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安藤ありさ 画像
安藤ありさはアニメファンが声優になった第一期の象徴的人物なんだよな。 中高生以上のアニメファンを史上始めて獲得した「宇宙戦艦ヤマト」のファンだったこと、 さらに宇宙戦艦ヤマト3のED作詞に公募当選し実際に使用されたということから分かる通り、 世代論的には庵野秀明を代表とする「TVが青春だった」世代で、 その自らを取り巻く環境に対し、彼らと同様に行動的だった。 で、そういう人間が声優界に飛び込んだという点で、そのヒストリーには価値がある。 初デビュー作がプラレス三四郎のヒロインで、その後は 北斗の拳のアイリ、超時空騎団サザンクロスの助演、ふしぎなコアラブリンキーの主役と 順当にヒロイン声優としての道を歩んでいくが、順当だったのはここまで。 よく声優三段法とか言って、アトムが始まった60年代から80年代前半を生活感のある声、 90年代後半から現在をのっぺりした声、80年代後半から90年代前半までを中間、という風に書いてたんだけど 安藤ありさはどう考えても旧世代の声、つまり生活感のある声だった。いわば70年代の声というのか。 もちろん明るさも若さもあるが、同世代の売れっ子の枠と比べるとどこか飛びぬけないというか、華がない。 彼女のデビューした80年代前半はまだそういう旧時代のフィーリングも必要とされ、そういう声の新人もデビューしていったが、 やはり世代的なスタンダードとしてはいわゆるアニメ声というフィーリングが80年代後半から業界を席巻していく。 そこで埋もれてしまったのが旧世代の声優。それもベテランでなく若手。そらベテランは技や味、実績があるし、 役自体老け役をやるんだから問題ない。だが若手は技も実績も、年齢的にも味が薄い。役も若い役なら合わない。 そういう点で苦労があったんじゃないか。
そこで現れるのがアングラアニメ・・・いわばエロアニメの世界。 80年代はアニメ業界黄金期として、技術や時代により表現の幅が広がり、新たなマーケットとして 様々な世界に突っ込んでいった。その中の一つとしてのエロアニメ。 1983年に世界初のオリジナルビデオアニメとして鳥海押井監督のSFアニメ「ダロス」が発売され、 翌年84年にはエロアニメ界のパイオニアであり金字塔である「くりいむれもん」シリーズが始まる。 安藤ありさは第一作目から数多くのエピソードに登場。以降氾濫する多数のエロアニメにも出演していく。 これは芸の肥やしだとか、飯を食うためだとか、面白そうだとか、まあ色々あるんだろうが、 今に続くエロ仕事のパイオニアであるという意味で業界史に残る業績だったんだろうと。 ちなみにくりいむれもんの主役は同期の及川ひとみ、安藤ありさは親友役で登場。 エロアニメ黎明期ということもあって、それなりの売れっ子も登場するが、基本は安藤ありさのような癖のない安定感ある若手が活躍。 それは今でも変わらないか。 話戻すと安藤ありさのどこか華のない、しかし癖もない安定したちょうどいい声ってのはここに来て重宝される。 それまでは・・・それまでもクソもまだデビュー1年だが、表の仕事で言えば「若くてフレッシュ」な新人を育てよう、という業界のしきたりから来る活躍だった訳だけど。 面白いのはくりいむれもん出演以降、表の作品もそれに倣ったのかアダルティな役柄が増えていった。 つまり若くてフレッシュという無個性から、ある程度個性ある声優にジャンプアップできたということ。 85年六三四の剣では中学生ながら小学生の男子に授乳する杉子という印象的なゲストをやり、 87年幼獣都市では乳首を吸わせると分身の魔物を飲み込ませるというソープ嬢の役。 初期の芸歴を見ると、やはりこういう役への抜擢はアングラシーンでの活躍を見てのモノだったことは間違いないのだ。
84年以降、表の仕事はゲスト出演が主になり、入れ替わるようにビデオ作品(エロに限らず)での活躍が主戦場になる。 エロアニメ黎明期での活躍が認められたのか、85年で表名義では初のイクサー1への出演。88年から活躍が活発化。 主役級、助演格で言えば 孔雀王、花のあすか組、けっこう仮面、スパイダーマン、聖伝-RG VEDA-、魔宮戦場、永遠のフィレーナ、ハロー張りネズミ、ジョジョの奇妙な冒険、紅狼 88年から94年までの仕事。若手ベテラン含め豪華声優に囲まれての出演。 豪華声優=新世代のアニメ声が多いんだが、書いたように安藤ありさは旧時代の感じなんだよね。 