■当時北アメリカ捕鯨業の中心地だったニュー・ベッドフォードを再現する為、アイルランドの港町ユーガルがロケ地として使用されニュー・プロセス方式により、全篇がにぶい青と灰と褐色で実によく描き出されている。又捕鯨場面には、アフリカのマディラ、カナリア群島、ウェールズのフィッシガード等を転々とし、更にカメラはエルストリー(英)にあるアソーシェーテッド・ブリティッシ撮影所にも据えつけられ、大貯水池に十数のキャッチャー・ボートを浮べて一部を撮影している。撮影最中にはロケ船団に驚い鯨が逃げ出し、捕鯨業者から損害賠償として一頭につき千二百五ドル、四頭分の代金が要求されたこともあった。

■最大の難事でもあり、最も注目された事は、並はずれた巨体、真っ白でシワだらけの額、無気味なビラミッド型の白ロブ、奇怪な形の下アゴと原作にある白鯨をどうしてるかということであった。模型潜水艇を作ってこれに鯨の皮を着せようという案や、生きたサメを捕え、麻酔をかぶせて眠っている間に鯨の皮を着せようという、水中に豆鉄道を敷き、鯨にその上を走らせ、時々水面に躍り上らせようという等が出たが、どれも失敗、結局英国の海洋学者で鯨研究のオーソリティでもあるロバート・グラークが招かれ、大は長さ六十六フィ下、重さ十八トン、一万一千ドルをしたものから中小さまざまな白鯨のモデルが造られた。あるものは遠景用に小さく、またあるものは実際に潮を吹き、ボートや人さえ噛み潰せるほどの大きさで、更にエイハブの最期の場面のクロコース・アップ用には頭部と胸部と尾部の実物大のもの、その皮膚の表面は白い乳液を塗った雲母状のブラスティックに被われ、胸部の皮膚の下にはゴムスポンジ状の物質を入れて、話が打ち込まれた時に血(油性化学品を混ぜたアナリン染料)が吹き出るように工夫されてある。それが鋭い編集(ラセルロイド)と相まって見事な効果を出しているわけである。

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