原作者 ローレンス・ヴァン・デル・ポスト インタビュー

この映画を観た夜は興奮してよく眠れなかったという氏との話が始まった。

ローレンス 「この映画が終わって帰国して3日後のトム・コンティにロンドンで会ったのだが『大島との仕事は素晴らしかった。生涯で忘れられない体験だった』と言っていたよ。 これまでに作られた戦争の真実についての深みのある唯一の映画だと思う。たいてい戦争映画と言えばメロドラマになってしまう。」

――原作は3つの物語で構成されていますが、それを一つにまとめている。

ローレンス 「これでいい。原作は同じ事を3つの側面から描いたものだからね。特に、原作の最初の部分を映画の最後に持ってきたのは正しい。 つまり、ハラ軍曹の役割は、ここで英国人のロレンスに引き継がれることになる。この役割転換は私の狙いで、ハラのイメージはロレンスに移っている。 処刑されるのはハラだが、精神の戦争では、ロレンスの側が敗北しているのだからね。その配役が良い。」

――じっさいに日本兵はあんなにうまく英語をしゃべりましたか。

ローレンス 「例えばヨノイの原型となった日本の将校はとてもいい英語をしゃべっていたよ。塀の中にもよくしゃべるのがいた。だから、例外は常にあるのさ。」

――デヴィッド・ボウイはいかがですか。

ローレンス 「映画で初めて彼を見たよ(笑)。子供から話は聞いていたが、見たことはなかった。いや、すばらしいよ。 大島氏が出演者たちから良いところを引き出す才能は驚くべきだね。それに出演者たちの選択が実に的確だ。 とりわけ顔の選択は完璧で感心した。日本兵たちの顔つき、その選び方はまったく申し分がない。」

――戦場のメリークリスマスのヨノイを見ながら私は三島由紀夫を思い浮かべて仕方がなかったのですが。

ローレンス 「三島由紀夫には私は会っているよ。カリフォルニアのバークレーで文学セミナーがあったとき、三週間一緒だった。 英語がうまくユーモアの感覚に鋭く、感受性が素晴らしく、気持ちのいい男だった。 だが私は心配でもあった・・・。 つまり、彼の場合、生まれながらの自然のままの自己と、自分が作り上げようとする自己との間の距離がありすぎて・・・。」

――それは、自分のスタイルを持ち洗練された(ハラ軍曹とは対照的な)ヨノイにそのままあてはまる。

ローレンス 「うん、ヨノイについて言うとね、映画のヨノイは私の小説の中のヨノイの下となった日本軍の将校に、 まさしく本当にそっくりすぎるほどそっくりだったので、実は私は驚いているんだ。 見ていて本当にショックだったよ。あの奇妙なフィーリング…。そう、三島や彼は、自分の内部で、二つの自己が内戦を起こしている。 一方ハラ軍曹は生まれたままの自己そのままで、つまり彼はイノセントであるのだが、 それは大智にも通じていて、だれにも、行きつけないある高みに達することがある。 ある種のヴジョンに達し、ロレンスたちを越えてしまう…しかし、三島由紀夫には、ある誠実さがある。 彼は、生きる代わりに、死ぬことによって自分の誠実さをうちたてたのだ。 彼の悲劇は現代人ならだれにも起こりうることで、非常に悲しい事だが、このことを理解することが重要だ。 それから、異文化に触れたとき、そこから何かを生み出していく、それが我々ものを書く人間の役目だよ。」


戻る
inserted by FC2 system