彼女の旧時代の、決して華やかでない声質と演技が、いいアクセントになっているということなのだろうか。 花のあすか組とかけっこう仮面は1人新劇俳優がいるみたいな感じだ。70年代、80年代の洋画声というのかな。 ただ豪華声優の中に一人安藤ありさというあまり知られてない声優が大役をやったりしてるってのは面白い現象だよな。 クレジット見ると錚々たるメンバーの中にいるわけ。表の仕事が彼らに比するものではないが、アングラシーンでの実績は豊富。 そういう根性なのか力なのか、とにもかくにも実績で獲得した芸歴なのだ。 アングラシーンでの実績からこういう活躍があったのかもしれないが、そこには音響監督の抜擢があったと思う。 一番大きく関わっているのが松浦典良。作品のよし悪しはキャスティングで90%が決まるという言葉で知られる硬派の音響監督で 安藤ありさとはデビュー作のプラレス3四郎からの付き合い。 その後はトゥインクルハート 銀河系までとどかない、聖伝-RG VEDA-、一本包丁満太郎、永遠のフィレーナ、ハロー張りネズミ、ミネルバの剣士 と脇役、助演、主役と短期間の内に組んでいる。やはり育てようとか味を見込んでということだったのだろうか。 次に本田保則。 最初はイクサー1、その後、孔雀王のヒロイン、サーキットの狼II モデナの剣 、そしてスパイダーマン&アメイジング・フレンズでのファイヤースターという大役。 そして元声優マネージャーであるなかのとおるとは 爆走兄弟レッツ&ゴー!!、けっこう仮面で。 他に音響コーディネーターやらの肩書で Call Me トゥナイト、孔雀王2 幻影城、孔雀王3 櫻花豊穣、D-1 DEVASTATOR、紅狼 も担当している。これらは他に音響監督がいる。(山田悦司とか)
でビデオ作品での活躍が続く中、10年ぶりにTVでの準レギュラーも決まる。それがあずきちゃんの主役の母親役だった。 もし安藤ありさの芸歴にケチが付くとすればここだろうね。あずきちゃんのボーイフレンド勇之介の母親役、中々いい役なんだが、 この作品、95年、96年、97年と3期に渡って展開するわけだがその内の第二期、96年に謎の休業。 病気なのか出産なのか何なのか色々不明だが、この時だけ代役を立てている。 で、この母親役なんだが、第一期は出番少ないんだよ。40話近くある中で5回出たかどうか。 あずきちゃんと勇之介が主役で、勇之介に絡むエピソードも当然多いから母親の出番もそれなりにあるんだが、 それにしても第一期は少ない。印象的な出番も少な目。 そう、問題はさ、第二期になってめっちゃ活躍するんだよね。40話ぐらいある中で20話ぐらい登場。 アニメあずきちゃんもノっている頃で、サブキャラクターたちの活躍が目立つようになった時期なんで、勇之介の母親も目立ってくる。 しかも第二期終盤に唯一の主役回があったんだよね・・・どうしたんだ安藤ありさ!というか・・・。 復帰までちょっと待ってやれよ思ったりもしたんだが・・・どうせ第三期には帰ってくるんだから。 また悲しいのは代役の方がデビュー直後ぐらいの人でね・・・。10数年色々やってきて掴んだ役がほぼ新人に代役されるという。 まあ安藤ありさの問題でもあるんだろうが、これが役者稼業の難しい所ね。 魔女っ子チックルでヒロイン役の麻上洋子が病気か何かで最終回だけ潘恵子の代役が立てられたりとか、 セーラームーン第一期でうさぎ役の三石琴乃が終盤病気で休業し、最終回までを荒木香恵が代役やったり、 東京ミュウミュウのミュウレタスに決まっていた浅田葉子が出産により降板したりとか・・・。 第三期では復帰して、40話近くで10話ぐらいの登場に落ち着いたんだけど、目立つエピソードも多く それなりに満足できる。しかしやっぱ画竜点睛を欠くという感じで・・・俺的にはちょっと悔いだな。 ただ第二期終盤の頃には爆走兄弟レッツゴーでRという準レギュラーキャラで登場しているので、 復帰できなかったことはないと思うんだが・・・。 この役を三期通してやれば、20代前半の清楚ヒロイン期、20代後半のアングラ女王期、30代前半のビデオヒロイン、 そして30代後半の母親役・・・キャリアの到達点という感じで締めれたんだろうが、ちょっと間が悪かったな。
