プロデューサー 鶴見辰吾 監督 牛山真一 インタビュアー 木村奈保子

あの鶴見辰吾君(「翔んだカップル」 「いとしのエリー」「名門!多古西応援団」)が自ら製作費をかき集め、映画製作にチャレンジしたといえば、個人的ファンであることをさし引いても興味をかきたてる話題のひとつ。

「不倫映画やお化け映画もいいんですけどネ。それもあってもいいと思うんですけど、もっと違うものがあってもいい。 今、芸能界で一番ハツラツとしていなきゃいけない僕たち20代の俳優の、生かせる場が本当になくなってきてるな、と思うんです。 みんな自分なりに芝居や演技の持論や主張を持ってるのに、それをぶつける場所がないんです」

これが、青春映画「卒業プルーフ」を 生むキッカケとなった史上最少年(22歳)プロデューサー、鶴見辰吾のメッセージだ。 映画は、大学の卒業記念ダンスパーテ ィーを控えた前日、恋に悩みつつ堂々めぐりの4人組と、カンニングがバレて呼び出された6人の生徒たちの1日を描いて見せる。 ネライは、ジョン・ヒューズ監督作品 「ブレックファスト・クラブ」「プリテ・イン・ピンク」そしてブラット・パック派の代表作「セント・エルモス・ファイアー」といった、今アメリカで注目されている青春路線。 さて、この種の感覚をいかに自分たち流に表現できたか。完成後の鶴見プロデューサーと、35ミリ映画としてはデビュー1作目となった牛山真一監督 (27歳)に聞いてみた。




木村 鶴見さんも、どこかに出演しているかなと楽しみにしていたけど結局ワンシーンも登場していなくて…。今回は全くプロデューサーに徹していたということですか?

鶴見 自分で脚本のチェックやら、それから、弁当の値段から俳優のギャラの計算までやっていたからね。自分が出る神経とか、ちょっとなかった。それで今回は、 自分でいろいろ総合的なこと考えながらね。図々しくみんなの中に混ざってしまいすぎるってのは、どうもできなかった。 こういうセリフはこの人には言えないから、こういう風にしようなんて言うチェックをしたから。 自分が井坂珍この前で芝居するってのは、どうも照れ臭いしね。まあそういうところもあって。

木村 でも、俳優をやってる時と違って何か面白かったでしょ?

鶴見 面白いことは、面白かったですね。

木村 価値観が変わってくるようなことは?

鶴見 いやあ、そんなことはないですよ。俳優の時は俳優の時です。 台本貰って仕事の内容がまるで違いますからね。

木村 キャストを考えるのは、どうやって?

鶴見 もうほとんど牛山さんと二人で…。友達ばかり寄せ集めちゃったかなっていうところもありますが・・・笑

牛山 でも本当に僕は楽しかった、だって彼の友達はみんなテレビ出てるでしょ。僕の方の友達は全然出てませんからね笑

木村 どちらかというと、映画全体よりはなんか登場人物のキャラクターが印象に残るんですね。 役柄と俳優はどちらが先行してるんですか?

牛山 実は、みんな初めにキャストが決まってたんですよ。

鶴見 俺はみんなにお前が主役だって言ったんだ。

牛山 そう。皆に主役だ、主役だって声かけて集めてきちゃったもんだから、脚本作るとき困りましたよ。

木村 でも、今回はスタッフも友達だったり、世代も近いし、彼らもやりやすかったんじゃないですか?

牛山 それはあると思いますよ。特に、一番大人でいなくちゃいけないようで、まだはしゃぎたい年代ですからね。 そこで同世代のスタッフとかキャストが集まって、誰にも気兼ねしないで芝居できますから。俳優さんたちみんな楽しそうでしたね。

木村 とすると、役者さんの方から、こうやりたいとか、自主的に演技してる?

牛山 ええ。とにかく自由に。逆に言うと、こっちがたきつけてやるぐらいに「もっとやって」「もっとやって」って言って。

木村 ロッカーのジョニーは、いまいちノれなかったけど、比企理恵ちゃんが断然個性的で、光ってましたね。

牛山 と思います。やっぱり実力がある子にとってみれば、こたえられないんじゃないかな。今回のやり方は。

鶴見 開口一番、いじめ役だけはやめてくださいって言ってたね(笑)

木村 ラスト近くのシーンで、彼女がみんなの前でポツンと語って聞かせるお話がよかったですね。 いつか舞台に立ちたい、と夢見ている女優サンが年齢を重ねていっても、そのひたむきな思いは変わらないというような意味の・・・ つまり、社会における杓子定規な概念にとらわれず、自由な心もちで生きていきたいという彼女自身の思い入れがあったようで・・・。

牛山 あれは鶴見君が書きなおしたところなんです。俺の書いたセリフが気にくわない、って言って。 理恵ちゃんに見せたら後の方がイイっていう。俺もそうだろってスゴスゴと・・・笑

木村 お二人はずい分イキがあってるんですよね。最初、だから牛山さんのこと、「鶴見さんのマネージャーですか?」ナンテ私声かけてしまって、ごめんなさい (笑) どんなふうにして組むことになったんですか?

