「うる星やつら2」の発想法僕の夢ラムの夢
ラムの最高の夢はドタバタの毎日?
前作の「オンリー・ユー」が宇宙という外の世界を扱ったのに対して、「ビューティフル・ドリーマー」ではガラッと変わって夢邪鬼やラムの作りだした内面世界が描かれているわけですが、その発想はどういうところからでているのでしょう?押井 実はラムをどう描いたらいいのかっていうのが一つの発想のもとなんですよ。
それと現実は夢であるという押井さんの考えとが、うまくからみあったわけですか?
ドラマの中でラムという女の子を扱うのはとても難しいことで、僕にはラムの気持ちというのは結局わからなかった。それでわからないものをどう扱うかっていうと、わからないままに色々な可能性の中で考えていくしかないんじゃないかと思ったんです。
彼女がどんなことを考えてどんな夢を見るのか、男の側から発想するしかない。それで今回ラムそのものの出番は少ないけれど、世界自体がラムの内面であるという形で表現するしかなかったんですね。押井 そうですね。それで今回は基本的な構成として夢の世界を扱うことにしたんです。ラムというのはそれ以外に客観的に描けそうもないし、そういう意味では「オンリー・ユー」が非常に苦しかったですね(笑)。で、そこからラムの内面考えた場合、決してお花畑やら何やらではないと思うわけですね。あの年ごろの女の子が何を考え何を感動してるかってのは絶対にわかんないわけで、それなら僕自身の夢というものをラムの夢の中にちゃっかり反映させてやろうと思ったんです。
それが廃墟でのサバイバルゲームだというわけですね?押井 ただ、単純に自分の願望を満たしたわけじゃなくて、そこでもう一つ考えたのは、テレビシリーズでやっていたあたるや面堂たちとのバカ騒ぎは、本当はラムが一番望んでいた事なんじゃないかってことです。
だからそういう状態をそのまま映画にしてしまったと?
つまりあたるという男の子を絶えず追いかけている状況そのものがラムの願望の最終的な到達点じゃないかとね。僕らが子供のころ遠足の日よりもその前夜に興奮したように、結婚というゴールを先に伸ばして、フリーの状態で永遠にドタバタを続けることがラムの最高の夢なんだって考えたわけです。ラムはあたるたちをまとめる触媒?押井 ええですからあたるとしては、だんぜんそこからの脱出を考えるわけで、それで初めてドラマが発生するということなんです。
サバイバルのシーンから、あたるたちの反撃が始まるとみてもいいわけですね。押井 僕らが高校生のころ考えたんだけど、一瞬のうちに街が全部廃墟になってしまって、そこで生きてみたいなって事、みんなが一度は考えたことがあると思うんですね。映画の中でその夢を再現してみたかったんです。
そうすると夢邪鬼の立場というのはどうなるのでしょう?
でもあたるたちのことだから、サバイバルといってもしたたかに遊び回るだろうとね(笑)。そして、おそらそういう状態になった時、ラムみたいな女の子が一番イキイキするんじゃないか。もともと日常生活って意識をかかえていませんからね。
それでいて、ラムがいるからあたるとか面堂とかメガネとか生命力やバイタリティにあふれた連中が、互いを恋敵としてかろうじてまとまっているわけで、ラムというのは触媒の役目もしているんですね。押井 今言ったようにあたるたちは非常にしたたかなわけで、悪夢の仕掛人のはずの夢邪鬼も、彼らを丸めこむ立場から力をつくすわけです。でも結局勝敗はつかないんですね。
「うる星やつら2」の作り方日常性への接近
息のつき方まで緻密に追っていった
テレビシリーズに続けて劇場用作品を初演出されたわけですが、まずシナリオをお読みになってみてどう感じられましたか?西村 第一印象はそこに生活感を感じたということですね。生活感というのは実は僕のテーマでして、そういう意味で演出が決まった時にはよかったと思いましたね。
押井監督独特の作品の作り方、世界などについてはどうとらえていらっしゃるのでしょう?西村 押井さんは、日常生活っていうのは、どんどん煮つめていくと、まばらな日常の中で起こっているのとは全然違う世界がそこに出現するんじゃないかと、そういう発想を持っていると思うんです。
そう考えると夢が実は日常だと、つまり日常とか現実なんてのはなくて、すべて夢なんだとね。そこから逆に日常ってものを攻めているのが押井さんなんだということはよく理解していたつもりです。そのうえで、実際の映画の製作に取り組んでいかれたわけですね?西村 僕としては、そういう意味で具体的に作業をやっていくうえで、ひたすら変な動きとかタイミングとかセリフを排して、全部を含めてなるべく普通のしゃべり方などを使っ日常に近ずけるようにしました。
単にフォローしただけではないということですね?
キャラクターの息のつき方一つまで緻密に追っていって、このシナリオと原作者と監督に対して、自分のやることというのはそれだろうと考えたんです。めいっぱいそれをやって押井さんのイメージをいかに具体化するかっていう作業に力を注いだつもりです。西村 ええ、ですから「そうじゃない」って感じたところでは対決していこうと。極端に言うと僕を演出に選んだのを後悔させてやろうという思いは最初にチラッとありましたね。
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