テレビ出身でいらっしゃるわけですがテレビと映画の違いについて。河合 演出法というか、芝居をつけること自体は同じなんですが、やはり映画はお金を出して観に来てもらうっていう意識の違いがありますね。テレビと違って、創る側も観る側も能動的でしょう。お互いのメッセージをお互いに確認し合おうねっていう気持ちがあるわけですから。物理的な違いとしては、撮影期間や製作費、それにスタッフ、キャストの人数などですね。今度の映画にしても撮影期間は約3ヶ月半。合宿している人間が、毎日のべ200人位はいましたからね。そして決定的な違いは、映画は底なしだっていうことでしょう。映画というものにはとことん答えがない。テレビの場合は、ノッている状態が毎日持続するんですが、今回映画というものに初めて触れたわけですが、毎日毎日反省することばかりで、満足するっていうことがないんですね。自分が過去に観て感銘を受けた名作とかが、突然頭の中をよぎったりしましてね。もっともっとやりたい。こうするべきだったなんて思うんです。
竜馬役の武田鉄矢さんについて河合 坂本竜馬”そのものが武田鉄矢さんの夢ですからね。テレビの「幕末青春グラフィティ/坂本竜馬』から4年近く付き合って、さんざん竜馬の魅力につい聞かされてますからね。武田さんの脚本で、これで3本目か4本目になりますから、もう考え方もわかってるし、意気投合する部分も多い。あの人の竜馬に対する思い入れはものすごいですよ。まさに竜馬になりきっている。土佐勤皇派の仲間が、主君の山内容堂に全部殺されて、竜馬がその手紙を受け取って丘の上で号泣するシーンなど、一週間もかかりました。自分で納得するまではやめないんですよ。それから竜馬の写真を見て、自分の顔を似せようとする努力をする。横顔をカメラで覗くと、確かによく似ているところもあるのですが、だからあんなに似てくるんでしょう。ね。とにかく、鉄矢イコール竜馬ということですね。
高杉役の吉田拓郎さんについて河合 彼は、撮影中も終わってからも僕を離さないんですよ。監督のそばにいたら得するっていうことが、よく解かっているんでしょうね。セリフ一つ一つについて考えて、僕に意見を求めてきます。撮影が終わると、その日の反省をするわけ。それで夜10時くらいになると、明日のシーンについて自分の演技プランなり、相手役のことまでしゃべりまくる。僕は早く寝たいのに。とにかく熱心なんです。彼のステージを見ても、地ではなく計算し尽されていると思うんです。すごくチャーミングな、普段見られない表情をする。それをできるだけ、映画の中に生かしたいと思っていました。彼の演じる高杉晋作は、この映画の登場人物の中で一番本物に近いと思う。
この作品の観どころを河合 僕の作品は、観ていてつじつまの合わないところが多いんですよ。今回も、菊池桃子さんが突然出てくるようなところもあるし。観客の期待を裏切りながら話が進んでいくという、だから、観る人によって好きなシーンがバラバラになると思います。僕は俗に言う映像派�≠ノはなれないんですね。キレイな絵を撮って映像派って言われるのなら、その監督はカメラマンになればいいんだから。観客と語っていたいっていう気持ちが強いから、どうしでも真正面から撮っちゃうしね。情景カットなんか一つもないんです。人間が映ってないとイヤだから。観る人は疲れるかもしれないけど。だから、「坂本竜馬物語」じゃない、「グラフィティ」なんですよ時代劇の形をとっているけれど、時代劇としてではなく、現代劇として観てほしいですね。音楽にニューミュージックを使っているのも一つの試みですし。幕末というのは、今の若者にとって一番苦手な時代だと思うんです。それゆえに、この映画を観て坂本竜馬や高杉晋作の生き方に魅かれたら、逆に幕末という時代に興味を持ってくれると思うんですよ。今の我々が、民主主義とか自由だとかって教わっている根源は、幕末にあるわけだから。約3ヶ月間のロケの間に、若い俳優さん達の中に連帯意識っていうものが生まれましてね。時代劇の名を借りた現代劇のロマンを、団体生活の中で皆が見つけたんじゃないかな。作品のテーマが“仲間意識・夢みる素晴らしさ”ってことだから。映画そのもの、つまり画面にエネルギーが生まれてくるんです。それ観る人達が受け止めて、自分なりに発散してくれたらうれしいですね。
今後どのような映画作りをされていきたいですか河合 このグラフィティ路線って結構好きなんですよ。だから次は、「ニッポン青春グラフィティ」というのを撮りたいと思います。幕末じゃなくて、現代でも何でもいいんだけれど。プレスリーの音楽なんか使ってみたいね。そういうものが方向性としてありますね。浮世絵の時代にすごく興味があるから、「ニッポン青春グラフィティ浮世絵」なんていうのもやりたいですね。1947年新潟生まれ65年フジテレビ入社、映画を経て演出部へ