若き剣豪対談
小林勝彦さん三田村元さん時代劇の顔はどんな顔!!
明日の大映時代劇を背負う若きホープ二人が「先輩を追いこすように努力しようよ!」と張り切る「チャンバラ談議」です!
頑張れ!追い越せ!
小林 どうだい、ちつとは馴れたかい、自分の顔に。(と、いうのは、三村さんは前作「風と雲と砦」で生やしていたヒゲをやつと剃ったばかりでした)
三田村 うん、撮影がアップして、はじめヒゲを剃ってビックリしちゃった、「これがオレの顔か」つて....。(笑)そして今度の「木曽ぶし三度笠」のヅラをつけてまたビックリ(笑)鏡の中に他人がいるみたいで、どうもボクらしくなくつてなじめない。
小林 永かったものな、「風と雲―」の撮影・・・。
三田村 でも、ボクのような無精者にはよかったよ、第一毎朝ヒゲを剃らなくてもいいので大助かりだった。それにヒゲを生やしている方が、ずっと顔が締って見える。
小林 ヒゲで思い出したが、そのヒゲ面で勝(新太郎)さんやなんかと一緒に遊びに行った時・・。
三田村 ボクに「日本語をしゃべるな、お前を外人という事にしよう」つていい出したのは勝さんだつたな。
小林 「この人は「スパルタカス」に出たメトロのチャールスなんとかいうスタアで、今度日本でロードショウをやるため挨拶をかねて来たんだ」なんてまことしやかにいつたら、女の子たちみんな本当にしちやつてあれは本当に面白かつたよ。
三田村 でも、黙っているつてことはツライもんだね。まるでこんどの「木曽ぶし笠」の中乗り新三だよ。....あの時もうつかり「あのね」といつてバレちゃつたけど(笑)
剣々豪々の立回り談議
小林 弘津組(「寄切り若様」)にも出ることになったんだってね。
三田村 ああ、若様になるんだよ、ボクが・・・・。
小林 恵まれているよ君は・・・時代時へ出て三本目にもう主役をとるんだから。ボクなんか、やつと二十本目ぐらいからだもの・・・・。
三田村 その代り、いろいろな先輩と一緒にいい仕事をしてきたじゃない。
小林 それはそうだな。いい勉強にはなったよ。去年なんか数えてみたら十六本も出たことになる。
三田村 なるほど、立回りもうまくなる道理だよ。セットで勝ちゃん(小林さんのこと)の立回りを見ていると、つくづくうらやましくなるんだ。気持よさそうに、楽しんでやっているみたいだもの・・・。
小林 そう見えるかい。立回りはもともと好きだったのだけれど、はじめはやはり大変だったな。
三田村 ボクも「風と雲ーー」のとき、槍で勝(新太郎)さんを怪我させてしまって、とたんにコワクなったな、立回りが・・・・。
小林 でも君の場合はまたすぐに勝さん怪我をさせられて、まア「アイコ」だから気が済んだろうけれど、ボクなんか先輩の相手役に怪我のさせつ放し(笑)だから「早く立回りがうまくなりたい」というよりも「怪我を少くしましよう」というのが、ボクの悲願だった(笑)
三田村 だがなんだね、スキーやスケートでもそうだけど、最初はガムシャラにやっていて、馴れるに従つて形をととのえて行くのが、やっぱりいいんだろうな。
小林 ほんとだ。まず馴れだね。馴れてくると自然にキマリの壁なども、身についてくるし、独特のクセも出てくるようになる。
三田村 ボクも立回りの練習をやつていて、結構楽しいし、どうやら好きになりそうだよ。
小林 この間の「木曽ぶし――」のセットなんか、君、大した張り切りようだったじゃない・・・・。
三田村 だって、勝ちやんがスゴイして斬り込んでくるんだもの、思わず手に力が入っちゃって・・・。
小林 ツバ迫り合いだから、表情の方で芝居をしておればいいのに、君が馬鹿力を出して(笑)押してくる、ボクも負けまいとして押し返すだろう、一ぺんで刀の銀紙がベロベロにはげちゃって(笑)刀剣係のおじさんがこぼしていたよ。
三田村 ごめん、ごめん。まだ駆け出しでござんす(笑)まだまだ剣豪つてトコじゃないな。
小林 ケンケンゴウゴウの方だね、お互いに・・・(笑)
はるかなるレジャー・ブーム
三田村 勝ちゃんは時代劇ならもうどんな役でもやっただろうな。
小林 そうだね、一人二役までやつたけどね、今度君のやるような若殿はまだなんだ。
三田村 立回りだけでも「風と雲-」の櫛「木曽ぶし――」のやくざ剣法と棒、そして「寄り切り――」では若殿の侍らしいチャンとした剣法を覚えなくちゃならないので、全く大変だね。
小林 ちょうど一年前のボクと道を歩いてるわけだよ。ひまさえあれば、撮影所の俳優会館で殺陣師の人に頼んで立回りの練習だろう
三田村 その通り。世を挙げてのレジャーブームだけど、なかなかわれわれには縁遠い話だな。
小林 でもさ、考えようによっては、スキーやスケートに行くより、楽しいともいえるね。
三田村 ほんとだ。勝ちゃんなんか、多少ひまが出来ただろう。今のところ「木曽ぶし」一本だけだし.....