その後は目立ったキャリアはなく98年にエロアニメ「学園ソドム2」で過激に、2000年以降は準レギュラー的にザ・シンプソンズでシェリーテリー姉妹という たまに喋る超個性的なキャラを散発的にやるぐらい。 ただ不思議なのはジョジョの奇妙な冒険のOVAのホリィ役が前半部を後年に製作した際、別の人に変わっていたこと。これも何かあったのかしらんが。 そして2007年「ザ・シンプソンズ MOVIE」のソフト用吹き替え、ゲストのオリジナルキャラ役で引退。 81プロデュースには2007年10月まで籍があったが、2007年10月30日にソフト用の吹き替えが行われたらしいので、 ちょうどいい区切りだということだったのだろうか。 冒頭終盤に出てくるゲストの少年を上手く、モブの少女役で往年の70年代らしさを聞かせる。 一応これだけのキャリアがありながら引退するというのは、やはり子育てだとか、これ以上続けていても、 というキャリア上の問題だとか色々あるんだろうが、珍しいケースかもね。他に川島千代子ぐらいかな。 あずきちゃんでケチが付いたとか書いたけど、しかしあずきちゃんという世界で主役の母親という準レギュラーを持ったという事実 があるだけでいいのかもしれない。
なんだかんだ安藤ありさはいいキャリア持ってるんだよな。 無個性だとか、ちょっと古いだとか、華がない、にも関わらずそれなりのチャンスがあったのは 彼女の人柄なのか実績なのか、時代が良かったのか・・・そのすべてだと言っていいかもしれん。 業界入りした80年代はやはりアニメ黄金期であって、後世に残る、いわば日本アニメのスタンダードが多々登場。 デビューしたプラレス三四郎は80年代初期のアニメブームの若さを感じるし、ふしぎなコアラブリンキーは往年の名劇的な素朴さを、 そしてアイリ役で出演した北斗の拳はまさに日本アニメのザ・看板的作品。塩沢兼人演じるレイの妹として、悲劇と情念を演じる。 81プロデュースの出演欄では代表作として一番上に置かれていた。ある意味これに出演した時点でいつ辞めてもいいぐらいのデカいキャリアだ。 ここまでで典型的なヒロインキャラクターをすでに網羅していることが分かる。勝気なヒロイン、フツーのヒロイン、悲劇のヒロイン。 そうするとアングラに潜って別の方向性を模索するのは当然。 既にここまでで十分なキャリア、滑り出しなんだが、続いての快挙はやはり「くりいむれもん」一作目に出演しているということだろう。 歴史的な一本。寺沢今日子という主人公の親友役として、同じく親友役の津野田なるみと共に性の遊戯に誘ったりなんだったり。 そこからは多くのアダルトアニメに登場。これによりアダルティなイメージがつき、87年の劇場アニメ「妖獣都市」でのソープ嬢はその流れの代表作と言える。 ビデオアニメでは多くの出演作があるんだけど80年代では、当時OVA界の象徴的作品とされるイクサー1のセピア役が代表的。 90年代ではけっこう仮面の高橋真弓が永井豪アニメのヒロインの声ではトップクラスにしっくりいく声で個人的に決定打。 そして永遠のフィレーナは初主演作ということで重要。男に育てられた女という剣士の役。原作者の首藤的には気に入ってないらしいアニメらしく、 まあ作画的にも演出的にも突出したものはないが全6巻続いた。役者としての一つの到達点だろう。 最も知名度の高い役はOVAジョジョの奇妙な冒険の空条ホリィであることは間違いない。90年代OVAの中でも頭一つ抜けた超クオリティのOVAであり、 また超豪華キャストの中で彼女が救い出す対象としてのヒロインに選ばれたのは、運の良さというか、何かキャリア的な勲章ということなんだろう。 あずきちゃんもいいが、この作品が一つの勲章だと見ていい。そしてあずきちゃんの歯抜けだが演じた母親役のうまさ。プラレス三四郎から15年、演技的に成熟した安藤ありさを見ることができる。
終止符としてのシンプソンズ。TVでの準レギュラーも面白いが、映画に関しては、最初TVとは違うタレント吹き替えでの公開が決まり、 それに抗議したファンにより、ソフト化の際にはちゃんとした声優による吹替が製作されたという経緯がある。 ちゃんとした声優としての起用、での安藤ありさってので声優の証明を果たし、引退。うん、ドラマチックに書けばこうなる。 もし彼女の時代にアングラシーンがなかったらここまで伸びていたか、つまり北斗の拳以降の活躍があったかと考えれば、やはり薄かったんじゃないかと思う。 そこでの活躍を、演技的心理かファン心理かーーそういう情だろうが熱気だろうが、そういった流れでオファーがあったとするならば俺は健全な業界だったと思うよ。 本来業界ってのはこうあるべきでね。頑張ってるやつ(楽しんでるかも)を引き上げたいみたいな。 まあしかし、今みたいにすぐネットで活躍わかっちゃう時代は難しいかもしれんけどね。当時の、いい時代での流れを体現しているわけだ。良い時代の良い実績だと言える。