画期的な映画「家族ゲーム」によって、ますます注目を集めている森田芳光監督。そしてまたしても登場、<バラエティ>のスーパー・アイドル丸山昇一氏。念願の顔合わせがついに実現した。NHKの銀河テレビ小説、「明日はどっちだ」(8月22日より15回連続)の脚本を書き上げたばかりの丸山さんをつかまえて、「家族ゲーム」を見てもらい、即対談という運びになった。初対面のおふたりとあって、最初は軽いジャブの応酬。小気味よく盛り上がりそうです。
優作が"スゲェぞ、おまえ"って・・・・・・端的にシットしたね。
森田 ボクはきょうは"脚本家入門"ってテーマかと思ったんですよ。丸山さんにいろいろ伺おうかと思って。ホテルとか旅館の選び方とか、おフロのはいり方とか。
丸山 いやボクはね、「家族ゲーム」のセールス・プロモーションかと。セントラル・アーツの唯一の専属俳優が出演している映画なんで、ウチも商売がかかってるんで大いに宣伝しないと。
両方やってください。丸山 ボクは今まで"森田フィルム"というのは「のようなもの」は見ましたって言ってたんだけど、実際には見てないわけ。一同(笑)
森田 多いんだよね、そういう人。
丸山 予告編も見てないわけ、1本も。この2年間ぐらい全く映画見なくなっちゃって。で今月はいって「楢山節考」と「トッツィー」と「家族ゲーム」と3本見ちゃった。ボクは原則として、撮影所経験のない人と脚本も監督もやる人とはあまりやりたくないんです。でも角川春樹という人が、"丸山さん、一緒にやろうよ"と言った時、もうほとんど一秒もしないうちに"ハイッ"と言っちゃったのね。いかにボクの原則がイイカゲンであるか。で、今は森田さんとやりたいってのがあるわけね。ボクの2大原則が希望としてはもろくもくずれてしまというわけでして。(笑)
どうして原則を作るんですか。丸山 やっぱりホラ、はいった時はカッコつけようと思うんだね。
森田 ボクもそうですよ。
丸山 でね、対談で監督を前にしてその人の作品について話すというのはあまりキモチのイイことではない(笑)。トイレの中でバッタリ会って"あっ「家族ゲーム」見ました"とかなんとか言って冗談のひとつでも、男の人ってのはトイレで2人並んだりすると冗談が出るんだよね、全然おもしろくないのとかさ。それから2人でにっかつ撮影所の小キタナイ食堂の片スミかなんかで話していると、そうするとなんか出そうな気がするね。イヤー、森田フィルムには感心しましたよ、ホントにね。オレは”ヨイショの丸山”って有名だけどね。(笑)
なんか言いわけがいっぱい。丸山 評論家風に言うと、80年代のお茶漬けサラサラというかんじ、そのさりげなさがソクソクと迫ってきたね。そういうことがあるからラストの優作サンがついにテーブルを引っくり返しちゃうところのシークエンスがスンナリはいってきちゃうんじゃないかな。フツー、脚本書く時はさりげな書けるんですよね、あれ。でも演出する時はなんとかハネようとするんじゃないかと思うんだけど、やっぱりサラッと撮っちやうというそのスゴさ。それからいいセリフがたくさんありますねえ。いいセリフというのは"持ってまわった"とか"練りに練った"とか言うんじやなくってさ。
森田 考えられないですから。(笑)
丸山 スラッと出てきちゃってるという。セリフがスンナリ出るというのはシチュエイションをしっかりつかんでいるというか人間の配置をきっちりつかまえてるから出てくるんだと思う。登場人物をきっちりつかまえていて、しかも撮影の現場でうまくシュートする、ショットできるというのがこの映画の心地よさの最たるところ。
森田 ボクはなぜ脚本やるかというと、要するに脚本料を払うという、一流の脚本家に払うギャラが製作費においてもったいないから、ボクが書いているわけなんです。今度のキャスティングにしても、優作さんは初めは全然考えてないわけですよ。一時は考えたけど、キャストに自分のギャラの5倍も払うのはバカバカしいと。それよりはフィルム代にしようと。
丸山さんは一流の人ですか。森田 イヤァ、高そうですもん。
丸山 オレは高いって評判らしいね。あるパーティで3人の監督さんに続けて"あんた高いんだろ"って言われたもの。
森田 それはいいことですよ。
丸山 オレもよしゃいいのにポロッと言っちゃったんだよね。そしたら"そんな前金もらったらスゴイね"って。まさか"ゼンブです"って言えなかったね。(笑)
森田 イヤほんとに高くていいんですよ、だって今まで苦労したんだから。
丸山 ただ、それに見合う脚本を書いているかどうかってことは不安ですね。
森田 そうですかねえ、それは監督が悪いんじゃないですか?