牛山 はっきり言うと、辰吾君が僕に声をかけてくれなかったら、こうして監督していつの日に立てるかわからなかったわけですよ。

鶴見 同い年位の自主映画出身の横のつながりで牛山さんを紹介してもらったんです。 最初の予算から行くと「そんなギャラ高くとるやつなんかダメだよ」って言ってたんだけど・・・。

牛山 そう。誰がやってやるかと思ってたんだけど、会った瞬間に手を握り合って「やろう!」って。 ほとんど森田健作さんの世界みたいになっちゃった。もともと、学生時代に彼の出た「翔んだカップル」が好きでね。 ビデオも買ったんだけど、そのモノマネとも言われる「ハートじかけのオレンジ」を16ミリで撮って、シネフェアの作品賞、監督賞をとったりしたこともあったんですね。 そういう縁もあったのか、会ったとたん「あ、映画と同じ顔してるゥ!、かわいい顔してるナ」とミーハー的に思ったりして・・・(笑) 今回は、そういう彼との出逢いから上映に至るまで、本当に「明るい農村」じゃないけど、人と人との触れ合いで、ここまで来たというかんじですね。

木村 いつ頃だったんですか、スタートの話は?

牛山 去年の10月頃かな、それで今年の一月に予算が出てきて、これで何ができるだろうかって・・・。

木村 鶴見さんが、お金を集めてきた?どうやって?

鶴見 あのォ。サルまわしとか・・・笑 知人知人にあたったりしましてね。映画に明るい未来を与えてくれるような人を探しまして…。まぁ、日本もGNP 今世界第一位なんですから・・・。

牛山 おい。これキネ旬だから(笑)

鶴見 金持ちの方、いっぱいいらっしゃる。一生懸命説得すると時々お金を出してくれる方がいらっしゃるんですね、今、ちょっと流行みたいなところもあるし。 「うちだって映画ぐらい作れるんだ」っていう企業のイメージのためにもね。何十億という税金を納めてるくらいなら、映画で使った方がいいんじゃないかと説得したり。 でも言ってるんですよ。「映画じゃ儲かりませんよ。変な見返りを期待しないでくださいよ」って。

牛山 でも本当に今、映画って難しいんですね。作ることもそうだけど、写すこともこんなに厄介なことだとは知らなかった。 「竜二」や「狂い咲きサンダーロード」とかの上映にあたって横で見てた時期がありましたけど、ピンと来なかったんです。そのときは。 今回、当事者になって初めてわかりましたね。

木村 これだけビデオ時代になっても、やっぱり劇場公開にこだわります?

鶴見 それはビデオ化権が上がるからね(笑) やっぱり映画を使ったからには劇場で観てもらわないとね。ビデオ時代なんて、おかしいですよ。 便利だけどね。「トップガン」とか、テレビで見てどこが面白いんですか。でっかい画面で観ないとね。 そういう風に撮ってんだから。映画館に行くには映画館で行くなりのルールがあるんです。 切符買って、混んでるか混んでないか調べて、そして入ってポップコーンを食べるにしても音はたてない。 自分の好きな席に座って、たまに変なおじさんも来てたりとかね。 いろいろルールがあるんですよ。それをね、何か一生懸命作った映画を、気軽にビデオ屋で借りてね、パジャマで観るなんてね…。

牛山 それ、自分のことだろ?(笑)

木村 やっぱり、映画青年なんですね?

鶴見 映画館行くときは、ひとりで行くんです。

牛山 彼は日本アカデミー協会の会員だから、定期券持ってんですよ。

木村 実際に観るのは洋画が多いんでしょう?

鶴見 そうですね、観る場合は。作る場合は、邦画じゃないとできないんだけど…。

牛山 「俺は日本映画嫌いだ!」なんて言って、自分が作ったら邦画なんですからね。考えると、みんなアレ不思議ですよね笑 でも20代の青春映画がないというのはサミシイな。そういう企画が出て来ないのが。 ある程度力があって、それでいて若さもある。そのはじける部分と大人の部分が共有した主人公が出てくる青春映画を観ると、 やっぱりいいナ、羨ましいナと思う。アメリカ映画のエミリオ・エステベスやモリー・リングウォルドちゃんのものを観てるとね。

鶴見 だから今回、自分たちでグラウンド借りて野球やろうという感じで始めたんですよね。 20代の出番がなくなってきちゃったんで。僕らでこういうのやろって…。

木村 それが、この映画だけじゃなく、一つの流れになる可能性もあるわけだしね。 そういうこと言ってても、実際に形にする人は少ないんですから、やったことに意義がある!  ただ、アメリカのブラットパックものと違うのは、男女の人格がもっとハッキリしていて互いにもっと踏み込んで行く迫力があるんだけど、その辺は?

