「ローカルヒーロー 夢に生きた男」の撮影はテキサス州ヒューストンから開始された。西欧社会の中で最も速いスピードで成長した都市である。 超高層ホテルビルが立ち並ぶオフィス街、コンクリートジャングルの街ヒューストンはもう一つの撮影地スコットランドとはあまりにも対照的な世界だった。 このヒューストンでの一週間の撮影の後、クルーは60階建てのテキサスコマースタワービルから一気に スコットランド西部にあるカムスダラック・ビーチの銀色の砂浜へと飛んだ。 ここは、人口の少ないスコットランドでも特に辺鄙な地方で、浜辺には人影も見られない。 総勢80人からなる撮影隊は、フォートウィリアムをベースに、アバーディーンの北にあるバンフ近辺の北東沿岸で残りの4週間の撮影のために再編成された。 こうしたロケ地の移動が生じてしまったのは、デヴィッド・パットナム、ビル・フォーサイス、そして 共同プロデューサーのイアン・スミスの3人がヘリコプターでスコットランド沿岸をロケハンした際に、 彼らの発見した理想の浜辺は西海岸地域に、そして漁村は東海岸にあったという事実によるものだった。

プロデューサーのデヴィッド・パットナムと監督ビル・フォーサイズにとって1982年は目覚ましい評価の年だった。 まず、英国フィルム&TVアーツ・アカデミーの賞をパットナム製作の「炎のランナー」が受けた。さらに、アメリカのアカデミー賞において 「炎のランナー」があらゆる予想を裏切り、激しい競争に勝ち抜いて最優秀作品賞を含む4部門のオスカーを獲得したのだった。 そして今、そのパットナムとフォーサイスの二人が一緒に作品を作った。「ローカルヒーロー 夢に生きた男」。スコットランドの 田舎の小さな漁村にアメリカの石油化学コンツェルンが石油精製コンビナートの大プロジェクトを持って乗り込んでくる。 交渉に派遣されたビジネスエリートはスコットランドの生活に心の安らぎを見出し、地元住民の方は計画に反対するどころか一獲千金を夢見てはしゃぎだす。

最近の作品では「アトランティック・シティ」で米国アカデミー賞にノミネートされたバート・ランカスターが ノックス石油・ガス会社社長フェリックスハッパーーを演じる。その風変わりな性格の一部には、異常な天体マニアが含まれている。バート・ランカスターはこう語る。 「アトランティック・シティ」以来巡り合った最高の脚本が「ローカルヒーロー」だった。 正直に言って、興味をそそられる作品がなければもう一生映画に出なくてもいいとさえ考えていたところだった。 まったく信じられないほどひどい脚本が次々と送られてくるのには閉口してしまう。 セックス&ヴァイオレンス・イン・ハリウッドと我々が読んでいるものばかり。ところが「ローカルヒーロー 夢に生きた男」は全然違っていた。 あの愛すべきイーリング撮影所の映画に通じるものを感じたんだ。ローカルヒーローには悪者は一人もいない。ただ風変わりなだけなんだ。

「炎のランナー」同様ローカルヒーローでも下地となるアイデアを提供したプロデューサー、デヴィッド・パットナムはこう言う。 「スコットランド沖の小島の、ある税理士兼農家の主人がアメリカの大手石油会社と結んだ契約について書かれた2、3の新聞記事が目に留まったんだね。 これは途方もない話で、契約内容ももつれていた。私はそれにとても興味をそそられた。 スコットランドの田舎町の住民とアメリカのビジネスマンがお互いどういう風に異文化に反応するかを見るのはおもしろそうだと思ったんだ。」 パットナムはこの映画のルーツには、往年のフランク・キャプラやプレストン・スタージェスの映画があるという。


戻る
inserted by FC2 system