わざと髭を伸ばしたままにしているんですね。豊川 最初のカットを撮るとき、何か勘みたいなものなんですけれど、あったほうがいいんじゃないかなと思って、阪本監督に相談したら、いいよということになって、生やしっぱなしに。僕としては、布袋さんの栃野という役と僕の門谷という役で、ビジュアル的にも微妙な色の違いがあったほうがいいんじゃないか、と。
門谷のイメージが決まってますよ。豊川 大阪のヤクザというのが僕のなかですごく大事で、僕も関西人なんですけれども、大阪のヤクザってこういう髭を生やしてるかな、と。東京の六本木あたりの人たちだときれいにしてはるやろうけれど、大阪人って何か勘違いのオシャレがあったりするやないですか(笑)。これ、大阪の人に怒られるかな(笑)。
僕も大阪出身やけど、怒りません(笑)。豊川 阪本監督と門谷のキャラクターについて話し合った とき、性格の悪い男でやってくれ、と言われたんです。ワルなんやけど正義感を持っていたり、どこか芯が通っていたり、という感じにしたくないから、嫌なヤツやなと思うような感じでやってくれ、と、僕は非常に性格がいいんで、すごく難しかったです(笑)。
面白いですね。監督の狙いは何やろ。豊川 何でしょうね。僕としては、ある意味ではそれが前の『仁義なき戦い』シリーズに対する本監督なりのご自分の色みたいなものじゃないかなと思って、わかりました、と。
・豊川さんは前の深作欣二監督「仁義なき戦い」シリーズについて、どんな印象をお持ちですか。豊川 映画として非常に面白くて、日本発のとてもオリジナルな映画で、タランティーノとか向こうの若い監督たちが深作さんから影響を受けるのがよくわかりますね。今回、またビデオで見直したんですけど、今でも色褪せていません。
・この役やったらやりたいというのはありますか。豊川 いや、自分には向いてないと思いますね。正直な話、今回も阪本監督の映画だから出演したんです。ヤクザの役は多少やってるけど、ヤクザという役柄にはあまり魅力を感じませんね。僕の好みのキャラクターというのは、もっと日常のなかでの異質な非日常的なもので、初めから非日常だと芝居をするとき楽しめない。だから、外面は普通なんだけれど内面がすごくどろどろしてるとか、そんなキャラクターのほうが演じていて楽しいんです。
今回の『新・仁義なき戦い」はヤクザ映画なんだけれど、ヤクザの何かを描くものとは違いますね。豊川 全然違いますね。やっぱり人間ですよね。ヤクザである以前に人間。今回、群像劇のなかに栃野と門谷という二人の男のパーソナルな話が大きく入ってきているじゃないですか。これも阪本監督の独特な味付けで、今までの阪本さんの映画もそうですけど、人間を一人ひとりすごく丁寧に描いているんですね。
で、門谷を嫌なヤツに、となるのが面白い。豊川 悪役でやってくれと言われて、僕が演じるときに基本的に大事にしていることは、何やこの役者は、と周りの人に思われるぐらいでないといけないな、ということなんですよ。一緒にやってる俳優さんに嫌われるように芝居をしよう、と(笑)。仕事としては辛いというか怖いというか(笑)。
豊川 でも、阪本監督の要求って、いつも怖いことで(笑)。本当に人気がなくなるようなことばっかりさせて
門谷と組員の関係が独特ですね。豊川 男女の関係にちょっと似ているのかもしれません。それはべつにホモセクシャルということではなく、栃野と門谷の関係も、いわゆるホモとはまったく違う部分で、ちょっと男女の恋愛感情に似たようなニュアンスがあるでしょうね。
一栃野役の布袋さんとは以前からお知り合いですか。豊川 いや、今回が初めて。一緒に仕事をして、一流の人だと思いましたね。ミュージシャンということを超えて人間として一流だな、と。たぶん布袋さんの持っていらっしゃる空気感みたいなものでしょうね。初対面から一緒にいる空気のなかに違和感がまったくないし、逆に距離感というものがちゃんとあって、それがとても気持がいいので楽というか同じだから、話が合いますしね。
豊川さん自身は音楽は?豊川 僕は人前では一生歌わないことにしているので(笑)。
