今週の全身小説家

見沢知廉

小説家・一水会政治局長35歳

独房生活の”拘禁症”を書くことで生き抜いた。存在すべてで書く作家

プロフィール

小説を書き始めた高校時代は新左翼活動家。中央大学法学部に入学後、左翼に幻滅して新右翼に転じる。82年、リンチ事件首謀者の罪で12年の刑に。獄中でも約20作の小説を執筆。文芸誌に投稿し評価される。天皇に翻弄される人々を描いた受賞作「天皇ごっこ」は新日本文学4月号に掲載予定


  先日『天皇ごっこ』で第25回新日本文学賞に佳作入選した。彼は12年の刑期を終え、昨年12月に出所したばかり。政治犯で23歳で入獄。態度が反抗的だと独居房に拘禁され、結局8年半、排便も部屋の隅ですませる3畳間で、灰色の壁だけを相手に暮らした。
  「半年も独居房の生活が続くと、何か支えがないと発狂しちゃいそうな恐怖感に襲われた。実際、僕も発狂者を十数人、自殺者も見た・・・・・・。僕は本能的に小説を書き始めていた」
  紙はノート1冊のみ、字の大きさは0.5以上の決まり。しかも検閲があり、汚い字や消した跡があるとノート没収。書き損じはできなかったから、執筆は1文字1文字が真剣勝負。
  「作品は僕の叫び。シャバの人に読んでほしかった。でも、小説の発表は禁止なんです。で、月に便せん7枚と決められ、母宛ての手紙に通信文に見せかけて執筆。母がそれを雑誌に投稿した」
  検閲が厳しくて手紙に書くとバレそうなときは、あぶり出しにしたり、本の背表紙に細工して、作品を送った。「書けないぐらいなら、死んだほうがましと考えていましたよ。人との会話が一切ないから、小説と夢の中だけが生身の人間が生きる世界だった。今思うと、書くこと”で僕は生かされていたんですね」
  いまや職業として小説を書いてます、的な作家ばかりだが、書かずにはいられない作家は少ない。彼にはすでに30本もの作品がある。それでもテーマは尽きないという。「いい経験でしたか?」と聞いてみたら、「今思えば、ね。でも、もう嫌ですよ」と彼は微笑んだ。

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