牛山 それはやろうと思えば劇的なシチュエーションになるから、それは僕たちも頭がいいですし、そんなことは十分計算しています。 ただそれを日本人として考えたときに、そこまでね。「ヒポクラテスたち」の中で思想的に対立するっていう、ああいうカタイ奴もいたけどね、僕たちの学生時代は。 でも今の連中は、そんなことないし、逃げちゃうんですよ。相手を傷つけないようにするっていう日本人のひとつの人間学だから。 それを否定しちゃうのはイヤだったんですね。いいじゃないですか日本人は、それはそれで。 よくアメリカ人が訳知り顔でスポーツ新聞の裏に「日本人のマナーってなってないわ」って書いてますよね。 「バカヤロー、だったら日本に住むんじゃねえ。バカヤロー」と言いたくなるんです。

木村 ――だから日本人は前向きな議論が出きない。それは日本人を否定してるんじゃなくて、マナーを批判してるんです。 それでも、やっぱりアメリカ映画は面白いと思ってるわけでしょう?

牛山 それはそうなんですよ。要するに、日本人は一見「和」を大切にするようでいて、他人に対して無責任、というか無関心に装った方が傷口が少ないわけですね。 相手に土足で出しゃばっていくというのは、相手の世界に入ってゆくわけだから、その言葉に対しても相手に対しても責任をとっていかなくちゃいけない・・・。

木村 でも、それをやるから筋が通ってゆくわけでしょう、アメリカ映画は? だから日本人にない部分であっても、共感させられる力を持ってしまう。 だから、表面的なものでなく、もっとこのあたりの押しみたいなものを吸収してもいいんじゃないかと…。

鶴見 今回はやっぱ、一日の話でいきなりそれを皆にやらせると、最初からそれを言うために登場してきたようになっちゃう。 まあ、あれでもかなりやらせている方なんですよ。 例えば実際ああいう場所っていっぱいあると思うんですね。免許証の免停になった講習とかでも誰もしゃべらない。 まぁ用事が済んだら、すぐ帰っちゃうんですよ。そんな日常からすると、あれだけの会話をどうにか向こうの映画に近づけようと・・・。

牛山 だからそこが逆に決定的な違いだから、例えばコミカルなシーンとか、表面的なシーンというのはいくらでもマネできるけど、 根本的なところっていうのは違うと思うんですよ。 だから「ブレックファスト・クラブ」「プリティ・イン・ピンク」を参考にしながらも、本質的なところは違うんだ、って思って作らないとみもふたもないから、 そういうふうに作りましたけどね。 決してただ単位コピーしたわけじゃないっていう…。それなりに似たような学生たちに置き換えて作ってもそこが一番違う。 でもそこがまた、日本人のいいところでもあり・・・。 向こうの人たちのそれは、映画的にはいいとしても、身の回りにあんな何でもかんでも人に俺がちょっと言ったら「バカヤロー、違うよ、何言ってんだよバカヤロー」 なんて言われたら、生きてゆくの辛いですよ、そんな。かえって日本人の方がいいってところがありますよ、疲れたときなんかは。

鶴見 レストランで注文して、エビとカニを間違えてカニが出てきたら、アメリカ人なんかシェフ呼んで「俺はエビを頼んだのに、どうしてカニが出てくるんだ?」って言って、 もう一回作り直して出させたりするでしょう。日本人なんて「まァ、いいじゃないか。味ならエビでもカニでも変わらないや」っていう。

牛山 そこが日本人のいいところだから、そういうところを生かしていきたかったんですよ。

木村 うーん、私にはそのあたりの感覚が消化不良になっちゃうんですね、ちょっと。日本人批判をやりたいわけではないけど、 映画としてのシチュエイションがあった場合、もっとシビアに挑戦してもいいんじゃないかな。

牛山 確かに木村さんがおっしゃるように、ガチーンとやっちゃうと、劇的に盛り上がるんですけどね。 だけどそれが「生きる」とか「死ぬ」とか言うところまでいけば、やれるんですよ。 それは日本人だろうと、アメリカ人だろうと万国共通ですよ。 そうじゃない問題に関しては、やっぱり僕たちや今の学生さんたちは、そこまでいかないでしょう。

鶴見 森田健作さんがやっていた頃の青春映画とかね、テレビ映画なんかかなり闘わせて言わせてるよね。

牛山 カッコイイお説教みたいなセリフが出てくるんだけど、どうしてもお説教されるとね、そいつをチャカしたくなるんですよ。

木村 今の時代は、ちょっとそういう傾向があるようなところもありますね。それが分かっていれば、こういう語りっぽい映画はむつかしいかも、日本では。 むしろパロった方がいい。まァ、いずれにしても、この映画はこれまで手が付けられなかった青春映画なんだから、そういう意味では、注目してほしい気がしますね。 この種が一本登場したことによって、一つの流れになれば、これは映画界への大きな貢献と言えるでしょう。これを機に是非、新しい風を送り込んでほしいと思いますね。


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