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小説家でも映画監督でも、そのデビュー作に作家としての資質、 好みが殆ど100%出ているというが、相米慎二も?先に原作も 主演者も決まっている注文仕事であったが?その例に洩れなかったのではないか。
デビュー作「翔んだカップル」。脚本は、前年にデビューしたばかりの、オレ。
初対面。原作マンガを読んで駆けつけたオレに、伊地智啓プロデューサーは「どんなカンジだ?」。オレは、「グッバイガール」(ニール・サイモン脚本/77)のカンジにしたいと言った。 相米、無言。抱負など、一切なし。
一週間で第一稿を書いた。オレもプロデューサーも、初メガホン をとる相米の意見を聞きたいが、無言。出るのは、ため息ばかり。
相米と旅館にはいったが、それでも殆ど無言。一日に二時間ほど顔を出すプロデューサーも、じっと見守るばかり。数日間が無為に過ぎて、 ある夜、先に蒲団をかぶって寝た相米の枕もとで、オレはこんな奴とは今夜で最後だと思い、訣別のつもりで、オレのことを語った。 相米が聞いていようがいまいが関係なく、オレが東京に出てきて十三年間どういう恥をかいて生きてきたか、隠さず話した。
明け方、相米がクスッと笑って、?初対面から二か月目で初め笑う声を聞いた?ガバッとハネ起きた。 「なんで、そういう素直な気持ちで脚本を書かねェんだ」
相米は、ずっと待っていたのだ。
撮影が始まって、セットに行った。殆どが中学生の出演者を前に、 注文らしいものも出さず、自然に近い演技ができるまで、ジッと待っている。
オレ「どんな時でも、ジッと待ってんだな」
相米「おう。待たなきゃな。丸山が二ヶ月経って話をした 時も驚いたし、出演者が四時間も五時間もリハーサルしたあと突然フツーに動いて喋れるようになった時も驚くよ。もっと驚いたのは、ゴンさん(撮影の水野尾氏)。 俺がずっとリハーサルやって、やっ を撮りましょうかってなるだろ。大体こんなサイズでって。 ゴンさん、ジッとみててさ、スッとキャメラ引くんだよ、俺が大体きめてサイズよりバーッと引くんだ、驚いたよ」
監督・相米慎二は、スタッフの一人一人、出演者の一人一人が、 自分を驚 かせてくれるまで、ジッと待つ。それがデビュー作からそ うだったのだ。決して、相米(あいまい)ではなかった。
その後オレは、かなりの数の監督デビュー作の脚本に参加した。彼らは例外なく先生攻撃をしてくる。デビューへの意気込みと初作品へのあふれんばかりのイメージ。現場でも自分の思い通りにフィニッシュできるようせっかちに決めつける。それが、当り前だ。
相米は、当り前じゃなかった。
当り前じゃない奴とプロ二作目で組んだオレは、それから二十数 年間、次の二点を守るようにしている。うまくいかない時もあるが。
一、脚本家である前に本性を素直にさらけ出す
二、監督を驚かす脚本を書く