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主演 内田裕也 監督 神代辰巳 司会・構成 田中千世子 製作 三浦朗 ・・・
田中:猥歌という題がいいですね。
神代:一等最初は「盤回して針乗せて」。それからいろいろ変遷がありまして、割といい題になったんじゃないですか 嗚呼おとこたち猥歌でもよかったですね
内田:俺ね、「青春の蹉跌」とか、神代さんと萩原健一のコンビがあったから、俺があんまり入ってっちゃいけないみたいな感じ、 「少女娼婦けものみち」のとき、あったの。今回は企画の段階から、一時駄目だって言ってたんですよ。この企画は通らないだろうという話があったから。 そのいきさつも知ってたから。クランクインで「ヨーイスタート」カチンとなったときに、「クソ―っ やってやろう」みたいな、ものすごいハイになっちゃって 入れ込み過ぎたかなというくらいの・・・
田中:でも、よかったですよ、お風呂の中でアンパンですか、食べて・・・
内田:いえ、ジャムパンです。初めて食べました。シャンプーとお湯入りのジャムパンと言うのを(笑)
神代:ああいうところがうまくいくといいですね。
田中:企画の段階からの話をお聞かせいただきたいのですが
三浦:初めに、こういうのどや、と話があったのは裕也さんからなんですよ。 週刊新潮にのってた「黒い事件簿」という実際にあった話なんです。 ある男が出先で女の子と知り合って仲良くなって、また新しい女の子が出来て、従妹と称して連れ込んだのはいいけどバレちゃった、 ところが通常女同士が揉めるはずが、女同士仲良くなって男が阻害されて、頭に来た男が家に火をつけようとして 110番された、と言う事件があるんですね。彼一流の直感で、これいけそう、と。
内田:俺が持ち込んだと言うと偉そうに聞こえるけど、「少女娼婦けものみち」を終わった後、三浦さんに神代さんとどうだい、もう一本と言ってもらったんで、 アイデアと言うか、これおもしろいんじゃないか、と。
三浦:難産は難産でしたね。
神代:日活としてはもっと派手な映画を考えてたはずですよ。お祭り映画を、十周年として。だけど、よくやらしてくれましたよ。
内田:嬉しかったですね、クランクインした時ね。
三浦:色々ありましたからね、事件が
内田:クランクインの前に主演女優が降りちゃった。リハーサルをやってたんです3日間。 毎日6時間くらいずつやってて、固まったときにいなくなっちゃったんで、俺がもう激高して―― 三浦さんも神代さんも何も言わないから俺も黙ってたんだけど、うちへ帰って怒りがおさまんないから、電話して、マネージャーを出せって言って。 「このやろうロマンポルノをなめてんのか、ふざけんな」と言って。 演技的な悩みなら別だけど・・・ロックはそういうのあんまりないでしょ、当日来ないとかさ。体が悪いとか、捕まったというのはあるけど(笑)
神代:どっちかと言うと、ロマンポルノにはよくある話なんですね。卑しい映画だからさ。そう驚かないんだけど、裕也さんは初めてだからね。
田中:でも、最近のロマンポルノは小奇麗な感じのものが多いですね、ファッショナブルで…でも、そうじゃなくて迫力のあるものが出来てとてもよかった―― ベッドシーンがいつもより短いように思ったんですけど、一つ一つのシーンが。
神代:最近の感じで言うと、いわゆるポルノの為のポルノシーンはだんだん年とってきてつまんなくなってきた。
田中:キャンペーンに行ったレコード店で内田さんがガラスに映してお化粧しますね。ああいう所はとってもいいですね。
神代:あれが撮影の初日で、最初白塗りでやろうかと話してたワケ。で、白塗りよりもと、裕也さんと相談しながらやったんです。
内田:一人で歌えるところが出来たんで、いけるっと思ったんです。俺もああいう経験あるしね。 ガキのころサイン会に5人くらいしか来なくて色紙投げて帰ってきたりとか、あるから。 自分の痛みの部分をリピートするみたいで。化粧するのはローズでもそういう場面があったけれども・・・
