鳥肌実対見沢知廉廃人演説家、危険な文豪と大いに歓談す??!

見沢 いやぁ、実はまだ一面識もなかったのに、「BUBKA」で二回連続で鳥肌批判をやったところ、なぜか「ガロ」から急に「鳥肌実さんと対談をしないか」って話が来たんで、こりゃ、日本刀持ってくるなって身構えて来たんだけれど(爆笑)。

鳥肌 日本刀!とんでもありません。まずはこれを...(おもむろに菓子折を出す)。私の場合、批判されることが、芸につながる部分が大きいんで、むしろ、批判はどんどんして貰いたいんです。人様が思われることに対して、芸人が文句を言うなんておかしいんです。

見沢 あれを読んで、反論はない?

鳥肌 反論なんてある訳ないじゃないですか。全ておっしゃる通りでございます。ただ・・・あ、いや・・・あの・・・日本刀持ってきてませんよね。「ゆくゆくはタモリを目指しているんじゃないか?」っていうのだけはちょっと違うんですが。

見沢 そうなんだ。そりゃ深読みしすぎたな(笑)。しかし、まぁ、口コミだけで日比谷野音に、二〇〇〇人~三〇〇〇人を動員するっていうのは凄いよね。今、右翼も左翼も何やったって、その半分も人が集まらないからなあ。今は、自分でもひたひたと時代と共震してきているという実感があるでしょ。

鳥肌 いや、私の場合、週末に欠かさず、朝から晩まで街頭で喋り倒したりして、ビラも四万から五万枚撒いてきましたからね。自分では力づくで動員したという感じなんです。

見沢 僕は左と右をやってきた実感で判るけど、そりゃ本当にすごい!

鳥肌 いや、このままではダメなんです!教えて下さい!本物の右翼や左翼のやり方を。

見沢 左右の街宣なら、左がずっとテクニシャン。集会でも駅でもまず入り口でビラを配って反応を見て、すぐに署名隊が住所と名前を書かせて、書いたらすぐに機関紙を売って、会う日時を決めて会ったらもう徹底的に一本釣りでオルグする。これが左のオルグ、セオリーなんだけど、僕が右に移って指導者的立場になってから、何百回もしつこく言ったのに、これが完全にやれなかった。

鳥肌 なるほど・・・私の場合、女性に対するオルグは相当鼻息荒く徹底してやってるんですよ。駅で声をかけたら必ず家までついていきますからね。ただ、男性に対してはまるでやる気が起こらなくて...。

見沢 統一時代の愛国党の元書記長が有名なんだけど、ポスター貼りでパクられた回数が四〇〇~五〇〇回、貼る枚数も尋常じゃなくて、ポスター貼りたこができてる(笑)。「手で貼るんじゃなくて、紙の方が自然に飛んで行くんだよ」って言うくらい。でも全然人は集まらない。鳥肌さんの場合、思想色を前面に出さなかったからアレルギーが起きなかったんだ。今は、思想を出すと全くダメ。「なんとかを打倒せよ!」「突入せん滅せり!」とか言うと見事に誰も来ない。

鳥肌 どいつもこいつも洗脳されてますからね。今の時代、メッセージはいらないと思うんです。

見沢 僕のところにくるファンレターやメールを見ていても、一〇代や二〇代前半はなんだか判らないけれど、今の社会の閉塞感がイヤだということが根本にある。彼らはまず学びたいんで、今までの右や左のスタイルや用語は受け付けないから、新しいものを求めて松下村塾みたいなのからやろうって思ってるんだ。

鳥肌 私も勉強したいんです、基本的なことを。政治のことも、イデオロギーのことも、いや、人間そのものがわからないんです!

