実在したギャングスターたちの若き日を描く「モブスターズ」のプロデューサー。スティーブ・ロスは、小太りのなかなか気さくな人物であった。昼食抜きで腹が減っていたのか、時折スナックをロにし、注文した寿司が届き、横におかれると、それにちらちら目をやり、食べたいけどそうすると失礼になるので押さえているというのがありありと感じられ、ほほえましかった。ちなみにモブスターとはギャングスターと同義語で、ザ・モブとなると組織暴力のことを指し、マフィアとかコーザ・ノストラと同じくらい使われる頻度が高い。 映画スター的存在だったギャングたち ーー最初にあなたのバックグラウンドを話してください。ロス 48年10月25日にLAで生まれたんだが、映画人でLA育ちというのは珍しいんだ。みんなよそからやって来ているからね。父は石油の仕事をしていて、兄の一人が父の後を継いでいる。もう一人の兄リチャードは、映画のプロデューサとなって「ジュリア」「ブルーベルベット」などを製作している。初め石油業界に入ったが、短期間でやめてリタラリ・エージェンシーのエヴァレット・シグラーに入った。ここはヘミングウェイやスタインベックがクライアントとい有力なところで、そこで私は本や脚本映画会社に売ったりしていた。クリエティヴ・アーティスツに移ってから本格的に映画を担当するようになり、「チャイナタウン」「大統領の陰謀」などを手がけた。父からビジネスを通して教えてくれた原則をうまく利用できたよ。それから独立プロを設立したわけだ。
――プロデューサーや映画会社のトップにはエージェントから転向した人が多いのは、なぜでしょう。ロス エージェントは映画製作のいろんなレベルに参加し、すべてのスチューデオの人と関わりを持つ。人間関係を作りあげるのは時間がかかるが、エージェント業務を行なうことで、それが長期的視野によって確立できるし、資金調達ということまで分かるので、いい経験になるんだ。ただ、私は映画製作の最初から最後まで関わることができないことが不満で、プロデューサーに転身した。
ーー「モブスターズ」の製作意図は。ロス 私はジェームス・キャグニー、ハンフリー・ボガート、ジョージ・ラフトが主演した30年代のWBのギャングスター映画が好きなんだ。30年代のニューヨークは、いろんな国の移民がひしめいていた。最初はアイルランド人、ついでイタリア人、ユダヤ人、中国人が来て、人種抗争がたくさんあった。古いギャングスターは人種ごとに別れていたが、この映画ではイタリア人とユダヤ人が手を結ぶ様子を描いており彼らはビジネスとして協力したんだ。
ーー近年ハリウッドではギャングスター映画が流行してますが、それに便乗した企画なんですか。ロス いや。ギャングスター映画はよくある題材で、登場人物はいろんな試練に立ち向かう。生と死が隣り合わせというドラマ形式が気に入り、ハリウッドの古典の伝統に則って作ったのであって、他の映画は意識してない。最近のものはオペラになっているが、それは避けようと思った。
ーーこの手の作品は、ギャングスターを美化していると思いませんか。ロス 派手なものにしたいとは思わなかったし、彼らはたしかに情容赦ない殺人者、犯罪者だ。だが、とてもダイナミックな人物であり、彼らの情熱は認めたい。彼らはその後に権力をもつに至っており、アメリカに大きな影響を与えている。その善し悪しを判断するのは自分ではないと思う。彼らは貧乏で、あの道にいかないと生きていけなかった。当時のギャングスターは、普通の人間よりも大きなスケールで生きており、ルチアーノなどは靴を400足、服を250着も持っていて、映画スター的な存在であった。
キャスティングの妙の舞台裏 ーー今回描かれるのは実在のギャングスターですが、その理由は。また過去の時代ということでコストが高くついたのではないですか。ロス これまでのギャングスター映画で、彼らの若い頃を描いたものはなかった。攻撃的で、ストリートで体を張っていた時期の話で、まさに事実は小説より奇なりなんだ。この映画は1917年から1931年までをカヴァーしており、たしかに衣装、小道具、セットも高くついた。移民がひしめく最初のストリートの場面は、WBのバックロットで撮影。ニューヨークではなく、すべてLAで撮影したんだ。
ーーキャスティングには苦労されたと思いますが。ロス とても難しかったね。四人の主人公を立てなくてはならず、それも実在の人物だけにね。スレイターには多くのリーダーが持つ奇妙なクオリティがあった。デンプシーは話術にたけ、直感の演技がいい。グリーコはルックスが良くベビー・フェースの殺し屋をやるのにぴったり。コスタスはあまり知られてないが、新人を起用するのはプロデューサーとして必要なことだ。「800万の死にざま」でアンディ・ガルシアを発掘したようにね。クインはルチアーノやシーゲルと面識があり、シーゲルと同じ女性とデートしたこともあって、それで射たれたこともあったんだ。彼のおかげで若い俳優の演技が向上したよ。
ーー初めルイス・マンドーキ監督でスタートし、マイクル・カーベルニコフに変わった事情はなんですか。話せるならでいいんですが。ロス できるよ。マンドーキはとても才能のある監督だったが、仕事振りを見ていると彼は決定を下すことができないんだ。多くのキャストが関わっているし、25万ドルかかるのだから、一日遅れればすぐに予算超過になってしまう。それでは困るので変更した。カーベルニコフは新鮮で情熱を持っている。その代わり、カメラマンや衣装係にはヴェテランを配した。若い監督を登用したことは、計算されたリスクというべきだね。海外版は、アメリカの公開版よりも長いと聞きましたが。ロスアメリカでは映画の上映時間が平均2時間なのでそうなった。アメリカの観客は短くて、アクションがパックされたものを好む。文化の違いのせいとおもが、海外の観客は長くてもストーリーのちゃんとわかるものがいい。海外版では25分長いものにし、そのため50万ドル余計にかかったが、それをユニヴァーサルは認めてくれた。例えば、スレイターが橋の上で襲われて打ち合いをする場面アメリカ版にはない。これからはアメリカだけでなく、ワールド・マーケットは重要だということが、これで明らかになったと思う。
――この作品でも扱われてた人種差別、宗教は、アメリカ映画では重要な問題なんですか。ロス ええ。どこでもそうだと思うけど、特にアメリカでは重要だ。映画界は企業家精神にとんだ業界なんだから、黒人に対する人種差別などやめ、アイディアを受け入れていかねばならないね。次回作は。ロス3月にコロンビアから「グラディエーター」が公開される。ボクシングを戦わねば死ぬしかない境遇の青年を描くもので、キューバ・グッディング・ジュニア、ジェームズ・マーシャル、ブライアン・デネヒーらが出演している。ほかに15本のプロジェクトがあり、2月にパームビーチを舞台にしたスリラー『オーシャン・ブルヴァード」の撮影に入る。冒頭で殺人がおき、ついで若い女性が映画のオーディションを受けて、映画の中で殺人シーンがあり......というストーリだ。
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