丸山 オレはよく言うと謙虚だからさ、映画が思ったとおりに上がらないと、やっぱ台本がマズかったと思っちゃうわけね。自分の意思がきちんとスタッフの方に伝えられなかったというのがあるわけよね。
森田 ウーン。
丸山 「家族ゲーム」の話が優作にきた時......あのウルサイんだよね、とにかこの23年特にあの人作品選んでるってことは、つまり脚本を選ぶわけじゃない?その人がいきなり"スゲエぞ、おまえ、体が浮いたよ"って.........端的にシットしたね、やっぱり。もう手ばなしでほめてんだもん。撮影にはいっても��いいよオ、現場もいいよオ、スゴイよ"って話じゃない?どうして本拠地のセントラルでそういうのがないのかって気がするけどさ(笑)。ボクはあんまりシットしたり人を羨んだりしたことないけど、"あんまりじゃない?"って言いたくなるよ。
ハァ、それはトーゼンですね。丸山 いったいワタシは何をしてきたの?って。こんなライターに誰がした・・・(笑)
森田 身近な人間はほめないんですよ、あ一同(笑)んまりね。やっぱりテレがあるし、そういうもんですよ。外部の人間をほめて自分のまわりを鼓舞するというね。そういう計算があるんですよ、そこまでヨメなきゃあ。
丸山 それは、森田さん、お言葉を返して借金返しませんけどねえ......(笑)、あの人はそういう計算をする人じゃないんですよ。ヒジョーにプリミティブな人だからねえ。
森田 だってそんなにいいシナリオじゃないですよ「家族ゲーム」って。
丸山 それは優作サンに言ってくださいよ。一同(笑)脚本家が旅館にはいるのは文学コンプレックスなんですかね。
森田 ところでシナリオを書く時、旅館にはいらない場合、その分はどこ行くんでしようねえ、あの金は。
丸山 ワタシもですね、プロデューサーに最初に話すのは、"旅館にはいりません"。あの金どこへ行くんでしょうねえ。(笑)
森田 だからね、1回遊んでやろうと思うんですよ。全部書いちゃったあとでね、どうしても書けないから6日間旅館に入れろってね。それで女のコ引っぱり込むとか。
丸山 よく監督と強制的に旅館にはいらされるんだけど、ボクはいって1行も書いたことないんですよ。
森田 このシステムはなんですかね。
丸山 わかりませんね、ムダとしか思えませんね、ワタシは。 森田文学コンプレックスなんですかね、映画界の。イヤ、ボクはしょう油こぼしちゃったからね、"福屋"で。
"福屋"って?森田 中野にある有名な旅館。文学散歩ってあるでしょ、たとえば太宰がどこどこを歩いたとか、芥川がどこどこで眠ったとか。ボクもそういうのやりたかったから、3日間泊まることになったの。そしたらいきなり食事が出てきたんですよ、スゴイ8品ぐらい出てくるの。ボクあがっちゃって、なんか手を動かしたらバァーッとしょう油こぼしてタイヘン。結局原稿用紙をね、お盆みたいにして・・・・・・そしたら女中さんがお茶を持ってきて��何をやってるんですか"って。
一同(爆笑)森田 "言ってくださればいいのに"って。
畳もよごれちゃって?森田 ええ、シミになっちゃいましたよ。記念になりますね。
森田芳光のソソウ。森田 それからフロのはいり方がむずかしいのね。書くところの旅館って独特のムードがあるんですよ。混浴みたいなかんじもあるし、順番てのがわからないし、カギも締まらない、おフロ沸きましたとも言ってこないしね。
