戻る
コメディタッチのものはあったけれど、いわゆる喜劇です、という映画はなかった。 今まで自分に喜劇の依頼が来なかったのは、作る側にその発想がなかったからでしょうね。でも共演者にしてもそうなんですよね。 この間、樋口可南子さんと初めて仕事をご一緒した時に、私の事嫌いなんでしょって言われたけど、 たまたまご縁がなかった人はいっぱいいるわけで。中井貴一とも一緒にやったのは40過ぎてからだし。キャスティングはやっぱり作り手側の発想によるから、それと一緒で、僕と 喜劇という発想も今までの人になかったわけで、そういう意味では三谷さんはすごいですね。
主役というのは制約が多いから、主役の隣あたりの役が一番いいですよ。気が楽だし。
これはそういう意味で珍しい役・村田大樹はいわゆる寅さんなんですよね。 ふつう、映画の主役は奔放であってはならないんですけど、大樹は男はつらいよの寅さんと同じような存在だから許される。 シリーズにしたいわけじゃないですが、でも、喜劇にもいろいろな種類があって、ついこの間まで、宮藤官九郎さんの少年メリケンサックと言う作品に出演していたんですが、 同じ喜劇でも工藤さんと三谷さんでは喜劇の種類が全く違う。誤解を受けるかもしれないけれど、 ザ・マジックアワーは老若男女楽しめることも含め、結構その芝居の塩梅が重要だから、かなり脚本を読みました。 でも工藤さんの少年メリケンサックではセリフを覚える以外脚本をほとんど読まなかったんです。 シーンのつながりとかはほとんど関係なく、そのシーンごとの勢いの中で僕の演じる人間がどう動くかと言うことが大事だったから、 即興ではないけれど、それに近い状態で演じていました。まだ数本しか出ていませんが、喜劇と言っても、そのテイストを含めて色々あるなと思い、勉強になりましたね。 これからずっと喜劇を続けていきたいと言うわけじゃないけれど、でも次に三谷さんの映画が合ったら、この村田大樹として1シーンだけでも出たいな、と思うくらい、この役に対する思い入れはありますね。
これは、ありそうでなさそうというより、あるわけない話なんですよね。 守加護という町も含めて。ただ、そのファンタジーの中に入った時に、売れない役者の村田という男だけは、ちょっとだけ僕ら同業者から 見たある種のリアルさがあるようにしたかった。だからジーパンにハーフウェスタン・ブーツを履いていたりといった、 そういう所の素朴さには僕も監督もこだわってみたりしたんですけど。別にリアルを追求するわけじゃないけれど、僕が仕事を始めた80年代初めには、 スタッフも役者も、こういう格好の人が撮影所にあふれてたんですよ。そのイメージですね。 でも村田大樹という男は、気持ちがミゼラブルに見えてはいけない。傍から見れば単純なくらい前向きですが、どんな格好をしてもミゼラブルに見えてはいけない。 そういう気づかいはしました。それに、村田は単純だけど、どこか意外に現実的なところもあって。劇中で、村田が自分のシーンのラッシュを見て泣けたという所も うれしいからじゃないんですね。喪失感を感じているからこそ、それを持ったまま町を去ろうとするんです。
ちょっと意味合いは違うけど、暴力脱獄は何度も見ましたね。ポールニューマンが何度失敗してもあきらめない。 ああ、こうやって話しているとまた見たくなってきますね。
三谷さんは頑固、ですよね。でも映画に対して本当に経緯があって、幼年期から今に至るまでに見たたくさんの映画への敬意と畏敬心みたいなものが、非常に誠実に伝わってくる。 現場では最初に段取りで動いて、そのあと若干のアドリブが入りながら、2、3度テストを繰り返すんですが、そこでアドリブがスタッフに受けたりしていても、結局元の通りに戻していく。 そういう所が、非常に三谷さんはかたくなだなあと。 君塚さんと工藤さんは、案外フレキシブルですが、現場では対極にいたなあとも思う。 でも三谷さんも、ザ・有頂天ホテルのときはワンシーン、ワンカットがほとんどだったので 現場でいろんなアイディアを出しつつ、テストごとに構築していく感じがあった。 ですから、今回のマジックアワーは、三谷さんのこうやりたいという思いがとても強い作品だったんだなと思いますね。