それとは違った阪本版の出来上がりが楽しみです。豊川 深作版「仁義なき戦い」のイメージが強烈なだけに、それが楽しくてやっているんですけれどね(笑)。俳優という仕事をやっていると、いろいろな意味で芸能界ひとくくりにされてしまうじゃないですか。そのなかで、じゃあ何を目的に自分は俳優という仕事をしているんだろうと迷ったりするんですけれど、阪本監督と一緒に現場をやると、演じることが楽しくて俳優をやっているんだという、すごく原則的なことを再認識させられるんです。ある人物と自分をどう融合させていくかというものをつくる楽しみが阪本監督との仕事にはある。だから、門谷もそうですよ。
門谷という役は大組織の幹部で、小さいながら自分の組を持つ組長で、しかも嫌なヤツでと、なかなか複雑ですね。豊川 中間管理職ですよね。門谷はあまり自分の組を大事にしてなくて、それでも門谷組の若い組員たちがついてくるんですけど、人間的な優しさとか強さとかプラスのイメージではなく、むしろ門谷のマイナス部分に惹かれてついていくんですね。そういう意味で、門谷というのは、性格は悪いけれど、魅力的なヤクザなんでしょうね。 なかなかいないキャラクターだと思います。
豊川 僕は「傷だらけの天使」とか「八つ墓村」とかリメイクが多いんですけど、リメイクを意識したことはありません。だって、映画はなまものというか、そのときのお客さんに支えられた時代性を避けられないメディアですから、つねに今の社会を通して作品と向き合っていかねばならないと思うんですよ。演じるときは今の自分に徹するということですね。
豊川 ええ。僕にとって仕事というのは、やっているときで終わるんです。自分の作品を映画館へ見に行ったりしない。知らない人と一緒に見るなんて、めちゃ恥ずかしいことですよ。とてもじゃないけど、耐えられない。だから、現場でワンカットワンカットOKをもらったら、ここは終わったと、終わり終わりを積み重ねていくわけで、クランクアップして、お疲れさまとなったら、もうこの映画とはおさらばだ、という感じなんですね。今回、こんなに大阪弁で芝居をするのは初めてなんですけれど、やっぱり楽ですね。どこか自分の根っこの言葉やから。
前の仁義なき戦い」にはどんな印象がありますか。 布袋 世代的にいっても、場面場面の鮮明な記憶はないんですけれど、男臭いイメージはあって、「仁義なき戦い」というタイトルは世代を超えたキャッチフレーズになっていますね。
・今回、その映画への出演を頼まれ、どう思いました?布袋 迷いましたね。僕も暴力を否定する人間ですから、昔の「仁義なき戦い」も暴力だけを描いた作品ではないことは充分承知ですけれど、ちょっと入りづらい世界というか。でも、その迷いこそが自分にとって起爆剤のような気がして、「仁義なき戦い」という言葉を聞いたときの胸騒ぎみたいな、それでやろう、と。
~迷いつつ胸騒ぎはしたんですね。布袋 しましたねえ(笑)。おかしなことに、友だちやカミさんに出演依頼の話をすると、みんな、それはやらないでしょうと言うんですよ。どんな内容か知らないし、はまり過ぎるとそのイメージに飲まれちゃうところが僕にあるからかもしれない。ところが最後に、みんな。でも出るんだったら見てみたいね、と(笑)。その気持は僕にもあるわけで、自分の気持に嘘はつけないですよね。結局それはイコールやってみたいということじゃないですか。
・「新・仁義なき戦い」は単なるヤクザ映画ではないが、ヤクザの闘いを描いて、栃野の役はヤクザ嫌いなんですよね。布袋 僕のなかでは、ある種、男はみんなアウトローであるべきだという、いつも何か反撥する気持がないと男らしい部分がどんどん枯れてしまうという思いがあって、これはそこに火を点けるような作品で、ヤクザ映画という一言で済ませるような映画にはならないと思いますね。男のロマンティシズムも含め、男の情けなさとか弱さとか、そういうものを阪本監督が狙ってらっしゃる。そこを通じて、僕がさらに一枚皮が剥ければいいなあ、と。
-栃野と門谷の屈折した友情も弱さと関わっていますね。布袋 お互い自分自身に対して闘ってないと、友情が光らないんですよね。僕もミュージシャンとしていろいろな方々と演奏をしますし、一人では何もできないんですけれど、ギター1本で生きているというところがあるから、ある種、孤独な道を歩いていると思うし、観客の声援を受けながら孤独な気持を捨てきれない部分もあります。だから、栃野と門谷の関係は僕にとって、理想的なものかもしれません。門谷みたいな本当に心を分かち合える友人が欲しいと思うし、栃野を演じながら、どことなく門谷みたいな気分もあるんですよ。二人でひとつのキャラクターじゃないですか。