丸山 ボクなんか、監督より先にはいっていいものかどうかという問題があるわけ。酒はつぐべきなのかどうなのか、最初のひとはしは先につけていいものなのか。それからそういう旅館は、ほかにたくさん高名なライターがはいってらっしゃるから。隣は野上龍雄先生とか佐治乾先生とかはいってらっしゃるから。トイレにはいる時、高名な先生にバッタリ会っちゃったらどうしようとか、もしかしてその方が女性連れだったらどう言おうとか。"セ、セ、センセイ、どうも、失礼します"とか"美しい方ですね"とか、イヤそんなこと言ったら失礼かな、とそう悩んでいるうちに1日過ぎちゃったりして。
一同(笑)森田 イヤ、これは悩みますよ。フロのことなんかも聞けないでしょ、悔しいじゃない。だからボクなんか夜中の3時頃、冷たい水ではいりましたよ。忘れもしませんよ。
ほかには森田 いろいろありますけど、ふとん敷きにくるでしょ、女中さんが、その時赤くなっちゃったんですね。そいて、私はもうとにかくいつでも起きてますから、呼んでくださいって。呼んでくださいってのがダブル・ミーニングでね、どういうイミなのかちょっと待ってくれ、ここは飯坂温泉でもないし山城温泉でもないし、中野の"福屋"�≠ネんだと自分に言い聞かせて。
丸山 <バラエティ>の純真な読者のために言っとくとね。作家がたくさんはいる旅館ていうのは、いつでも1人専任の人が起きておられるわけですよ。作家ってのは夜中に夜食とかビールとか注文が多いわけです。それで、起きてますのでいつでもご用がありましたらどうぞということなんですね。
森田 そういうことです。だからボクがカンチガイしただけ......イヤ、カンチガイしようとしたってわけなんです。(笑)
丸山 根岸さんと「俺っちのウエディング」の直ししてる時、高名な先生から洋酒いただいて、お礼の電話しようとしたんだけど、ダイヤル回してもふるえちゃって、なんて言っていいのかわかんなくて。オレ、徒弟制度に憧れてたフシがあるんですね、昔。ヤクザが好きだったから、昔風の"あの親父っさん、もう車の用意ができましたけん"とか、すごく好き。だから脚本家に合ってるんですよね、ボク。監督にこうしてくれって言われると、ハイすぐ直しますからとか、そういう自虐的なところが。(笑)
森田 ボク、今度初めてほかの監督に書いたんですよ(にっかつ・中原俊監督「三三年目の浮気」)。で、監督どうしましょうかって言うのいいもんですよ。おっしゃるとおりにしますってななかいい言葉でね。にっかつの助監督にオレ、今度ライターになったよ"って言ったら”おめでとうございますって。"ライター"てのがなんかヒビキがいいのね、当分やめられそうもない。"福屋"に行くかどうかわからないけど。"福屋"で書いてると競馬はよく当たるんですけど。3回やって3回当たった。カンがいいんですね。
博才があるの?森田 わかるんですよ、運命論で。宗教に凝ってますから。
へえー、詳しく話してください。森田 ボク毎週日曜日に教会の"日曜学校"行ってますから。そいで水曜日にお墓参り行くんですよ。
へえー。森田 ウソですけどね(笑)。イヤほんとにねぇ、ストイックな生活してるんですよね。だってそうでしょ、酒もタバコも女もやらないんですから。
ウソでしょ。森田 イヤほんとに。うち帰って"ジャポニカ"をずっと読んでますよ。
旅館の近くにおみやげ屋とパチンコ屋がないと困りますね。丸山 ボクは今の話聞いて、優作サンがなんで森田さんに惚れたかわかった。あの人はそーいう人が好きなんですよ、才能の如何を問わず。
一同(笑)森田 でも旅館でもパチンコ屋が近くにないと困りますよね。
丸山 困りますねえ。
森田 おみやげ屋とパチンコ屋がないと。
丸山 そう、おみやげ屋!
