見沢知廉
鈴木邦男
宅八郎





  

それは、あたかもロールプレイングゲームのようだった。東京の地下鉄にサリンがバラ撒かれたのが3月20日。死者1人、被害者5000人を超える大惨事に、ボクらはテレビに釘づけになった。その翌々日、今度は全国か所のオウム真理教関連施設が、迷彩服の機動隊により一斉捜索された。 正直に言おう。SPA!は「わくわく」しながらテレビを見つめていた。もちろん無差別殺人への怒りはある。だが、心の奥に「正が邪を駆逐する」という、よくできた物語を楽しむような興奮を覚えていたことも否めない。 メディアは「反オウム」を繰り返す。憤りつつ興奮を覚えることの「後ろめたさ」は、いつしか「反オウム」の洪水の中に溶けていった。 5月16日、麻原代表が逮捕され、ゲームは終わった。SPA!は今、祭りの後に似た虚脱感を覚えている。メディアでは「信者の社会復帰」への不安が語られているが、ボクらこそ「オウム事件なき社会」へ復帰できるのだろうか。この虚脱感は何だろう。オウム「報道」「捜査」とは、一体何だったのか?鈴木邦男、宅八郎、見沢知廉民族派、あるいおたく"として、メディアや警察と渡り合ってき異端児たち。麻原代表逮捕の翌日、「オウム報道」と「オウム捜査」について、三氏が熱く語った!

事件に対して、鈴木さんが発言し だした理由は何だったんですか?

鈴木 村井氏が殺された後の「今度は麻原を殺す気ですか」という上祐さんの話には涙が出ました。これはボクも発言しなきゃと思い、積極的に取材を受けることにしたんです。けど、マスコミ批判をすると、「申し訳ないけれど、またの機会に」と言われました。

宅 上祐氏に対してインタビュアーは後ろめたささえ感じてなかった。あの醜さにボクは耐えられなかった。

見沢 鈴木さんが「朝まで生テレビ」に出演した直後、一水会の事務所に抗議の電話が凄かったですね。

鈴木 はげましの電話かと思ったら、「殺すぞ」とか、「村井と一緒に地獄に落ちろ」とか(苦笑)。正直言ってぞっとしましたね。容疑者がどう関わっていたかはわかりませんが、警察の横を許さないはずの「右翼」まで、オウムを許せないと思い、犯行に出たのだとしたら、マスコミにマインドコントロールされているように思いますね。

宅 マスコミ真理教(笑い)。仮に、徐容疑者の背景に何が出てこようと、8時間も包丁持ってうろうろしている状態を生んだのはマスコミでしょ。

鈴木 しかも、カメラで写してる。

見沢 多くの人は心の中で徐容疑者を 讃えていたんじゃないですか。

宅 すでにマスコミに洗脳されてるわけだ。法で裁かれる前に、もう「悪」だと決めつけているマスコミの責任は重大ですよ。誰が責任取るのか。麻原 教祖逮捕の当日は、糾弾してたコメンテーターが勝ち誇っちゃって。TVの特番では、巨大江川紹子さんのパネルが張ってあって江川さんを讃えるコーナーまであった。まるで、江川教(笑い)。視聴者のニーズに合わせて報道してるというけど、視聴者は、「流れてきたから見たんだ」ってことになる。だから、その意味でも責任の所在がうやむやになってしまうよ。

鈴木 コメンテー ターたちがオウム真理教の人々に質問する時、「あな たがたの教義ややり方に、国民は疑問を持っていますよ」という言い方はしても、決して「自分が疑問を持っている」とは言わない。これは凄く卑怯なことだと思います。

すべてを警察情報に頼る、メディアのおかしさと怠慢

宅 だいたい、「ほぼ断定」なんて国語的におかしい。ほぼじゃないから断定でしょ。もし間違っていた時に言い逃れるための「ほぼ」でしかない。

鈴木 しかも、すべて警察の情報に頼っている。だからといって警察発表を 無視すると、締め出されちゃう。

宅 一番の問題は、警察がネタの元締めになって情報をコントロールしていることだよね。一般週刊誌を見ていても、警察がリードしてない、独自の記事はほとんどないと思う。でなければ 「なぜ、この人と接触取れるわけ」と 思うしね。だいたい大本の警察発表もあやしい。実際は供述していないこともあるでしょう。ボクなんか、去年、交通違反で別件逮捕された時には「当て逃げの容疑をほぼ認めている」って全マスコミに書かれた。交通事故があったことを認めただけだったのに。