-門谷役の豊川さんとは初対面だそうですね。布袋 ●そうです。ただ、豊川さんの活躍を見てきて、何かある人だなとずっと思って、何か機会があったらお会いしたいと思ってきましたので、今回、こういう形でご一緒できて、豊川さんとこの映画をやるんだという意識がすごく強いですね。
まさか同じ年の生まれとは?布袋 ●びっくりしましたよ。同じ歳で、身長もほぼ同じ(笑)。それで、お話を聞くと、小さい頃に育った家庭環境も似ているし、どちらも友だちのいないタイプで、久しぶりに友だちになれる人間に出会ったというか、映画とは関係のないところで、すでに豊川と布袋という男二人のなかにストーリーがあるみたいな感じで、スタートのときから、彼のいることが心強かったですね。布袋音楽監督というのは、ある種、ちょっと俯瞰で作品を見なければいけないので、演じることとは全く違いますね。
ーー前の仁義なき戦いの有名な音楽については?布袋 今回、全部聞きなおして、いろいろアイデアもいただきましたが、時代が違いますし、同じものをやろうと思っても無理だし、かといって素晴らしいテーマですから、そこに、今生きているミュージシャンとしての僕のパワーを注ぎ込めばいいんじゃないかと思うんです。昔の『仁義なき戦い』は沸点だけでつながったような映画でしたけれど、今回の作品は、すごく冷たい氷に触ると低温火傷をするような感じがありますから、それに対して同じ温度もしくは相反する温度の音をぶつけていこう、と。音楽づくりはどういうふうに?布袋自分で演じながら、もしくはほかの役者さんの演技を見ながら、自分のなかに湧いたイメージを貯めていって、最終的に絵に合わせるつもりで、映画の完成に近づいていくスピードと一緒に音楽も同時進行でつくっている感じですね。また俳優をやるつもりはありますか。
布袋 次のことは考えていませんね。これが終わった瞬間、また自分の音楽づくりに戻るだけで、今は、非日常的な体験をさせていただいているのは非常にラッキーだと思いますし、この映画で自分がどう変わっていくか楽しみです。
一前の「仁義なき戦い」の印象はどんなふうですか。 岸部 僕がまだ音楽をやっているときの映画で、見に行って、実録の迫力というのか、憧れとか、怖さとかで興奮した印象がありますね。ライブな感じのドキュメンタリーみたいな印象も。
その興奮と今回の出演は結びつきます?岸部 ●結びつきませんね。今回、僕が『新・仁義なき戦い」をやることになったのは、昔の興奮状態とはまったく関係なく始まっているんです。ヤクザの世界の話だし、僕が親分の役で出るんだけれど、そういう形を借りたなかにいるだけで、極端にいえば、ヤクザ映画ではなくて、阪本監督の映画をやることになって、それがたまたま「新・仁義なき戦い』だったという。僕はこういう顔立ちで、暴力的な感じは表に出てこないから、最初、こういう映画のなかに自分がいていいのかなと思いましたよ(笑)。
でも粟野は全然やくざの親分らしくないから(笑)。岸部 だから、粟野の性格を考えると、自分が生きてきたなかの何かとか、世の中の接点とか、自分とそんなに離れてない気もするんです。セコサとか(笑)。ここはよく分かるとか、逆によく分からないとか、楽しんでやれるみたいな感じはありますね。
哀川さんは現代ヤクザ映画のヒーローとして活躍しておられるんですが、その源流は「仁義なき戦い」ですね。 哀川 自分が映画館で見たのは「その後の仁義なき戦い」だったんですよ。高校生のころ、友だちと学校をサボって見に行って、切なさをすごく感じましたね。カッコいいの裏側の切なさ。「ネオチンピラ鉄砲玉びゅ~」はあのイメージを引きずってます。
・じゃあ「仁義なき戦い」はその後で?哀川 ●ええ。ショッキングでした。あのあがき方は普通じゃないというか、リアルで、自分は感化されやすいほうなんで、行くならここまで行かないといけないな、と。
