佐藤浩市
真田広之





  

「おまえ、シブイかっこしてるやんけ」と無邪気に再会のあいさつをしたおふたり。映画「道頓堀川」での共演が話題を呼んだけど私生活でもとっても仲がいいそうだ。写真にもそんな雰囲気がよく出てるでしょ。さて、昭和35年生まれの男ふたりがじっくり語りあう。グラス片手に気分は盛りあがるばかり、夜はふけるばかり。

佐藤 最初会ったのは2年前だよな?

真田 京都太秦の撮影所の門の前ですれちがったりしてて。宿が一緒でね、その食堂で初めて会った。日本酒飲んだんだっけ、その時は。

佐藤 オレが先に飲んでたんだ。おまえ、 オレのことオッサンやと思ったやろ。

真田 そうそうそう。

佐藤 すごくケンキョな態度でな。

真田 イヤ、そういうのじゃないよ、初対面だからさ。オジンに見えたわけじゃなくてさ。じゃまァ・・・・・・ということでいきなりトックリですよ。で、ゴックンとやって、それから始まりましたね。

佐藤 東映京都撮影所)行くといじめられるいじめられると思ってたんだよね、フシギにいじめられなかったけどね。

真田 ガクラン着てさ、肩で風きって歩いてたじゃないか(笑)。ボクなんか圧倒されてさ。

佐藤 こちら(真田クン)はもうそん時スターさんだから。「オッ真田広之やんけ、あいつ。意外にチビやな」(笑)。へえーと思いましたよ、フツウっぽいでしょ。

真田 ボクなんか、会う人会う人、「映画だと大きく見えますねえ、意外ときゃしゃですねえ」その人の目がスッと下の方におりてきてさ。(笑)

佐藤 そのあと、東京で新春パーティがあったんですよ。

真田 ボクなんか年に1回だから、ほかに着る機会もないし蝶ネクタイなんかしめて行ったんですよ。で、彼はヨユウでね、ジーパンでくるのね。おっカッコイイナと思っちゃったよ。

佐藤 イヤ、今だったら着てくるんだよ、 持ってるから、タキシード。オレはいきなりこの世界はいっちゃったから何も持ってなくてさ、あっいけねえなって思ったら彼がいてさ。妙になれなれしく声かけてくんだよね、あっウレシイナと。(笑)

「道頓堀川」以前にそういう親しいつきあいがあったことはよかったんでしょうね。共演のあと、つきあい方が変わったとかはありませんか。

真田 仕事の場とふだんとは当然ちがうけど、両方の雰囲気を知っといた方がいいみたいね。

佐藤 現場は、ボクはリラックスしてやる方なんですよ。でもお互い知ってるだけに別なキンチョウがあったよね。

真田 彼は現場を盛りあげるのがうまいんですよ。サクさん(深作欣二監督)とね、いいコンビなんですよ。(笑)

佐藤 オレ、楽日にサクさんと大ゲンカしちゃってね。いいかげんだからふだんはすぐ折れちゃうんですけど、あの時は折れたくなくてね、真剣だったもんで。

真田 自分の主張みたいなものをスゴク出してくるのね。スゴク刺激受けましたよ。ボクなんかああいうとこ(JAC)で先輩にかこまれて育ってきたし、とにかく自分から”引く”ことがいいことだみたいに教えられてきたでしょ。役者としてやってくためには、ある程度自分を出してかないといけないな、と彼の姿を見ていてちょっと目覚めたね。

佐藤 そういうことではオレも同じ。お互い、役者としての育ち方が対照的でしよ。彼は礼儀とかきちんとわきまえていて、あっオレはいかんなと思う部分もあるんですよ。でも今さらオレがね、そういう風にしちゃうのもテレくさいし・・・・・・でもケンキョになったんだぜ、だいぶ。

真田 エッ、ホント!?!

浩市クンは目下、初めての現場(東映大泉撮影所)で新作「日本海海戦海ゆかば」の撮影にはいっている。毎日が戦のつもりで通ってるとか。明日は7時起きだって言ってたけど大丈夫かなァ。

佐藤 「道頓堀川」っていうのは思い入れあったよな、お互いに。

真田 あのあとの「影の軍団~」(TV)なんてヒサンだったぜオレ。それまでナヨナヨしていて、次から「おカシラ!」なんてさ。立ち回りでNGは出すし。裸のシーンばかり話題になってさ、1日30回くらい聞かれるんだよ。その中で復帰第1戦だなんて関係ない人まで見にくるんだよ。たしかカメかなんかの上に乗ってやるシーンでさ、ズルッとかいってカメの中にはいっちゃってさ、恥かいちゃった。顔も手もススだらけで。(笑)

佐藤 思い入れが激しいとさ、次の現場にはいった時のきもちの転換が苦しくてなあ。「道頓堀川」の時は広之は受けの 芝居だったんですよ。だからつらかっ たんじゃないかな。今度共演できる時は、またちがった形でできると思うんだ。

真田 今は押して押して押しまくるような役ばかりだったでしょ。人のコトバやら行動によって自分が流されていくというのは初めてだったな。

佐藤 今度はお互いアラさがししながらやろうと思っててね、ナッ。

真田 つっつきあってね。やっぱりそうなるでしょうね。

真田さん冷酷な役なんてどう?