小林 とんでもない。かえって去年中みたいに三本ダブリでやっていた頃の方がヒマがあったみたいだな。封切が迫っているのでとにかく半日の休みもないよ。人間機関車だ(笑)
三田村 なんのかんのいつたつて、忙がしいのが一番いいんだよ。暇になったらすぐ淋しくなつちゃう・・・。
小林 お小遣いも淋しいもんな(笑)
三田村 とにかく、ボクは遊んだりすることよりも一日も早く立回りやなんか時代劇のいろいろなことを知りたいな。
小林 それもオレのセリフだよ去年ごろの・・・・(笑)同じことをってやがる(笑)
われらの仲間橋クンの魅力
三田村 忙がしいといえば、橋(幸夫)君なども大変だろうな。やれレコードだ、テレビ、ラジオだ、公演だってぐあいに、スケジュールが判ぐらいギッシリなんだろう。そこへ撮影と来ている。今日もボクが東京へ帰っているのとすれ違いだし。
小林 でも張り切っているよ。やはり若さだな。
三田村 年寄りみたいなことを言うなよ(笑)
小林 「潮来笠」の時は、近ちゃん(近藤美恵子)とのからみが主で、ボクと一緒に芝居をしなかったが、こんどはじめてセットで逢つてみて、つくづく好少年だと思つたよ。
三田村 いや、若さだけでない、何か神秘的なものがあるよ、どっか人を惹きつける・・神秘はオーバーだな(笑)
三田村 なんていうかな、そのプラス・アルファは夢とでもいおうまあ、そんな魅力だね。
小林 セットででも、さすがに最初のうちは固かったが、二、三カット撮るとすぐなれてしまって、もうすぐスタッフと冗談なんかいうようになってね。見る見るうちにうまくなっていったよ。
三田村 インスタント・スタアだな(笑)
小林 加戸(敏)先生も感心していたくらいだ。
三田村 やはり、カンがいいんだね。
小林 ズラもよくのるしね、時代劇にはいい顔だよ。歌わなくつても、時代劇の役者一本でも行けそうな子だね。とにかく、純真で可愛いくつて、とても好感がもてるね。
三田村 それも去年ごろの小林勝彦そつくりかい(笑)
小林 映画俳優としても、末おそろしいよ。
三田村 強敵だな。
小林 楽しめるね、これからが・・・。
三田村 それにこの次は「おけさ歌えば」で雷蔵さんと一緒に出るんだが、雷蔵さんもきつと好感を持つだろうな。
小林 大映時代もいよいよ賑やかになってくるよ、ボクらの仲間がだんだん増えて・・・・。
三田村 ほんとだ。
時代劇と現代劇と・・・?
小林 ところで時代劇だが、君はメーキャップなんか、まだ他人まかせかい。
三田村 うん、まだまだ駄目だろうな。やつとおぼえたと思うと次々が役柄が変って行くんだもの(笑)とても化粧筆が動かないや。でもなんだろうな、これからは時代劇のメーキャップも、だんだんリアルになっていくんじやないか
小林 それはモノによるよ。またヅラとの釣合いもあるしね。とにかく、立回りもそうだが、メーキャップも早く自分でやれるようにならないとじゃないね。
三田村 時代劇とちがって、セット開始の一時間も前からメーキャップをしてもらって、衣装部で着物を着せてもらって、小道具係や刀剣部へもまわって・・・・セットへ入つた頃は、もうフーッとなつちやうな(笑)......勝ちゃんなんかもう魅力はないから。
小林 出たくないといえばウソになるけれど・・そりやボクだつって現代の青年だもの現代劇も出来て当然だものな、いまのところは、やっぱり時代のすべて心身につけておきたい、僕はませでいて、子供のころから歌なんかよく見ていて、もともと好きだったんだけど...。君はどうだい。
三田村 京都へ来てつくづく感じたのだが、時代劇の人の方がうまいようだね。ボクも京都へ来たんだから、来た以上は何か身につけてからでないと東京へ帰れないよ。生意気なようだが、出来れば時代劇でも現代と密接したものをやりたいな。
小林 それや、これからの時代劇はそういったものがだんだん増えてくるだろうよ。
三田村 でも、早く時代劇のすべてをマスターして、勝ちやんと五分々々でガッチリと噛み合いたいものだね。まだ半年くらいかかるかな。
小林 でも、オレだってその間に半年分だけ進歩しているよ。それはウサギとカメだな。永遠に追つきつこないよ(笑)
三田村 そんなツメタイといわないで、お願いしますよ、先輩・・・(笑)
小林 いや、しつかりやろうぜ。(笑)