コンビニで買ってきたビニール紐を凶 器にして、今まさに人が殺されようとしている。そんな緊迫したシーンを背景にしながら、マイクを手にお茶なんぞ飲み雑談しているおふたりは、作家の見知廉(=写真右側)と、劇作家の川村毅と見沢はかつて新右翼運動のなかでスパイを査問し、殺し、埋めて、1年間刑務所に入っていた人物(9月に出所)いっぽうでは獄中で書いた小説「天皇ごっこ」が新日本文学賞を受賞異色の人でもある。ごらんのシーンは、そんな見沢の犯行時のようすを劇中再現したもの。川村率いる劇団第三「エロチカ」の新作芝居「オイディプス、WHY?」(21日まで東京・三軒茶屋のシアタートラム)では、見沢の数奇な半生が舞台にのせられるのである。 「1年ほど前、見沢さんに手紙を書いて(舞台化を申し込みました。実はボクは96年の見沢さんの逮捕記事を鮮明に覚えているんです。こっちは劇団をつくって騒いでいたけど、同い年で政治運動に没入している奴がいるのかと、強烈に親近感を感じた。同時に、この親近感はいったい何なんだろう?とも思っていた。だから今回は一種の世代論になっていると思います」(川村)
 作品には育った環境がまったく違うふたりの男が登場してくるのだが、これは見沢と川村自身がモデル。受験戦争をくぐりぬけて早稲田中学・高校に合格するものの、いつの間にか人間廃棄処理場"のような刑務所に流れ着いている男(見沢)と、芝居を続けることに行き詰まりを感じて飲んだくれている男(川村)の人生があらゆる場面でクロスする。大阪 の万博、三島由紀夫の割腹自殺やら連合赤軍のあさま山荘事件などが時代のキーワードとしてちりばめられているこの作品は、もうひとつのキーワードが、父を殺し母を妻としたギリシャ悲劇の「オイディプス」。「結局、我々は殺すべき父もいなかったんじゃないか」(川村)そういう世代の不幸が描かれている、とも言う。また「ボクが育った新興住宅地のなんとも言えない鬱屈した雰囲気を出すために猫を虐待する子どものシーンを書いたら、神戸の事件で14歳の少年が逮捕された。偶然でビックリしましたけど、下の世代の病理は我々の世代からすでに始まっていたのかもしれないとも思いましたね」(川村)。
 ちなみに本公演の見どころのひとつは、見沢の細かいアドバイスによる刑務所内その場面。薬の飲まされ方や袋貼りの仕事のしかたなどリアルに指導していたが、「自分にとっては小説を書くのも心理療法のひとつだと思っていますが、こうしてドラマになるとまた新たな発見があります」と、見沢。ちなみに、彼が喪服なのは、偶然ながらこの日がちょうど事件から15年目だったから。何やら因縁めいている舞台なのだった。PHOTO野間成昭


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