
だったとすれば本作は、そういう部分
「人生を本気で生きているかどうか」にも注目を浴びせているのである。
人目を気にせず好きに生きて「やりきった!」と死んでいく、こういう人生こそ
夢に生きた男・・・つまりは、バート・ランカスターが表現したところなのである。
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地味なオンリーワンキャスト達
バート・ランカスターは当時、本作で唯一名のある俳優であった。
この頃は病気がちで仕事は選り好みでやっていたが、本作に出演したという事は
ビル・フォーサイスの脚本が如何に優れていたかを証明している。
俳優ピーター・リーガートと元コメディアンのキャパルディは個性的な容姿をして
いかにもな3枚目調子を見せつけるが、突き抜けない。
そう、極端すぎないコメディ容姿は爽やかさと温かみ、そして親しみを感じさせる。
デニス・ローソンの出演はまさに名キャスティングである。
スターウォーズで人気を博し、舞台やTVで活躍していた彼は
実を言うところコメディ役者だった。
準主演作品は本作が初。
本作を経て、役者としてもコメディ野郎としても一本立ちをしていくのである。
デニス・ローソンの特集具合はまさにファン感涙。
若くて格好良いデニス・ローソンが見れるのは(国内では)本作だけ。
ビクター役のクリストファー・ルジツキが
ハートウォーミングを内包する温厚な大男を演じた。
定住がなくフラフラとしており、余り責任感を持たないあっけらかんとしたキャラクターは
マッキンタイヤが望んだ「自由」を体現している。
パーティーで歌を披露する場面は何とも言えぬ哀愁があった。
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DVDについて
DVD
最初にイマジカから出たDVD買って、それがオリジナルだと思っていたら実は早回しだった。知らなかった。
だからリマスター版買って、音楽がえらくスローなので「遅回しもあるのか」と驚いていた。
私からしたらPAL版、早回しの方がマークノップラーの主題曲はしっくりくるんだよね。
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