これは白昼夢か!? 大統領の息子が激突するケネディ暗殺の謎と罠!
〜大統領の堕ちた日〜
              1979年  ウィリアム・リチャード作     

大統領の堕ちた日



リチャード・コンドンの同名小説を元に製作されたブラックコメディ。 1974年に出版されたこの「winter kills」はケネディ暗殺に関する様々な陰謀を 大統領の兄弟の架空の物語に絡めたもので、物議を醸した。 本作は本編より製作エピソードの方がおもしろいと言われている。 「大統領の堕ちた日」はケネディ暗殺事件を発端に描かれるブラックコメディであるが 製作中のエピソードはそんな元ネタよりずっと「危険」である。 まず本作は予算関係なしに金を使いまくった結果3回破産した。難産だった。 本作のプロデューサー、ロバート・スターリングとレナード・J・ゴールドバーグ(1946年生まれ)。 スターリングは後にマリファナの密輸で40年の刑を宣告され ゴールバークは借金の返済をせずマフィアに殺害された。 本作は闇が深い。2003年に本作のドキュメンタリーが公開された。 1979年に公開され、コケて日本では劇場未公開。 公開直後からアメリカでカルト映画の烙印を押された本作のキャストは 我等が三船敏郎を筆頭に、ジェフ・ブリッジス、ジョン・ヒューストン、アンソニー・パーキンス、イーライ・ウォラック リチャード・ブーン、スターリング・ヘイドン、ドロシー・マローン、エリザベス・テイラー という超弩級の俳優陣をはじめ、スタッフに「ディア・ハンター」の撮影監督ビルモス・ジグモンド 音楽に「アラビアのロレンス」のモーリス・ジャールを起用。   そんな神々と闇深いトラブルと脚本をまとめたのが新鋭監督ウィリアム・リチャード。 ドキュメンタリーをはじめ監督としても脚本としても認められた男が、この狂気のフェスティバルの音頭をとった。 結果、本作が最も有名な映画となり、以降ほとんど監督作はない。 しかも何が悲しいって、彼が最も知られたのは映画作品ではなく 「マイ・プライベート・アイダホ」に俳優として出演したことだろう。 1982年に本作の権利を再所得し、再編集、再リリースをした。 この版が日本で1983年に発売されたビデオであり、現在世界で鑑賞できる版である。 なお劇場公開時にはエリザベス・テイラーのシーンはカットされていたが再編集により復活。 だからどうという話ではないが、この映画はかなりおもしろい。お上品なカルト。


