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暑さには人一倍弱いボクですが、京都盆地の猛暑の中で、三本かけ持ちで、暑いともいえず毎日忙しい日を過ごしています。
かつて、「人肌呪文」「お嬢さん三度笠」と「次郎長富士」の三本かけ持ち以来、久し振りに長谷川先生と共に演させていただいている「疵千両」と山本富士子さんと恋人同志を演じている「白子屋駒子」それに「続・風来物語あばれ飛車」の三本かけ持ちで、忙しい毎日を過ごしているわけです。
京都に来て、旅館住いをしはじめて、もう随分月日も絶ち、最近では、京言葉を少し覚え、撮影所でも、京都弁を使って大笑いすることもあります。
なんとなく不自由さを感じていた宿住まいも、もうすっかりなれてかえって寝ころんだまま、なんでも用がたせる便利さに今ではすっかりごきげんです。
それでも、仕事から帰って、一人宿にいると、なんとはなしに東京のことが思い出されてくるのです。今頃みんななにをしているだろうか?・・・などと、ちょっとセンチになる唯一の時間でもあります。
しかし、床につき、本を読んでいるうちに、昼間の疲れも手つだってか、すぐ眠りについてしまうのが平生です。
京都に来た最初のころは、なんともいいようのない淋しさに耐えかねて、よく同宿の本郷(功次郎)と町へ出て行ったものですが、最近では、そんなこともなくなり、すっかり落ちついた毎日をすごしていますから、ご安心下さい。
本郷で思い出したというと変ですが、現在、彼も「風来物語」の撮影で京都へ来ており、ボクと同じ宿に泊っています。
酒の強い彼と、ビールをのむのもまた久し振りのことで、とても楽しい毎日です。
飲むといっても、馬飲みをしてはいませんから、これまたご安心下さい。
さて、お仕事のですが、最近やっと一人でメーキャップもできるようになりました。
もっとも、汚れなどの時はメーキャップの人にてつだってもらうのですが、きれいに顔をつくるコツを覚えましたから、喜んで下さい。
それに今迄は、いつも下手だなんていわれた立廻りも、出来るというより、動けるようになりましたので、これまたあわせ喜んで下さい。
でも、大変な汗かきのボクですので、立廻りのあとは、汗でメーキャップはくずれるし、衣裳はグッしよりにしてしまうし、これにはへいこうです。
夏の京都というか、夏の時代劇は初めてですので、本当にこの暑さだけには困ってしまいます。
だって、オープン・セットの時などハブタイまでくずれて来ちゃうのだから、どうすることもできないです。
早く秋になればいいのに、といつも勝手なことばかり思いながらザーザーとシャワーをあびている始末です。
ところで、先日も電話で話しましたが、ちょっと盲腸が痛み出して、今はまアなんとなく冷して散らしはしましたが、この忙しさが過ぎて、ちょっと暇がみつかれば手術しようと思っています。
やはり、なんとなく気がかりなものですから....。さて、現在三本に出させていただいているうちでも、「白子屋駒子」番頭忠八の役をいただいたのが、なによりもうれしくてしかありません。
ベテランの山本富士子さんのお相手ですが、どこまでやれるかです。ちょっと心配でもあるわけです。
山本さんとは「いつか来た道」「千姫御殿」に次いで三度目の共演ですし、意識せずに演って行こうと思っているわけです。
しかも、その後は、時代劇とはいえ、長脇差をさすわけでもありませんし、それだけに大変難しいわけですが、これまた意識せずに、現代劇のようなつもりでやつて行こうと思っています。
いくらかでも純情な青年番頭という点が描かれれば、ボクは幸せなのですが・・・.。
そして、欲をいえば、封建の世に生きながら、その美しい恋に哀しく生きようとした男女の姿が出せればと、今からファイトを燃やしているわけです。
だから、あまり得意ではないラブシーンではありますが、とにかく一生けんめい、自分のできるだけの力を出して演ろうと心がけています。
ところで、先日、二日ばかりのお休みの時、岐阜へ鵜飼を見に行って来ました。
漁師の恰こうをして、舟に乗っけてもらい、思う存分、鵜飼の楽しさを味わって来ました。
遠く離れたところの、見物船から見るのなど比較にならぬほど、もう一度行ってみたいとも思う程、楽しい一日でした。
でも、さつきも書いたように、ちよつと盲腸が悪いものですから海へ行ったり、プールへ行ったりして泳ぐこともできないのは、せつかくの夏というのに残念でしかありません。
だから、夜はTVで野球をみたり、本を読んだりして、なんとなく過ごしているわけですが、おかげで、毎週の週刊誌など、ほとんど読んでしまう程です。
土地不案内もあって、あまり、外へ散歩に行くこともしませんが、宿の近くの観音さまへはほとんど毎日、夕食後には散歩に行っております。
うつ蒼と繁った木陰からもれる月の光りを受けて、一人呆然と下駄の音をたてて歩いていると、なにか、とても遠いところにいるような気持になり、無しように淋しくなることもあります。
しかし、昼間は会社に行っていると、みんなとても親切にしてくれるので、そんな淋しさなど、みじんも感じませんが・・・・。
まだ若輩のボクが、仕事では恵まれすぎているほど、いい役がいただけるのですから、本当にいうことはないですね・・・・。
でも、などとまた我ママなことを書くようですが、今年になってのべ二十日間ぐらいしか東京にはいたことがないのですから、なにかうまい、イキのいい寿しがたべたくなるのは仕方ないでしょう。
今度、東京へちょっとでも帰ることができれば、イキのいいスシを一番に食べたいものと思っています。
なんだか、自分勝手なことばかり書き綴りましたが、東京の方はいかがですか?たまに東京のホット・ニュースでも聞かせていただきたいと思っています。
みなさん毎日暑いですが、体の方は大丈夫ですか?
もし、ボクの東京の友だちにお会いの折は、呉々もよろしくおつたえおき下さい。
一度またバカ騒ぎをしたいと思つています。
ただし、最近お酒は止していますから、酒なしパーティーでも催したいものと不敵な考えをもつているとおつたえ下さい。
でも、当分東京にも帰れそうにありませんので、秋に涼しくなったら、ママも一度京都に来てはいかがですか、いろんなところへ案内してあげたいと思いますので・・・
本当に一度、暇をみつけて、そちらから京都の方へおいで下さい。
いつも、来る来るといいながらいざとなると出渋っているママだけど、今度は、本当に来て下さい。お待ちしています。末筆ながら、みなみなさまの御健康とご健闘をお祈り致します。では又ーー 母上様八月×日、京都にて勝彦