真田 悪役ってのはあこがれますね、ボクは悪の哲学とか、悪の美学ってあるでしょ、それはそれで美しさ感じちゃうね。純粋無垢な正義感ふりかざしてる少年よりはよっぽど味があってね。

佐藤 逆に言えばさ、ワルってのは追いつめられた手段なんだよな。それしか手段がないからそうしてるってだけの話で今度のオレの役もワルなんだよ。戦争っていう極限状態の中でさ、こうしなければ自分は生きていけないというか、まぎらすことができないとかあるじゃない!!きょう、おまえ、わりと飲むな。

真田 水割りってこんな飲むことないんだけどね。ふだんはビールか焼酎。

佐藤 オレ、今、日本酒やめてんだぜ、ハラ出るから。もう十分出てるもんな。コイツはね、次の日仕事があるっていうと絶対飲まないんですよ。オレは酒の匂いプンプンさせて現場へ行くもんでね、コイツ見るとエライなあと思うんだけど、絶対飲まないな、おまえ。

真田 そうだね、つきあい悪くて申し訳 ないんだけど、できないんだね。

佐藤 そっ。現場はいってね、オイ、ヒロ、 きょう飲みに行こうって言うと、明日早いからちょっと......。何言ってんだおまえ!ってね。

真田 さんざんおこられたんですよ。

佐藤 でもそれは当然だよな、ほんとは。

真田 まあなんと言うか。プロ根性まではいってないけど・・・・・・臆病だからね、準備しないと不安でしょうがないわけ。現場で恥かきたくないしさ。自衛本能っちゆうかさ。

佐藤 オレはプロ根性とかそういうのはなくてさ、いいかげんな人間なんだけど、まァ、あと3年くらいは許してもらえる んじゃないかなと。これでもね。

すでに夜の10時をまわった。ハラペコ のふたりは旺盛な食欲を発揮。

真田 おまえ誕生日いつだっけ?

佐藤 オレ、12月の10日だよ。

真田 あっ言ってくれればなァ。

佐藤 よく言うよ、すぐ忘れんだろ、お まえ!おまえ7月だろ?

真田 ああ~!(声を落として)10月 だよ。誰の誕生日だ!?!?いったい。

おふたりとも晴れて22歳ですね。

佐藤 去年はパーティやったんだよ。イヤなんだよな、たかだかテメエの生まれ日を、ご多忙の中あつまって祝ってもらうのってテレくさいじゃん?で、今年はやんなかったんだよ。

真田 そうか、じゃきょうは遅ればせながら・・・・・・ケーキ買ってくりゃよかったな。

お酒はどちらが強いのでしょうか?

佐藤 こいつの方が強いんじゃないかな。酔っ払わないんだよな、おまえ。

真田 とことん飲んだことないからなァ。陰気な酒、絶対ダメなんですよ。それからヤケ酒は絶対飲まない。

佐藤 それはエライ!

真田 ちがうんですよ、落ちこむとね、 もう受けつけないんですよ。

佐藤 ボクの強みはね、二日酔いしない ことなんですよ。回復力が早いの

真田 絵(映画)にあらわさないとこがプロだな。

佐藤 よく言うよ。

真田 ボクなんか飲むと明くる日ダメだから。カメラマンに文句言われるしね。

佐藤 ぼくら、結局イメージによる商品だから。そういったレッテルがすごく重荷になる時もあるし、ラクになる時もあるし。ヒロユキの場合はレッテルってのがかわいそうだなと思う時があるよ。

真田 つらい時があるね、やっぱし。

佐藤 ぼくだってさんざんレッテルはられてるし、ぼくなんかほんとは人の2倍3倍努力しなきゃ世間さまに認められないし。しょせんオヤジの名まえでオレはメシ食わせてもらってるし。

