1995年ベストテン3位(KAMIKAZE TAXIと同着)


 

渡辺武信


『GONIN」には不満もないでもないが、旬の役者多数を巧みに使って映画的な場面を作り出した腕力を。 評価したい。石井隆は本誌前号の山根貞男との対談で 「意識的に長回しを抑制した」と、それが不本意な妥協であったというニュアンスで語っているが、この映画ではそれが確実にプラスに作用していると思う。ヒッチコックだって長回し好きだったのだから、メジャーの求める娯楽性と長回しが矛盾するわけではなく、要は素材との関連だろう。 石井隆のこれまでは「絵で決める」意識が強すぎて(つまり劇画的で)、それが石井フリークには受けたが、私は流れにいま一つ乗れないことがしばしばあった。それが『GONIN』ではカットを割ることによって「つなぎ」によるリズムと流れが生じてきて、うまく乗れた。少なくとも私のようにハリウッド文法で育った観客にとっては、石井隆が監督として一皮剥けたように思って嬉しく、今後もハードボイルドと感傷の融合した作品を期待する。 『幻の光』は、『GONIN」の「技術的には欠陥があっても映画を豊かにとらえている」 姿勢の対局に位置する。
 

なみおか映画祭


なみおか映画祭の顧問?弁護士・三上は、『死んでもいい』の時もそうだったが、「GONIN」を見たあと、ちあきなおみのCDを買いに走った。そして『愛の新 世界』では山崎ハコの「今夜は踊ろう」を、「冬の河童』であはグリーグのピアノ曲「抒情小曲集」劇作家の「抒情小曲集」を劇作家の長谷川も同様に、「ちあき・根津ラインよりも石井・ちあきラインなのだろう」とあいかわらず分からぬことを呟きながら初めてCDシングルを買い込んできた。
 

伊藤雄


石井節のメロが抑えられて、弾ける男たちにぶっ飛んだ。
 

谷岡雅樹


例えば暴力に対して、笑いに対して、その他の文法や問題に対して、同じように実感しながら、真剣に白け、覚めた興奮を、予定内の熱狂を楽しんでいたのだと思う。ワーストはその予定にすら(あらかじめ空けて待っていたにも拘らず)入ってこないのである。
 

阿部嘉昭


その不安美において石井隆の劇画では『魔樂』に対応する作品だと思う。 最近の日本映画や香港ノワ ール起源の映画の成果をこの作品は異常に鏡面反映させているが、それゆえに先行起源は熾烈に滅却されて いる。
 

赤池偉史


『GONIN』には、メジャーの場で堂々と陰性(マイナー)をやるという石井隆の確信犯的裏目志向といったものがよく出ていると感心した。本誌前号の山根貞男との対談を読んだら、実際は確信犯どころではなかったようだが、石井自身による脱石井の努力があったにせよ、にもかかわらず石井らしさは稀釈されなかった。だから不入りだった、ということにはならないはずだ。 やっぱりオウムのせいだろう。地下鉄サリンの直後では映画館には入りにくい。『死んでもいい』の石井だけになおさらだ。


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