神代:全体の感じで言うと、一種の仮面劇をやってみたかったんですね、歌っているのと本当のてめえがどう対応するかと言うのを、 今でも白塗りがいいんじゃないかなと思ったりしているんですけど、やっぱりオーバーだったかも分からないですね、白塗りにしちゃうとね。 裕也さんと仕事をやってみて、つくづくお思いましたね、本当はシャイな人なのね、こんなんなってね、肩をそびやかす、その感じが出ていると成功したと思いましたね。
田中:つっぱっているんだけども、何か侘しい…それが全体に出ていましたね。
内田:出来上がった脚本を読んだとき難しいなと思いましたね、どうやんのかな、と。最後のトルコのとことかね、 何本か映画に出させてもらって、ここで一つのポイントだと思ってたから、これで先へ行けるか、これでだめか、どっちかだと覚悟を決めてたから。 一人で歌う所は、虚しさが照れずにできたんで、神代さんが自分に対して拍手しろって あれが初日で、あすこがイケたんで、ちょっと見えたなと言う感じがあったですね。
田中:ステージのシーンはノリにノってましたね。
神代:ほとんどワンカットですからね。最初はカットを割ってたの。そしたら割らないでくださいと言われてね。 全部、裕也さんにやってもらって、シンクロでやりましたからね。
三浦:通常シンクロでやっても、頭で一曲流して撮って、後カットを割りながらプレイバックするんですね。今回はプレイバックなしに、シンクロで撮った奴を音繋ぎぎしただけだから。
内田:日本のロックシーンの出てくる映画は嘘っぽいのが多いでしょ。取ってつけたみたいのがね。 観客とのコミュニケーションがウソっぽくなっちゃうと全然意味がないと思うんですね。 だから僕にとっては、あすこだけは頑張らないと、ほかすべて生きてる存在意味が何もないという場面だと思ってたから、普段の自分のステージよか良かったと思いますね。(笑)
田中:脚本の荒井晴彦さんは内田さんの生き方を意識して書いたわけですか。
神代:と思いますよ。
三浦:意識するなと言う方が無理なくらいに付き合いがあるから。
田中:同棲している角ゆり子をトルコで働かしていますね、克美しげるの話を思い出しましたが。
神代:それもあると思いますよ。
内田:僕も克美しげると同期なんですね、神戸のころに、自分の中にもジゴロ的なところがあるし、映画だからと言うんじゃなくて、自分に重複するリアリズムをすごく感じましたね。
田中:女の側のどろどろしたものが出てますね、色々。
神代:男の側からの映画だろうと言う気はしますね。
田中:でも気持ちいいんです、見てて。ドロドロをもっと出せ、もっと出せと言いたくなるくらい。角ゆり子が籍を入れろとか、中村礼子に「あなたは彼のためにトルコに行けるのか」 とか、あんまり言うんで、その果てに光明が見えてくる感じがあって面白かった。少女娼婦けものみちのときもすさまじかったですね、水島美奈子と吉村され子の関係が。
神代:あの場合は、主人公が女にこだわっているというかな、やや女の側からの見方をしてるところがあるんですね。 今回はそれを全部取っ払っちゃって、男の映画になっているんじゃないですか。 女の人が見ると不愉快になるんじゃないかと言う気がしないではなかったですけど、そんなことはないですか。
田中:気持ちいいです。ラストのトルコ・・・内田さんがトルコボーイになるところがあるから。
三浦:あれは裕也さんのアイデアなんですよ。
田中:前に彼女やったのと同じように、自分もお線香で恥毛を燃やして・・・ 「赫い髪の女」で宮下順子がもういなくなったかと思った時に石橋蓮司が性器に口紅を塗って女を偲びますね
内田:僕は「赫い髪の女」は観てないんで・・・・みんないいというから、見てダメージを受けちゃうとヤバいから。
田中:タイプが全然違います。一貫してるものはあると思いますけど。
内田:それほど意識はしてないんですけどね。やっぱりてめえが出てくるんでしょうね。きっとね。さっきの克美しげるの話で言うと、あれは女に対する鎮魂歌で 女を殺すのと全然違いますからね。女に対してもッとアナーキーだろう、と言うつもりで撮っているですけどね。
田中:神代さんがこの作品で一番のポイントに置いたのは
神代:現代版「好色一代男」をやろうかなと言うのが視点のつもりです。あんまり言い訳しないで、裕也さんのどんどん前へ行く進み方ね そういうのと世之介と重ね合わせて、と言うのがテーマだったんですけど、言い訳しないというセリフが一か所あるんですけど、 そういう男の生きざまみたいのが…それと裏腹に悲しさが出れば、と。やっぱり裕也さんの生き方に通じるんじゃないですか