森田 大事なんですよ、おみやげ屋って。だから南極なんて行きたくないもんな。へえー。
丸山 ハートウォーミングじゃないとわかんないんだよ、これは。おみやげ屋がないと1日が終わったってかんじしないんだ。
1日が・・丸山 1日ってことはつまり1年ですよ。
森田 コンビニエンス・ストアじゃダメなんですよ。ホラ双眼鏡とかフィルムとかが前面に並んでて。まんじゅうとかあって。
丸山 KIOSKがもっと気をきかしてくれるといいんだよね。で、なんか買うんですか。
森田 イヤなんかなごむじゃないですか、あのクラさっていうかさァ。
丸山 路地じゃないとダメなんですよ、大通りに面してるとダメ。パチンコで3000円持って行って2800円使って200円残ったからなんか買って帰る......でセブン・イレブンなんかはいっちゃうと198円かなんかになるじゃない、あれだとダメ。200円でないと......そういうコダワリが映画を支えているわけです。(笑)
森田 ライスチョコレートかなんか置いてあるといいわけです。
丸山 できればサクマのドロップもあった方がいい。
フーン。丸山 ところでヒジョーに「中一時代」みたいな質問ですけど、森田さんモテます?
森田 モテないですよ、これがモテない。結構3大要素あるんですよ、金ある、頭いい、容姿端麗、と。
丸山 それに会話の妙がありますよ。
森田 ホント言うとボク女キライなんです(笑)、ともかく条件そろってるのにモテないですね。
丸山 森田さんはできすぎてるってのがあるかもしれないな。
森田 あ、言えますね、それは。スキがないんですね。
丸山 やっぱセイコーの腕時計なんだよね。森田さんは男に惚れられるタイプだな。
森田 あと大竹しのぶみたいのにモテるんですよ。昔学級委員やってたような女のコね、色気が全然なくて。キライなんですよ。
丸山 (司会者を見て)学級委員やってた?やってました。
森田 イヤ、いろいろあるんですよ学級委員やってたって。1学期の学級委員がダメなんですよ。ねえ、3学期だったでしょ?ウン、3学期の学級委員がイロっぽいんだよ、サイコーに。
丸山 この人、風紀委員だよ。
森田 週番とか(笑)。マズイなァー。
丸山 これは、誰がモテるって言ったって工藤栄一さんと相米慎二さんですよ。これは驚きなんてもんじゃないですよ。若い時はワタシもハゲるのイヤだなと思ったけど、工藤さん見てからは、やっぱ潔くハゲようと存在自体が"ジッポ"です、シュパッ。
というわけで、人様の噂やマイホーム自慢(丸山氏)など話はとめどなく続きます。でオチはどうなるかって?このおふたりです、トーゼンこうなります。
丸山 森田さんと会いませんか、"コーディネイトしたいんだけど"って話があってね。くらいに言われましたよ、もう。
森田 イヤ、これはなかなか動けないですよ、億単位の企画ですからね。ボクと丸山昇一のコンビなんてタイヘンなことですよ。
丸山 記者会見は、帝国ホテルですよ。
森田 なかなかねえ、実現させませんよ。
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どうもおつかれさまでございました。<構成・内海陽子/撮影・石原宏一>