見沢 ボクの事件なんか、暴走族の内部抗争だと朝日新聞に書かれました。確かに元暴走族だけどね(笑い)。当時は暴走族あがりの右翼が多かったから、そういうヤツが増えているという記事を書きたかったんでしょう。あと、今回の強制捜査で驚いたんですが、長い 問闘争してるけど、迷彩服着た警官を 初めて見ました。逮捕監禁の容疑なのにカナリアが登場するし。警察のアピールですよね。

宅 あの絵作りは、演出でしょう。おかげで、今ではオウムの人たちになら何をしてもいいってことになった。これは、歯止めをかけなきゃいけないと思いますよ。「今回は特例」で納得してる人の気が知れない。

見沢 この前、公安が早速、ボクのとこにやってきていろいろ聞かれました。右翼左翼とオウムが結びついたら危険だからでしょうけど、「開けてくれないと、近所迷惑ですよ」と、戸をどんどん叩く。あれじゃ嫌がらせですよ。

宅 ボクなんか交通違反で、ドアにで貼り紙を張られたり、家宅捜索まで受けてフロッピーディスクまで持っていかれた。「犯行計画文書があるかもしれない」だって(笑い)。明らかに本件で動いてた。「宅vs小学館事件」が狙いだった。

鈴木 例えば赤報隊事件で、新右翼が犯人だと見当をつけたら、証拠がなくてもガサ入れされますね。でも、されるほうは多大な犠牲を払うことになる。普通の人なら人間関係も破壊されるし、大家さんにも出ていけと言われますよ。オウムも交通違反などで何十日間もなんてことをやられてる。とりあえず逮捕すれば、そのうち誰かがしゃべるというのは法治国家じゃないですよ!

見沢 違法捜査は絶対にやってる。ボクなんか24時間尾行されたうえ、電話 の内容も聞かれていました。英国大使館に火炎瓶を投げた時、犯行声明を出したんですけど、その時もどこに電話したかを知っていて、驚きましたね。

鈴木 ところで、なぜオウムに入る若 者が多いのかと考えたんですが、精神世界や政治の間題をまともに話してくれる大人がいないんですね。

見沢 これで若者 たちは行き場がなくなってしまう。連合赤軍事件の後、うちの親は「宗教に入ってもいいから、政治運動だけはやるな」って言ってたけど(笑)これは宗教 もダメでしょう。

鈴木 オウムに子供が出家して入ったら、とにかく子供が悪い。家出された親はみんな立 だとなってしまう。でも、立派だったら家出しないんだよね。何かあって初めて「息子を返せ」「愛している」となる。親はお金をかけて東大、京大に入れた、大企業に入れた。それを取ら れたなんて言うのは親のエゴですよ。どんなふうに生きようと、その人間が幸せならいいじゃないですか。ともかく成人してるわけだし。

見沢 家庭の問題もあるんですよ。出家せざるを得なくなるのは親のほうにも問題があるんだと思います。オウムだけが悪いんじゃない。 個人の意志が尊重されていないんじゃないかと思いますね。ある意味で、出家信者にとっての「親」はすでに教なんだ。それが、マスコミは「出家」と「家出」さえも引っくりかえして言ってるもんだから(笑い)。

鈴木 あはは、そうかぁー。

宅 オバサンの良識というか。村八分というか。日本的秩序を守ろうとする世間体社会に裁かれている面はある。人と違うことはしちゃいけませんという。もう、金太郎飴みたいな人間だけ が許される社会に向かってると思う。

見沢 世間体ファシズム。怖いですよね。多数が特定のものに決まってればいいけど、世間体多数だから。世間体にすがるしかないんですよね。

宅 キリストだって地域住民とトラブル起こして十字架にかけられた。そう考えてみれば、オウムだけじゃなく宗教は全部、邪教でしょう(笑い)。ところが、今、メチャクチャですよね、マスコミは。オウムの施設にはネズミがいるとか、一日二食しか食べないとか、論理じゃなく情緒的に責めたててる。でも、日本的な良識から言えば何も悪いことしてなくっても「おたくは気持ち悪い」し「右翼は怖い」し「左翼はめんどくさい」んだから(苦笑)。

鈴木 宅さんもボクもポリシーは持っている。信条といったり、思想、信仰、あるいは妄想ともいう。それでいいん ですよ。世界中のプロレタリアートが武器を持って立ち上がれと言ってもいい。ただ、今の世の中では犯罪になるよと。もしそうなったとしても、犯罪の部分だけが裁かれればいいのであって 妄想そのものは何を持ってもいいわけですよね。そもそも、UFOとか超能力とか妄想を作り出したのは、テレビや評論家たちなんだし。

