はばかりのモキチ役中尾彬インタビュー

「作品に出ているオヤジたちってのはたけしさんが子供の頃に見ていたオヤジたちの空気感なんだろうね」

2008年公開の『アキレスと亀』、2012年公開の『アウトレイジビヨンド』に続き、北野映画3作目の出演となる中尾彬。今作では、ストーリーにおいて非常に重要な役どころでの出演となっているのだが、8人の大ベテランが顔を揃え、それぞれ個性の強い役柄を与えられた撮影現場は、一体どのような様相だったのか。そして、監督・北野武はどのような撮影をしたのだろうか――。



夢にたけしさんが出てきてたからオファーが来ても驚かなかったね。



この配役について、どう思われましたか?

中尾 「別に、何も思わなかったですね。特に今回は8人で役作りについての話をしたということも一切なかったです。なぜかというと、北野組では珍しく、本読み(台本の読み合わせ)をしたんですよ。これまでの2作品ではやらなかったからね。たけしさんとしては、本読みをすることで、みんなの調子を掴みたかったんでしょう。たけしさんは漫才をやってるから、セリフのテンポとか、間とかを大切にする。やっぱり“ビートたけし”だから、ビートの効いたリズム感だったり、ここのセリフは溜めてくれだとか、そういった指示はありました」

―そういった意味でも、今回の作品は 内容だけじゃなく、これまでと違う”ものなんでしょうか。

中尾 「確かに、本読み一回で“この絵はこうなるんだな�≠ニいうことがわかりましたね。皆さんこの世界で長くやってるから、すぐに理解できたんじゃないかな。全編、下町の口調でね。たけしさんは東京の足立区出身、浅草育ちでしょ。浅草時代のたけしさんも知ってるけど、同じ関東出身者としてはね、そういうニオイというのかな、感じましたよ。オヤジたちが集まって、グダグダ言ってる空気感は、たけしさんが見てきたものなんだろうなって」

――藤竜也さんが演じる龍三が、まるでたけしさんそのものに感じられました。

中尾 「そうですね。いや、8人全員がある意味でたけしさんのような面があったと思いますよ。実は、この話が来る前、夢にたけしさんが3回も出てきました。『あオレ呼ばれたかな』と思って(笑)。だから、キャスティングされても全然驚かなかったんだよね。夢で見てたから。じゃなきゃ、男が3回も夢に出てくるなんて、みっともないだろ(笑)」

役どころで言えば『アウトレイジビヨンド』ではバリバリの現役ヤクザだった中尾さんが、わずか2年半で、引退した老いぼれの元ヤクザでした。

中尾 「オレ、監督に恨まれてるのかな(笑)。過去2作品とも、殺されてるからね」

――今までの北野映画、特に『アウトレイジ』シリーズは怖い、痛いシーンが多かったので、構えて観るという人が多かったかも知れません。

中尾 「『アウトレイジビヨンド』はみんな怖がりましたね。でも『龍三と七人の子分たち』は老若男女問わず、楽しめる映画ですよ。それも単なるコメディではなく、まったく新しいジャンルと言っていいんじゃないかな。ドタバタしていながら、年寄りの切なさというのかな。ジジイというものに着目したのもいいですよね。若い人たちよりも勢いがありますよ。でも、現場で話すのは病気の話なんだよな(笑)。あとは誰と誰が死んだとか、孫の話とか。誰も芝居の話しなんてしやしない(笑)。撮影の後、飲みに行かず『帰って寝ます」だって。だからオレはスタッフと飲みに行ってたね(笑)」

――スタッフの方たちとはどういったお話をされたんですか?

中尾 「今回、カメラマンたちが大変だったみたいだね。これまでの北野映画とアングルが全く違うから。監督はカメラに対してやたら指示をしてましたよ。そのうち慣れてくると、どれだけ早く終われるかが目標になってきた。北野組は朝が早いから、午後になる頃には撮影終了ですから。オレは嬉しいんだけど、監督は俳優の演技について何も言わないから、主演の藤くんは不安だったみたいだね。監督の『OK!』の声の調子で、今の演技がどうだったか判断するしかない。それも、監督は近くにいなくて、ちょっと離れたテントの中。そんなとき、オレがみんなに『OKが出てるんだから、いいんじゃないの?』って言うんだよ。3本目だから言えることなんだけども(笑)」この作品が面白くないって言うんなら日本映画は終わりだと思うよ。

――この作品が日本映画界に与える影響があるとすれば、どんなことでしょう?

中尾 「日本の映画って、今どうなんですか?まあ、この『龍三と七人の子分たち』が当たらないんだとしたら、日本映画はもう作らないほうがいいですよ。昔の東映映画のようなオールスターキャストの大娯楽作。DVDじゃなくて、まずは映画館で観て欲しいよ。歳を取ると映画館に行くのが億劫になるっていう人ばかりだけど、物事に億劫になったらボケちゃうからね。ただ生きながらえてるってだけの年寄りたちが、ヤル気と勇気を取り戻す映画だからさ。日本に年寄りの時代が来るかも知れないね」



まあ観なよ



北野武監督最新作『龍三と七人の子分たち』2015年4月25日(土)全国ロードショー出演:藤竜也、近藤正臣、中尾彬、小野寺昭ほか撮影/松山勇樹



なかお・あきら1942年8月11日生まれ、千葉県出身。血液型O型。1961年、パリに留学し帰国後、劇団「民芸」に入団。1964年、日活映画「月曜日のユカ」でデビュー。1971年、劇団「民芸」を退団しフリーとなる。近年はバラエティ番組に多数出演し、さらに活躍の場を広げている。北野武監督作品は「アキレスと亀』、『アウトレイジビヨンド』以来3作目となる。




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