物語



1960年2月22日、ペンシルベニア州フィラデルフィアを訪問中に、米国大統領ジョセフ・キーガンが狙撃者に射殺された。 その後の連邦捜査では、犯人はウィリーアーノルドという名の銃手であると命名された。 19年後、ジョセフの半兄弟であり裕福なキーガン家の相続人であるニック・ケガンは 石油タンカーに乗っており、そこで友達であるキーフェッツが アーサー・フレッチャーという重体の男をヘリコプターで運んできた。 運ばれたフレッチャーは、 1960年に彼と別の銃手がキャスパーJr.という男に雇われ、ケガン大統領を暗殺し、 アーノルドを騙し利用したと伝えた。 フレッチャーは、フィラデルフィアのエングルソンビルの903号室の暗殺で使用されたライフルを隠したと言うが ニックが彼に質問する直前、フレッチャーは怪我で死ぬ。 ニックと彼の友人であるウォルト・ヘラーはフィラデルフィアに旅行し、フレッチャーが言ったように、 隠れ場所からライフルを発見し持ち帰ろうとした。彼らがそこから去るとき 自転車でガムを噛む子供連れの若い女性が通り過ぎ、 数秒後に狙撃兵がニックの仲間を撃ち殺す。     パニックになってニックは 公衆電話で父親に電話をかけようとするが、代わりに彼の主任会計士ジョン・セルティに接続される。   ニックが事件と彼の居場所を報告し、セルティは助けを送ることを約束するが ニックが車に戻ったとき、ライフルは既になくなっていた。 ニックは父親・キーガンのカリフォルニアの砂漠にある土地へ行き タンカーから勝手に帰ったことで叱責される。ニックがフレッチャーの話とフィラデルフィアでの事件を報告すると ニックが暗殺の陰謀を解決するのを助ける事を約束する。   キーガンはニックを政治的ライバルでありアメリカで最も裕福な男の1人であるZK・ドーソンに会わせる。 ドーソンは、フィラデルフィア警察署長ウォルター・ヘラーとロイドティの死には関係ないと語る。 帰りの飛行機で飛行機と激突しそうになる。   キーガンはニックに フレッチャーの話の記録者であるキーフェッツともう一人が不思議な状況下で死んだことを告げた。 次にニックはドッティと出会う。 ドッティは、フレッチャーの話に出てきた男、キャスパー・ジュニアが ジョー・ダイアモンドを通じてフィラデルフィア警察とつながっていたことを思い出す。 ドッティによれば、ダイヤモンドは警察署へのアクセスを求めて ヘラー大佐を買収し、大統領暗殺後にウィリー・アーノルドを殺害できるようにした。   ギャングスター・ゲームボーイベイカーは暗殺を手配する。 大統領がマフィア200万ドルキャンペーンへの寄付に好意を返さなかったからである。 そしてアーノルドは暗殺者の身代わりだった。 ダイヤモンドはアーノルドの殺害から4年後に刑務所で亡くなった。 ニックはガールフレンドのイベットに 雇用主のナショナルマガジンを通じてジョー・ダイヤモンドに関する情報を 追跡するよう依頼します。 彼女はニックをオハイオ州クリーブランドのダイナーに行かせて、 そこでギャングスターのアーヴィング・メンターと出会い、情報提供のため賄賂を贈る。   メンターによると、キャスパー・ジュニアは、ハリウッドスタジオに繋がっていたため暗殺された。 ハリウッドスタジオは、大統領と関係していたスターの一人が自殺したことで5000万ドルを失ったからである。 ちょうどその時、フィラデルフィアでの銃撃の前に現れた 自転車に乗っていた同じ女性が、死んだ猫をメンターの食堂に連れて去ったのを見て   ニックが彼女を追いかけて外に出た瞬間、ダイナーは爆発した。 ニックはニューヨークに戻り、そこでキーガンはメンターの話を暴き ニックのインタビューのために休暇を与えられた囚人のギャング、フランク・メイヨーと会うように命じる。   ニックは騙されているとメイヨーが示唆すると、ニックはナショナルマガジンの本部に向かい、 イベットが実際には従業員ではないことを知る。後に、イベットのアパートのドアマンは、 彼女がそこに住んでいないと主張する。 帰国後、ニックはキーフェッツを見つけ、キーフェッツは自分の死を偽装したことを認め、 ニックにセルベッティのつながりを使ってイベットを見つけるように勧める。 キーガンの財務本部で、セルッティはニックに、 イベットがキャスパー・ジュニアによって誘拐されたことを伝え、 暗殺の新しい情報を語る。セルッティによれば、ワシントンDCのローラ・コマンテという名の女性は 大統領に女を提供しており、メイヨーと彼のマフィアの仲間から200万ドルを彼に寄付した。 ローラの目的はキューバの奪還だったが、失敗した。   そして大統領がキーガンが取引の背後にあることを発見したとき 彼はキーガンを財政的および感情的にも立腹し関係を断った。 そしてセルティはニックがタルサで不正なZKドーソンに会うよう手配したと告白。 本当のドーソンと娘のイベットは、暗殺の真の犯人だた。以前マギー・ドーソンとして知られていたイベットは、 大統領の愛人だった。ニックはセルッティに、イベットの居場所を聞く。 ニックがバトンでセルティの腕を攻撃して骨折させると、セルッティは、 キーガンが経済的に利益を得たために息子の大統領職を支援するために数百万ドルを費やしたと言い そして大統領の自由主義政治に不満を抱き殺害した、と語った。 キーガンはニックを混乱させるために手の込んだデマを作成した。 これには、イベット役を演じるジェニー・オブライエンという女優の雇用も含まれる。 セルティ、ジェニーは遺体安置所に「いる」と言い ニックはそこで彼女の遺体と対面する。 しばらくして、ニックはキーガンのオフィスで彼と対決する。 キーガンは、セルティがキーガンの財源を増やす暗殺を首謀し、自分を脅迫したと主張。 ニックが警察に電話をかけようとすると、キーフェッツと警官がキーガンのオフィスに侵入してきた。 ニックはキーフェッツが自分を助けるためにそこにいると考えた。 しかしキーガンは、キーフェッツはニックを殺すよう命じた暗殺者だ、と言う。 ニックは自分を守るために警官を押さえ、銃を使ってキーフェッツを撃つ。   ニックはキーガンを追いかけて高層のバルコニーに行き そこで彼が巨大なアメリカ国旗のレールに掴まっているのを見る。   ニックがキーガンに手を伸ばすと、彼はニックに声をかけながら旗を半分に引き裂く。 「ブラジルで一旗あげろ!」キーガンは落下死した。   ニックはよろめき、しかし、彼は家族の絆から逃れることができない。、 キーガンの建物を去ると、彼は自転車に乗っている女性と最後に出会う。 ラスト、ニックはイベットの留守電で、最後にもう一度彼女の声を聞く。  


