第一次大戦の大不況の中で、ニューヨークの暗黒街を牛耳った実在のドン、ラッキー・ルチアーノと3人の仲間たちの青春の日々を、史実に基づき華麗に描いた『モブスターズ/青春の群像』。『ゴッドファーザー』を始めとする血で血を洗うハードボイルドなギャング映画は多いけれど、その世界に生きる若者たちを主人公にした点ではかなり異色の作品だ。さしずめ、ギャング版『ヤングガン』といったところで、太ったオジサンばかりがドンパチ殺し合うギャング映画にはウンザリ、という若い女性にはまさにうってうけ。


 実際、第4回東京国際映画祭の上映に合わせて主演スター4人が来日した時、空港にはいち早く情報をキャッチしたファンの女の子たちが溢れ、映画祭の舞台挨拶に至っては熱狂的な声援が飛ぶ大フィーバー。しかも上映中には、スクリーンに向けてさかんにフラッシュが焚かれるという最近では珍しい現象まで起こり、改めてその人気の凄さを認識させられた次第である。
 映画祭の最中に行われた記者会見では、彼らが映画の中の衣装でキメてカッコ良く登場。会場内は彼らを一目見ようという女性記者で一杯だったが、4人とも今回が初来日とは思えないほどリラックスした様子。
 その中でも一番人気は、ボスの中のボス、ラッキー・ルチアーノを演じたクリスチャン・スレーター。子役からテレビ、舞台、映画と活躍し22歳ですでにこの道13年のキャリアを持つベテランで、今年も『ロビン・フッド』『今夜はトーク・ハード』と出演作が相次いで公開され、若手スターの中では注目度ダントツだ。
 これまで反骨精神に溢れた10代の若者役が多かったクリスチャンにとって、暗黒街のボス役は様々な意味でのチャレンジだったという。「TシャツGパンというラフな格好の役が多かったから、こんなにビシッとしたスーツ自体、とても新しい体験なんだ。初めは慣れまで大変だったけど、誰でもオシャレするのは嬉しいもんでしょ(笑)。ルチアーノという人物についてはあまり知識がなかったし、実在のギャングだから演じるのが怖かったよ。僕はニューヨークで生まれ育っているので、知り合いのイタリア系の人たちに直接ギャングの話を聞いて、とにかく史実に忠実にリサーチしたんだ。彼は確かに相当暴力的だったけど、ファミリーの絆を一番大事にしていて、凄く人間味のある魅力的なリーダーだった。だから、オーバーにがなり立てたり威張り散らしたりするような、型にはまった冷酷無比なギャング像にはしたくなかったのさ」
 さすが、ヤングジャック・ニコルソンの異名を持つ若手実力派No.1だけのことはある。そう呼ばれることに対しては、「特に意識してるわけじゃないけど、彼は一番尊敬してる俳優だし、光栄に思ってるよ。僕が似ているっていうのは、かなり特徴あるこの眉のせいじゃない?」とまんざらでもないらしい。
 また、『キャント・バイ・ミー・ラブ』『ダルク家の三姉妹』でめきめき売りだし、舞台俳優としても知られるパトリック・デンプシーは、グループの参謀マイヤー・ランスキーを演じるに当たって、「伝説の人物というより、人殺しを否定していたマイヤーの賢く人間的な部分を強調したかった。本質的にはどういう感情を持ち、どんな苦労があったかを細かく突き詰めていった」のだそう。ルチアーノの片腕として、常に冷静に先々のことを考えなければならなかったマイヤーの苦労と葛藤は、並み大抵のものではなかったはずだが、彼はナイーブかつ理知的で、好感の持てるマイヤー像を見事に作り上げた。加えて、プライベートでも4人の中で唯一の妻帯者である彼にとって、今回の役どころはまさにピッタリだったといえるだろう。
 そして、この映画で初主演を飾るのが、テレビシリーズ『21ジャンプ・ストリート』で人気急上昇のセクシー・ガイ、バグシー・シーゲル役のリチャード・グリーコと、ピープル紙『91年版世界で最も美しい人50人』の一人に選ばれた、フランク・コステロ役のコスタス・マンディラーの新進俳優である。実は初めの予定では、この2人の役柄はまるで逆だったそうだ。そんな話を聞くと、外見的にはイタリア人の血を引くリチャードがコステロで、ギリシャ人のコスタスがユダヤ系のシーゲルという方がしっくりいくかもしれないと思ったりもするが、シーゲルは気性の荒いプレイボーイで、コステロは知的な策略家という点を考えれば、やっぱりこれで正解だったんだと頷ける。
 セクシーさを武器に女性を虜にする、バグシー・シーゲルを演じたリチャード。「映画は初めてだったし、全てにおいてチャレンジングだったよ。とにかく集中してやることが大切で、日頃の自分を持ち込まないようにコントロールすることが大変だった」と語る。
 一方、コスタスは政界や警察を賄賂で操ったコステロについて、「人望が厚く政治から法まで動かす力を持っていた。実際にどういう人物だったかを考えるにつけプレッシャーを感じていたけれど、それを乗り越えてから楽になったんだ。それと、僕らは皆アンソニー・クインが大好きだから、彼が演じたドン・マッセリアを殺すシーンはホントに辛かったよ」と苦笑する。
 やはり、実在の人物を描いた暗黒街の物語は、俳優にとっても思いの外に大変なものらしい。マフィアやギャングからのクレームは?という質問に「リトル・イタリーのギャングの有力者に観てもらって、OKが出たから大丈夫さ」とコスタス。家族から友達まで周りの人たち皆に絶賛されたというクリスチャンは、「ちゃんと演じないと殺されちゃうかもしれないって、撮影中はずっとビクビクものだった。でもこうして生きてるから、映画の出来はバッチリってことだね(笑)」と茶目っ気たっぷり。リンチでつけられた顔の傷の仕組みについても、「あれは特殊メイクじゃなくて、本当に切ったんだよ」とジョークを飛ばして笑わせる。
 今後の活動については、常に自分にチャレンジかどうかを基準にしているクリスチャンは、「型にはまるのがイヤだから、色々な役を演じていきたい」という。自らを「ユーモラスな負け犬的キャラクター」と分析するパトリックは、その個性をいかして映画と舞台の両方で活躍したいそうだ。また、この作品で一躍注目の人となったリチャードは、次々に送られてくる台本を読んで、ただ今次回作を検討中。そして、今回の共演でアンソニー・クインにぞっこんのコスタスは、彼のようにどんな役でも現実味を出せる役者を目指しているそうで、「今度は女性の役をやっちゃうかも。『トッツィー2」なんかどう?(笑)」と意欲満々。
 それぞれ違った魅力で、日本のファンを魅了した4人のナイスガイたち。これからの活躍が楽しみだ。

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