真田 あっそうだ、それで、ぼくはね、全然知らなかったんだよ、おとうさんのこと。「道頓堀川」が始まって途中で初めて知って、「ハハ~~~ッ」と平伏)。

佐藤 オレは、パーティで会った時、オレが三国連太郎の息子だからおまえがあいさつしてくれたのかと思ったぜ。

真田 上等な根性してるよ、おまえ。

佐藤 そういう私生活がどれくらい反映されるかっていう、実験的な意味あいってあるでしょ。すごくコワイなァってとこがあるし、逆に楽観的な部分ない?なんこのまま行っちゃうなって部分あるね。

真田 ほんとに.....?!?!オレはもがくタイブだろな、絶対。

佐藤 おまえはな、そうだろなァ。ヒロの場合は出さないでしょ、カオに。コイ ツフトンの中では真剣に悩んでいると思うよ。

真田 それじゃクラすぎるじゃないか!ネはクライよ、そりゃ。クライけどフトンの中でジメジメ泣くっちゅうのは、それはないよ。(笑) せめてフトンの上で泣きたい。(笑)

ふたりで一緒に見た映画「オン・ザ・ロード」はハートにグッときたという話から、将来について熱っぽい対話が始まった。まさに食うか食われるか!!

佐藤 ほんと、マジメに役者として、ふたりがこれから先々一緒にやったとしたらね、今度現場で会った時、「オハヨウ!」ってあいさつを交わすだけでしゃべんな くなっちゃうのかなって思う時あるよな。

真田 あるある。終わって初めて口きく程度というような。「飲もうか」っていうのがクランクアップまでなくなるということも考えられるしね。

佐藤 ウーン、そういうのあるなァ......。

真田 わりと真剣に相手を見つめて自分も見つめてやったりなんかするとね。大先輩とか他人とちがって気がねのない間柄ということもあるのかな、お互い、自分がとる態度に関してね、相手もこうくるということがわかりあっちゃうとね。

佐藤 実際そうなった方がおもしろいと思うんだよ。ラッシュを見終わった時ひとりがグッと苦虫をかみつぶしてね、で次のラッシュで逆転するとかね。そういった関係になるのが役者としてほんとは一番いいのかもしれないけどね。

真田 何勝何敗とかね。

佐藤 現場ではボクなりの雰囲気を作りたい、ボクはテストの時は冗談言って笑わせて、自分のペースに持っていく。そうすると納得のいく芝居ができるし

真田 ボクは逆だな、人に合わせちゃう。みんなどうなんのかなァ、監督はどうするのかなァ、あいつはどうするかなァ。

佐藤 おまえ、殊勝だな、現場で。

剛と柔ですね、攻め方が

真田 でもさ、「道頓堀川」の時はスタッフの人も両方のやり方を理解してくれたしね

佐藤 そういうイミじゃおっさんのネライは当たったな。

真田 ウン、当たった、ヨミが。もうアタマあがんないけどさ。あっ��おっさん”って書かないでくださいね。(笑)

深作さんのことですね、ちゃんと書いときますです。

佐藤 イヤァ、親愛の情としてさ(笑)。「蒲田行進曲」見た?あれにはカウンターパンチ食らったな。

真田 みんな食らったんじゃないの、同業の人はつかこうへいさんとこの匂いがだいぶきてるけども、やっぱり最終的にね、泣いたままいつのまにか笑っ てて、笑ってる間に涙がこぼれてきて、と いうあのサクさんのリズムにはもう......。

佐藤 やっぱしつかさんてのは絶対ソンしない状況の中で映画作ってるんですよ、おこられちゃうかもしれないけどさ。ひとつにはナメてんなって気があったわけですよ、オレはフィルムの人間だと思ってるからさ。それをサクさんがね、もの見事に逆転してくれたっていうね・・・・・・そういうイミでボクは見て泣いたですよ。

真田 見ながらいろんな感情ふくらましちゃうのね。映画以上にバァーとイメージふくらましちゃうから。みんながシラ 見てるとこでも泣けちゃってね。

佐藤 ほんと映画やっててよかったなァ。ボクらなりの解釈で、ボクらなりに映像愛してるし。ハナシがジメッとしてきたけど・・・・・・ボクたち、ヤス(と広之クンを指さす)と銀ちゃん(自分をさす)ですから。(笑)

真田さんはそれでいいんですか。(笑)

真田 やっぱ、そうなるでしょうね。

佐藤 「手錠のままの脱獄」なんかやりたいな。

というわけでふたりは夜の巷に消えて行きました。”昭和35年生まれの会”を発足したいと広之クンは怪気炎をあげてくれたが、各界のスーパースターが、ガッチリスクラム組んだら鬼に金棒だ。5年後、10年後の彼らを楽しみに待とうね。<構成・内海陽子>


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