見沢 戦後のイデオロギースタイルの全てにリセットボタンを押さなくちゃ。牙まで捨てるという事じゃないけどね。

鳥肌 こわいんです!狙われているんですよ、見沢さん。僕、狙われてるんです。何とかしてもらえませんか。夜も安心して眠れないんです。

見沢 そうそう、どっかで太平洋戦争って言ったとか聞いたけど、右ではその言葉はアメリカの造語だって、タブーだよ。右の論理では、日米戦争はあくまでアメリカから一方的に仕掛けられたモノで、日本の目的はあくまでも大東亜にあったんで、あれは大東亜戦争と言わなくちゃ。

鳥肌 えっ?そうだったんですか?なんて事を言ってしまったんだ(頭をかきむしる)。だ、大丈夫ですかね?怖いんですよ、圧力団体が・・・。見沢さん、後ろ盾になってください!バックが欲しいんです!族でも何でもいいんです。

見沢 (無視して)左右ではまず用語からして違う。例えば、右で街宣って言ってるあれは、左は情宣って言う。あと、貼ってあるやつ、右はポスター、左はステッカー。だから、昔、ケンカで左が「俺達のステッカーの上にステッカー貼っただろう!」って怒っても、右はとうとうなんのことだかわかんなかったりとか(笑)。あと、警察のことは右はデコスケとか公三とか、左は私服とか権力。

鳥肌 僕は日頃、背広にスニーカーを履いてるオヤジを見つけると逃げるようにしてるんです。

見沢 ただ、マスコミの右翼アレルギーはものすごいからね。鈴木なんかも本当に何度も脱右翼宣言っていうのを出し続けているんだけど・・・(笑)。だから、鳥肌さんの場合、テレビはかなり難しい。でも逆にテレビじゃ出来ない芸だからこそ、見に来る価値があるわけだけど......。この先、芝居とか街頭パフォーマンス、お笑いとか色々進む道はあるけど、結局はどういう方面に進みたいわけ?

鳥肌 右も左もないんですよ。ただ美しく・・・三島由紀夫のように。

見沢 三島由紀夫という人は、国際的な作家でありながら、存在自体がパフォーマーだった。又はファシストの<祖>、ダヌンツィオや古代のディオゲネスみたいに一生街頭で奇行続けるとか(笑)。鳥肌さんも芸だけじゃなくて、そういうあぶないところがあるね。それと僕はアジやヘアーとか見て、最初はヒトラーを意識しているんじゃないかと思ってた。

鳥肌 ヒトラーはかなり面白いですからね。嬉しいです。

見沢 森垣さんって知ってる?今、右翼で一番演説が上手い人なんだけど、非常に過激でね。誰かが「鳥肌は森垣をパロってるんじゃないか」って言ってた。ワグナーのBGMの中、スポットライトに照らされて、制服姿の森垣さんが出てくると、圧倒されるよ。今度、一二月八日前後に年一回の大政治集会があるんで、一度見ておくべきだと思うね。

鳥肌 その大政治集会に私も参加させてもらえないですかね。つまり弁の立つ演説家が集うその集会で一番の演説をした者が日本一ということですよね。演説で日本一になりたいんです。見沢さんは講演とかはなさらないんですか?

見沢 最初の頃は河合塾やジャナ専、立命館とかやってたんだけど、二年前に立教大学祭の講演で、演壇に登ったとたんそのまま勢いよく、気を失って倒れて救急車で運ばれたんだよ(爆笑)。

鳥肌 それはすごい演出だなぁ!

見沢 演出じゃないって!(笑)。その時以来、急に長期刑の後遺症が出て、何回か街で気を失ったりしたのに、休まずに仕事を続けていたら無理がたたって、結局、去年は二ヶ月くらい入院するハメになった。左右を超えて親しくしている獄中二〇年の塩見さんも今年、同じ疲れで倒れたし。だから今年表だったところに三~四回くらいしか出ていないなぁ。

鳥肌 それ以降、体調はいかがですか?