宅 そうですよね。

鈴木 おまえらには言われたくないぞ と(笑い)。根本的におかしいですよ。無宗教者が宗教を批判するのはナンセンスだと思います。

宅 だから日本は今、美しくない国家に向かっていると思いますね。オバサンは美しくないですから(笑い)。それに、糾弾する側に比べれば、上祐氏の発言なんて、とても論理的だよね。バランスからいえば、疑いをかけられた人間が釈明しようとするのは、当然のこと。また求めてもいる。法治国家の原則として「挙証責任は疑いをかけた側にあるハズなのに、ほとんど、原則さえ、ゆらいじゃっている。

見沢 アメリカの弁護士協会の人も、「日本の自由はこれでおしまいだ」と言ってましたもんね。

絵を伝え、意味を伝えない テレビというメディア

宅 テレビってのは意味を正確に伝え ないメディアであることは確かだと思ってる。朝生見て思ったんだけど、みんな朝まで見てても論理の流れなんて覚えてない。鈴木さんがどんな服着てたかな、というのに目がいっちゃうのは、テレビメディアが実は絵を伝えているんであって、論理なり意味を伝えるのに適していないメディアである証拠じゃないか。こういうメチャクチャなオウム叩きの中で、ボクらができるのは、例えば、1個ずつ立ち止まって検証するとか、鵜呑みにしないとかっていう真面目な態度だよね。

見沢 今回の事件では、人間からしか供述が取れないですから、警察やマスコミがこういう流し方しないと解決しないっていうふうにもってっちゃってってのが間違いなんで。 逮捕者が次々に自供、っていうけと、あくまで自供だけでしょ。自供だけで組み立てようっていうのは危ない。

鈴木 こうに違いないとか、だから早逮捕しようとワイドショーが言うの はおかしいですよ。ニュースならキャスターが話せばいいし、化学者は薬品のことだけを話せばいい。なのに、ここで作って、ここでやった」と推理してしまう。 そんなことは、テレビで言うべきではありませんよ。

宅 リンチだよ。リンチにしか見えな い。オウムはリンチに遭ってる。

見沢 オウムだからリンチしてもいいと。

勝ち馬に乗ろうとばかり考える、メディアの“正義感“

鈴木 マスコミは報道機関ではなくなった。もはや勝ち馬に乗ろうとしてるだけ。ポリシーが全くない。

宅 そうそう。何かことが起こった時に、悪者を見つけだして、そいつに報 道がバツを与えることで一安心みたいなやり方ですよね。阪神大震災なんかは、天災に向かって悪口を言えないもんだから、政府に向かって悪口を言う。悪者を見つけようとメディアは動いているし、オウム事件もそういう図式で動 いているように思う。

鈴木 よく言えば正義感で自分たちが 動いていると。

宅 それは思い上がりですよね。

鈴木 本来、テレビは材料を提供して、 それをみんなに判断してもらうもののはずなのに。

宅 新聞は全部、東スポになった。変わらないのは東スポだけ(笑い)。結局、教祖逮捕で反オウムの旗をふっている連中が「それみたことか」って大きな顔するわけだけど、あれは醜いと思う。ボクは、一度もオウムがやってないなんて言ってないけど、仮に今後の捜査でオウムが100%黒だということになっても、今まで言ってきたことは間違っていないと思うし、

鈴木 そうだね。だから、青山容疑者の弁護を引き受けた遠藤誠さんを批判するなんておかしいと思う。ボクの教える予備校の生徒には、「もし遠藤さんが父親なら、誇りに思います」という意見もありました。もちろん、江川紹子さんのサインが欲しいなんて言う子もいますしね。いろんな意見があっていいと思うんです。それを堂々と言える社会でなければいけない。

宅 いわゆる世間体ファシズムの世 界では、僕らは負 馬に乗ったように言われるだろうけと、その覚悟がなければやらないし、ただ、損得で動いてたとしたらボクは自分の精神に対して悔やまれると思う個人としてもメディア人としても。

鈴木 麻原教祖が自供したとしても、これまで言ったようなマスコミのやり方や、警察の捜査方法は異常と思うし。ボクらみたいな命知らずじゃない と(笑い)、今、ものは言えない。

見沢 左も右も、結局、負け馬を覚悟 してやってるわけですからね。


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