-今回はヤクザの役じゃないですね。哀川 ●やっていてすごく不思議な気がします。普段、役をやるという感覚はあまりないんですけれど、今回は役をやっているなという感じで。韓国人の役ですから、生まれ育ちも身に着けているものも全然違うわけでしょう。日本人じゃない人間が日本語をしゃべるというのはどういうことだと、これはちょっとテーマですよ。
・ファンには一定の哀川翔イメージが強烈にあると思うんですが、今回はそれからズレていきますね。哀川 違うイメージにはなります。台本どおりやったとしても、この人間は出ないと思うんです。ちょっと細工が必要というか。それで、韓国語指導の韓国人の方に日本語の台詞をしゃべってもらったんですよ。ああ、そういう感じなんだ、と思って。
・阪本監督とは初めてですね。哀川 初めてですが、やりやすいですよ。ごり押ししないし、設定というかシチュエーションに沿って形をつけるから、クラブで揉め事が起こったのを店長の自分が見るシーンで、「ヤクザっぽくなく見て」と言われて、えッ!となりました。やっぱりヤクザっぽくなっているんですね(笑)。
一出演者としてこの映画をどう思われます?哀川 ●登場人物がみんな、生きるということに貪欲ですよね。こうだから、しょうがない、とならない。俺は好きだな。それが今回の自分のいちばんのテーマです。何で今『仁義なき戦い」をやるのかも、そういうことじゃないかなと思います。
今、村上さんが拳銃を手に殺しに行って殺される場面の撮影だったんですが、こういうアクションは? 村上 初めてです。弾着をつけるのも、役者という職業をやっていて、ヤクザの役で、ストーリーは把握しているんですけど、人を殺しに行って殺されるというのはたまらないですねえ。
・今までの村上淳イメージとは違いますね。村上 ●キャラクターが今までと違うということではなく、阪本監督の現場だからですよ。監督と会った瞬間、まず人として好きなタイプだなと思って、リハーサルで演出されたときにものすごい感動があって、現場でそれが積み重なっていきますから
阪本映画は?村上 ●「傷だらけの天使」は見ていました。で、前半を撮ったあと、20日間空いて、今日が最後のシーンだったんですけど、20日間のあいだにほかのも全部見たんです。スゴイ監督ですねえ。
一髪はこの役のためですね。村上 最初、不精品で衣装合わせに行ったら、残しといて、と監督が、髪をうしろで束ねているのも監督が決めました。
ーー大阪弁はどうですか。村上 ●生まれは大阪なんですけれど、駄目ですね。中学校からずっと東京なので、東京の言葉ですから。でも、やってるうちに出てきて、やっぱりベースは大阪なのかなと思います。
・前の「仁義なき戦い」は見ています?村上 もちろん全部見ています。あのカッコ良さにはかなわないですね。でも、今回はリメイクじゃないことは阪本監督が撮るという段階から分かっているし、今26歳の僕なりのリスペクトはありますけれど、気負いとかプレッシャーはなく、スッと普通に入れました。監督にはプレッシャーがあることは想像できますけれど、それにトライしようというわけで、僕は、じゃあ乗った、と。
・ヤクザを演じるのはどんな感じですか。村上 演じるといっても、みなさんがきっちり演技をしているのに対し、僕は役者だと自分に申告していても、演技なのか瞬発力なのか反射神経なのか、とりあえずやろうというところで映画に参加しているんです。ヤクザという以前に、精一杯ですね。
-豊川さんの子分の役ですね。村上 あの人は本当にスゴイですよ。演技はもちろん、全部ひっくるめて、存在感ですかね。今回、豊川さんが門谷組の組長だというのは前から分かっていたんですけれど、実際に会って、見て、うん、カッコいいな、と。この人のためなら死ねると思い込めるぐらいカッコいい。それで僕はいいんです。
-門谷は尊敬できる組長ではないでしょう。村上 でも、惚れるということがキイワードですから。今日、僕は初めて佐藤浩市さんを見たんですけれど、カッコいいですよ。布袋さんも、岸部さんも、哀川さんも。ギターがうまい、演技がうまい、それはスゴイんだけれど、カッコいい。阪本監督はやっぱりスゴイですよ。みなさんを選んだんですから。それがこの映画の核ですね。
村上 こんなにカッコいい男たちがいっぱい出ている映画は、テレビも含め、めったにないですよ。
今回はちょっと捻った役で、面白いですね。 大和 ホンマですか。面白いですか。でも、何で僕はヤクザ映画が多いんでしょうね。