以上本家wikipediaのスクリプトをグーグル翻訳で貼り付け、なんとか読めるようにしたもの。

ボンボンの主人公が、最後には全てに裏切られ、去られて哀愁を漂わせるというのは 「ロング・グッドバイ」とか「3000キロの罠」を想起させる。どっちかっていうと3000キロの罠の方。 兄ジョセフの死を探り、仲間は死んでいく。しかしその仲間は兄の死に関与した男たちだった。 彼女もいた。激しいセックスと男気で仲が深まったと思ったら実は彼女はスパイだった。 信頼する父もいた。だが父が兄を殺していた。金の亡者だった。ジョセフもまたそれなりにあくどい。 上のスクリプトには載っていなかったが、彼の母親は精神的に弱っていた。 彼女の自然死はキーガンからあっけらかんと伝えられる。複雑な金持ち家族。 黒人の殺し屋に殺られそうになる。女でメイドだったが、それこそ雪降る夜の出来事。 決定的な場面、タイトルはここである。ニックは何度も消されそうに・・・いや これがターニングポイントだったのである。

あの子供連れの母親。彼女等は事件関係者の口封じと ニックが事件から退いてくれるよう派遣された人間なのである。 最初の殺しではニックだけ生き残った。ヘラーは死んだ。そこで笑っている彼女等を見る。 疑心暗鬼になるニック。ダイナーで見た彼女たち。当然ニックは彼女たちを追いかける。 その直後ダイナーの客、情報提供したマフィアの一群も抹殺される。 それでも死なないニック。そもそもニックを殺す気はない。殺し屋もなんなく撃退。あとは謎解きだけ。 しかしそこで彼女ベネットが消える・・・。

この映画は「化石の荒野」に似ている。事件の顛末がその箇所その箇所で 一気にズラーッと、しかも初めて出てくる男たちの名前で溢れるから、追いつかない。 実際の事件を知っていればある程度は分かる・・・のかな? そもそもこの映画が「どんな映画なのか」コレが分からないから最初はキツかった。 完全架空の映画なのか、それとも事実を入れ込んだ映画なのか・・・入り込みにくい。 一応ブラック・コメディらしいのだが、まあともかく本作で何を伝えたいとか そういうメッセージ性は作中一切ない。ただ不思議な感覚で推すだけ。 そう、この映画は権力どうこうでなく 屈折して独り立ちする一人の男の物語なのである。 成長劇・・・苦すぎる。甘ったれのボンボンの巣立ちの為に 数多くの人間が死んでいったと考えると、切ない。 まあコレを気にニック君は、それこそ南米で一旗あげるぐらい逞しくなるんだろう。 ワケわからんけど、妙に頭に残る映画であります。  

主役のジェフ・ブリッジス。俳優一家。ロイドブリジッジスを父に、ボーブリッジスは兄。 タフガイのイメージだが、本作では図体だけでかいボンボン役を爽やかに演じる。

 

キーガン役を演じるのが監督ジョン・ヒューストン。これがスゴイ。 「黄金」や「白鯨」など男のドラマを仕上げる巨匠。彼が事件の黒幕をコメディ調に演じる。

 

主任会計士セルティをアンソニー・パーキンス。名優である。 サイコ、キャッチ22などの問題作やオリエント急行殺人事件など50を越える映画に出演。

 

ダイアモンド役にイーライ・ウォラック。「荒野の七人」等で有名な重鎮。

 

戦車を乗り回すコメディマン・ドーソンにスターリング・ヘイドン。 キューブリック初期の相棒であり「ゴッドファーザー」にも出演した渋いスター。

 

ニックの母・エマを演じたドロシー・マローン。「風と共に散る」でアカデミー助演女優賞を獲得した名女優。

 

キーフェッツ役にアメリカの名優リチャード・ブーン。

 

フレッチャー役に「ゴッドファーザー」で有名なジョー・スピネル。

 

イベット役に新鋭のベリンダ・バウアー。モデル上がりで知的な容姿を武器に女優デビュー。 意外にも本作のようなカルト映画で人気を掴み、のちTVエアーウルフやロボコップで有名になる。

 

ベイカー役に名脇役、ラルフ・ミーカー。

 

ヘラー大佐役に「荒野の七人」でおなじみブラッド・デクスター。当時はプロデューサーとして活躍。

 

そして大統領の愛人役にエリザベス・テイラー。顔がみえない大統領役にリアル議員、ジョン・ウォーナーを起用。

そして我等が三船敏郎はキーガン家の召使役。

  は?日本人の誇りをどこにやったトシロー、ギャラが良かったか。犬の名前は「将軍」。パラマウント。 珍しく肉声で英語を話す。この稀代の大スターの出演も本作のカルト化に拍車をかけている。

DVD。ユニバーサルからPAL版(早回し)が出ており かつて発売されていたVHSでしかマトモに楽しめない状態が続いていたが 角川から2018年に発売された版は、97分尺となっており、マトモ。これ買おう。


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