内田:入る前に「好色一代男」の話は聞かなかったですけど、あんまり言わない方ですから。真の狙いとかを。こっちも着いていくのが精いっぱいでね。 見終わって凄い監督だなと思いましたね。大変謁見ですけど、神代さんにとっても1つのモニュメント、 次のステップへの第二期神代時代に行く最初のチャレンジだと思ったんですけどね、ロックをテーマにするとか、そういうのは今までなかったと思うし。
田中:パワーあふれる作品だという気がしますね。
神代:内田裕也の情熱に負けてしまったのではないか。キチガイみたく、それからキチガイみたくなく、 キチガイと普通の人との中間あたりで、どう突っ走るのか、みたいなことを話し合ったんですよ。
内田:映画の冒頭アナーキーが出てきますね。セックスピストルズが出てきたときのように、世の中が変わっていく前兆なのか…という不安と、あいつらに負けねえぞと言う気持ちと・・・
神代:日本のパンクってのはあんまり知らないけども、知らないなりに言うと流行でしょ。セックスピストルズは流行でなくて、力になってるような気がするんですね。 日本のいわゆるロックがなんとなしに流行で終わっちゃったのがこれから力にどうなっていくか、それは裕也さんがずっとやって来ただろうと思ってたし ロックの力にこっちが魅かれたんで。
内田:アナーキーとか、あいつらは本物だと思いますね。みんなやろうとするんだけど、環境に負けちゃうというかね。怒る者さえなくなってっちゃう。 何に対して怒っているのかと言う対象物さえ見失う時があるからね。愚痴・ロックにならないすれすれのところで優秀なメンバーは今いっぱい出てきたと思うんです。 俺なんかこの2、3年すごく怖かった。40になってからちょっと吹っ切れたけど、30代後半からは追われている立場を受け止めて、 かつ、そのうえ、どうやって自分を表現するのかと言うのが怖かったし…。冒頭のシーンはぼくにとっても印象的だった。
神代:上手くいったんじゃないかなあと思う所があるんですよ。トルコ風呂で裕也さんがやるところがあるでしょ、最後。 裕也さん、泣いてんですよ。涙が出てたね。
内田:その前に黒田さんのシーンを撮ったんですよ。スタッフがあの人はいいとか、上手いとか言って、カメラマンもさすが一芸に秀でた人はとか 俺はクソ―っと思ってさ 同じ映画でイラストレーターであろうが、ロックシンガーであろうが関係ないもんね。アルバイトでやってるわけじゃないだからさ。 黒田さんにも言ったけど、すごく刺激になりましたよ。
田中:涙が出てきたというのは
内田:泣くか泣かないか論争があったんですけど、やってるうちにジーンときたんですね。最後の日に撮ってくれたんです。 クランクアップするという最後のシーンであんまりトラブルが多かったから 実現できて、それが終わっていくという、複雑な、公私混同ですか、自分の未来像みたいなのが、ごちゃ混ぜになって四次元の世界へ行きましたね。
神代:俳優さんが涙ぐむとこっちもクウンとくるんですね。そういう時はきっとうまくいきますね、映画が。
内田:俺、撮影に遅れたことほとんどないんだけど、30分くらい遅れたときがあって「いい役者は遅れませんよ」と軽く言われちゃって トップシーンでサングラス――ライブハウス観に行くときかけてんですよ、照れくさいしね――で、かけてたら、「フランス映画撮ってんじゃないんだから」(笑) もう、しばらく夢に見たね。「神代、チキショーッ」とかさ。
田中:完成がずいぶん早かったですね
神代:企画に入ったのがだいぶ早かったから。インしたのは7月14日の甲府ロケから、アップが7月30日。
内田:原田芳雄が言うけど、現場は楽しくやりたいというの、すごくわかる気がするんですね、辛くてもいいから。体力的にはきつかったですね、やっぱり
三浦:この写真で撮影日数が12日ですよ。それでこれだけのボリュームの仕事をやってるわけだから、もう俳優さん、演出家を含めて大変な作業ですよ。
田中:内田さん、今後出てみたい映画は?
内田:今日はいいじゃないですか、高揚してるから。ありますけど、今日は勘弁してください。