ご自分ではどう思われます?大和 楽しいですよ。台詞にしてもパターンができているので、どうしたら自分がカッコ良く見えるのか分かっているから。でも、その点で、今回は違いますね。自分では憎いヤツを殺しに行ったりしないから。
大和 自分が行ってもいいとは思っているんでしょうけれどね。自分で行ったほうが早い、と。だけど、10年ムショ務めをして女と店を持ち、となると、行く何かがない。それでも、クソッという気持はあって、自分にはヤクザの道しかない、と。で、門谷のことを自分と同じ何かがあると思っているんじゃないですか。でも、阪本監督は緊張する。現場に行きたくないものね。
え!どうして?大和 自分なりにつくった遠山という役があるでしょう。それが却下されるのが怖い。そんなの駄目だよ、と。今回はだいぶ当たったけれど、「鉄拳」にしても「トカレフ」にしても全部却下される場合があったから、あの人は、いいも悪いも、僕のことを全部知っているからね。だから、やりやすいけれど、照れるし。で、登校拒否の心情に(笑)。
大和 僕は役になりきっている部分があるじゃないですか。今回は遠山になろうと衣装も全部自分で探してきて、その衣装で行ったり来たり遊んだり。良くないですよ。家族はいやがる。家に帰っても遠山だから(笑)。で、ひとりで新宿の歌舞伎町へ行ったら、もっとスゴイ人がいるわけ。ホッとしますよね(笑)。
前の「仁義なき戦い」は?大和 日本映画のナンバーワンだと思っていますよ。何もかも良かった。子どものときに見て、おとなになって見た。今見たら、また面白いでしょうね。ずっと見られる映画じゃないですか。
今回も別の形の迫力の映画になるでしょうね。大和 佐藤さんと僕がガッとなる場面があるじゃないですか。あそこの現場は濃かったですね。バスが2台あって、東映の大部屋の人たちがパッといると、俺、怖くてバスに乗れなくて、こんにちわと言って、誰もいないほうのバスに乗った(笑)。で、現場に着いて、じゃあ誰がいちばんオーラを出すか、ということになって、僕としては手応えがありましたよ。ただ、豊川さんに拳銃を渡すシーンが終わって、そこまでに半月ぐらい空くので、しんどい。別の仕事が入らなかったので、その間、ずっと遠山だから(笑)。
-阪本監督とは長い付き合いですよね。大和 だから、現場では「顎を張るな」とかムチャクチャ言われますよ。ほかの役者さんはそれが羨ましいらしいですけど、やっぱり恥ずかしい。遠山は大組織の直参クラスですよ。それになりきってるのに「顎を張るな」ですから(笑)。
で、結局は監督の指示どおりに?大和 ●もちろん、監督はどうカッコ良く撮ってやろうかと思っているわけでしょう。だから、阪本さんの言うことが正解ですよ。
・小沢さんはアクション映画が多くて、やはり根っこには前の「仁義なき戦い」があるんでしょうね。 小沢 あのイメージが強烈なので、今回、それを持って入ったら危険だなと思いましたね。阪本監督とは一度やりたかったので、阪本さんの世界に役者としてスッと入り込みたい、と。
今回の役は今までと雰囲気が違いますね。小沢 阪本監督の世界観のヤクザ像は、衣装合わせのときから話していられたので、違いが分かりましたからね。俺の役は外交官みたいな感じでやってくれないか、と。腹から声は出さないでくれ、喉から出してくれ、と言われて。普段とは逆なんですよね。
そういう役づくりを?小沢 俺のなかでは、斎木というのは紳士なんですね。政治の世界と一緒で、自分が今すぐ総理大臣になれるとも、なりたいとも思っていないんだけれど、組みやすい相手をうまく担いで絵図を描いて、いつか自分の時代がくるだろう、と。だから、今日撮影したシーンみたいに、ヒットマンが襲って
小沢 阪本映画はいつも大阪が舞台で、関西弁とかコテコテなんだけれど、意外にさっぱりしているんですよね。あるじゃないですか。お好み焼きにソースがドワッとかかっていて、これはこってりしているなと思って食べたら、意外な味で、という。阪本さんの映画にはそういう魅力がありますね。
これもそういう映画になりますか。小沢 世代交替の旗揚げみたいな映画じゃないですか。このタイトルだと前の映画との連続で見る人も多いわけで、その流れに乗るか、真っ向から立ち向かうか、俺は阪本監督は立ち向かっていると思いますよ。で、布袋さんの音楽を聞いたとき、世代が変わったという感動があって。新しい伝説がここからスタートするんですよ。昔のいいものは大事にしなければいけないけれど、それを超えるものが出てこないとね。