見沢 まぁ、復調の兆しがあって、三年近く書いていなかった小説をガロで書き始めたわけ。

鳥肌 読ませて頂きました。「調律の帝国」!すばらしい!あれ以来犯罪が犯せなくなったんです。

見沢 よく、若い人に、「見沢さんの本は警視庁の防犯ポスターよりずっと犯罪の抑止力になります」って言われる(笑)。

鳥肌 いや、実は私も、三年前に一度、パクられてるんです。留置場に一八日聞いたんですが、入っていた時にはそれなりにつらいこともあったのに、出ると忘れてしまうんです。だから、最近ハクを付けるために、何かやろうと思っていた矢先に、「調律の帝国」に出会い、「懲役はイヤだ」と思い直しました。

見沢 いや、普通にやってれば、あんなにひどくやられないけど、小説と非転向を貫くために反抗し続けなくちゃならなくてね、あとで書守だった人に聞いたら、全国の不良囚のワースト5に入っていたって聞いて、嬉しかったねえ(笑)。僕の小説に出てくる十一合っていうのは、明治四二年に日本で唯一、政治犯専門に創ったコンクリートの特別舎房で、そこにいた先輩というのが、大杉栄、荒畑寒村、甘粕大尉、徳田球、朴烈といったすごいメンバーで、栄光というか・・・・・

鳥肌 私も捕まった時、少々暴れたんで、ヤクザ部屋に放り込まれたんですよ。毎日、ボスのマッサージをしていたなあ。あのパキスタンのコソ泥は毎晩「プロンくれ、プロンくれ」って言ってたなあ。

見沢 地検の地下ってすごいでしょう。昔の駅のプラットホームにあったみたいな堅い木のベンチだけしかない待合い室。あれが、監獄の中と少し似ているかな。

鳥肌 汚くて臭い六畳くらいの部屋に一二~三人で押し込まれて、検事に呼び出しされるのを一日中待つんですよね。朝から待っていても、帰るまで声が掛からなかったりする。人権侵害ですよ!

見沢 あれは「お茶っぴき」っていうの(笑)。一般押送と単独押送というのがあって、公安の重要事件だったりすると、単独押送なんだよ。一般押送だと、一日中待たされたりする。僕も最初、粛清で捕まったときは、単独押送だったんだけど、そのあと火炎瓶ゲリラとか罪状が追加されてからは一般押送になった。

鳥肌 見沢さんは拘置所にも行ったんですよね。

見沢 拘置所はいいよ。手紙は出せるし、毎日面会できるし、新聞、雑誌は読み放題で、金があればジュース、コーヒー、アイスクリームだって買えるし、天国だよ。刑務所はもう二度と行きたくないけれど、拘置所はもう一回くらい行っても良いくらいだなぁ(笑)

鳥肌 アイスクリームが食べれるんですか。拘置所だったら、がまんできそうだな。

見沢 それが刑務所に行くと天国から地獄。僕は枕が高くないと眠れないんで、枕の下にタオルを何段にも重ねて、明るいからタオルで目隠しして寝てたんで、刑執行後の夜も、そうしていたら、警備隊が五、六人飛んできて怒鳴られ、枕を蹴飛ばされ、厳重注意。

鳥肌 まさに国家権力最後の砦ですね。刑務所はダメだ(うなだれる)。

見沢 僕と監獄話すると、一日あっても足りないから他の話もしよう。僕は結構占いに凝るんだけど、ちょっと手を見せてもらえますか?あぁ、手が大きい!こういう人は実は繊細なんですよ。僕は本当に小さいでしょ、これは誇大妄想狂の典型でね、一般社会では珍しいくらい小さいのに、千葉に行ったら、周りがみんな小さい(笑)。

鳥肌 ハア、僕の手は堅気の手だったんですねえ。くそう!

見沢 星占いにしても、手相・人相にしても、古代ギリシア時代では物理学や数学などと並んで立派な学問体系の一つで、そうそう簡単にバカにできるものじゃないんですよね。

鳥肌 本当は犯罪者になりたいんですけどね。

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