・前の「仁義なき戦い」は意識しますか。 松重 僕らの世代からすると、あの映画はすごく面白いけれど、西部劇とか、そういう遠い世界の話みたいなんですね。で、今回の台本を読むと、ヤクザの話だけれど、今の人間関係のドラマで、「仁義なき戦い」をやるんだという気負いをなくして掛からないといけないなと思いました。阪本監督の映画が大好きで、初めて阪本組に入るわけですから。
松田という役がヤクザでも微妙な位置なんですよね。松重 阪本さんの映画でも、僕はストイックな人間関係といったところにすごく感動してきたので、そういうものとリンクさせていくと、これは面白いな、と。門谷とか板野のいる世界と現実との接点みたいなポジションに、松田がいるでしょう。そのへんが楽しめるぞと思ったんです。門谷みたいな生き方に対する憧れも松田は当然持っていて、組織のなかで揺れるんでしょうけれどね。
・やってみて、阪本演出はどうでした?松重 松田という人間を僕がやりはじめると、そこに肉付けがどんどんされていくんですね。出発点は僕が入ったところだけれど、松田はそうやないやろ、松田はそこの部分でテンションが上がっているやろ、と。自分が膨らんでいくわ松豊川さんはストイックに自分の役をつくって削ぎ落とした演技をなさるので、そこに僕も多少乗っかりつつ、違うところで立ち上げないといけないんですよね。昔、テレビの[NIGHTHEAD」で共演して以来なんですが、今回は積極的に豊川さんのほうから飲みに誘ってくれたり、気をつかってくださっているな、と。僕らは脇の人間ですから、主になる人たちの鍵になるにはどうすべきかというパズルみたいな作業があるんですね。
-東映京都撮影所は初めてですか。松重 ええ、いろいろ聞いていて、京都は怖いらしいという妄想がありましたね(笑)。でも、現場に入ると、阪本さんが撮っているということに周りの方たちがすごく暖かくて、作品に賭ける空気があって、まったく違和感なく仕事をしています。監督から発するオーラの力なんですね。色っぽい人だなと思うんです。男優陣がみんなそう言う。何なんでしょう。
松重 ●それは作品そのものが感じさせるし、現場では、監督はどう感じているんだろうと、みんなが信号を必死に受け取ろうとする空気があるじゃないですか。そこに阪本監督の発している何かがあって、同性なんだけれど、色っぽいなと思うんですよ。
この映画がそうなりますかね。松重 でしょうね。人間が生きているということを真正面からとらえている映画ですからね。
大地義行 完成試写を観た時は、ただもううれしかった。自分の演技がどうのとか作品がどうのより、あの「仁義なき戦い」の名前のついた映画に自分が出てるのが信じられんかった」 公開中の「新・仁義なき戦い。」(阪本順治監督)で妙に目立つ男がいる。岸部一徳演じる栗野組組長・粟野和市の弟・幹二。ある時は兄の権威をカサに着て、幹部連中をどやしつけ、ある時は兄に甘えて金をねだったりする。 大地義幸。京都出身。京都のライブハウスでミュージシャンとして活動中に映画「熊楠」のキャストを探していた山本政志監督にスカウトされる。以後、義幸の芸名で「なにわ遊侠伝」(三池崇史監督)、「アトランタ・ブギ」(山本監督)に出演し、「JUNKFOOD」(山本監督)では主役を張った。「自分のことを可愛がってくれたおばあちゃんの実家には、よく阪妻さんや東映京都撮影所のスタッフが遊びに来てたんです。それで子どもの頃から撮影所にはよく遊びに行ってました。その撮影所に仕事で行けるというのは気持ちよかったです」「阪本監督からは「仁義なき戦い・広島死闘篇』の千葉真一のイメージやと言われました。また、岸部さんがフォローしてくれるからとも。出来上がった画面の自分を見た時は、「うれしはずかし、はめられた」。阪本マジックです。今後阪本作品には絶対出たいですね」「一番好きな俳優は勝新さんなんです。「座頭市」のあのさみしくて、哀しい感じ。三池監督が今度「新・座頭市」を撮るという話があるらしいんで、それには絶対出さしてもらいたいですね」 戻る