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沢よし恵
今年の映画で一番の収穫は「愛の嵐」でした。洋画はほとんどロー ドショーでは観ていないので、ベストテンに投票する資格がありません。でも「愛の嵐 」 は100点満点以上です。 北川れい子
シャーロット・ランプリングが美少年のような硬質な色気を見せる『愛の嵐』は、期待が大きかったせいか、少しものたりない気もしないではない。彼女とダーク・ボガードとの間に横たわるナチズムを取っぱらってしまえば、似たような話は現実にゴロゴロしているし、大なり小なりセックスの形態は環境に左右されずに継続しないのだ。 サロメを想わせるシーンは圧感であったが、あのダンボールの中に、彼女につらく当る看守人の生首ではなく、ダーク・ボガートの青白くむくんだ生首が入っていたら、なお一層面白くなっていたと思うのだが、それがちょっと残念である。しかし、あそこまで追いつめられても、女が『阿部定』にならないところは、やはり男に対して西欧女は自立しているなとも感じたりした。 堤 正志
「愛の嵐」のサドマゾセックスは、ナチスの神秘主義の表現として、もっとも反戦的なとらえ方である。真のナチズムは現在の市民社会の中に存在していること、そしてその根源は性だとしている。 フロイト→ライヒの引用共感。 須藤久
『愛の嵐』は観ながらベストに入れるべきか ワーストに入れるべきか迷いに迷った。 これ危険な映画はないだろう。しかし、結局、 「痛み」をこれもまた危険な程に表現していると云うことで『ルシアンの青春』を追いやって四位に咲いた。 萩原朔美
徹底的に娯楽に徹したのか、男と女のドロドロした関係のものが好きなので、1位と2位はすんなり決りました。 「愛の嵐」 は、何といっても再会した時の2人の抱擁シーンはすごい。あれぞリアルな人間関係を見てしまったもの同士でしか分らない行為、と言いたくなる。それとガラスを踏むシーンなど最高です。しかしまあ、憂鬱な映画でもあるけれど愉快映画、退屈な映画、泣ける映画、そして憂鬱な映画と、色々パターンはあるけれど後々まで心の中心に引っかかってゆれ続けるのは憂鬱な映画ですね。甘っちょろい恋愛映画などを見ると腹が立ってくるけれど 、この「愛の嵐」は本当の本物だから、まいった。 谷口ゆい
心情的共感。 愛の嵐に酔った方は多かったでしょうがガラス入りのジャムを食べるとそんなに悪酔いするものかネ。 そりゃ一度味わった苦さは苦ければ苦いほど、甘く感じましょうが、とってつけのナチ状況を とっぱらえば、二度目三度目は観念のゴッコにすぎません。ましてDボガードはナチではないから、甘ければ甘いほど、ガラスがほしくなるの。それに較べればゴッコはゴッコでも「ダーテーハンタ ー」のベトナム遊びの方が本物でしょう。 藤井克彦
愛の嵐。これはナチズムは人間性に普遍のものだと我々に語りかけてくる作品なのだろうか。これは政治意識から完全に離れたところでナチズムを語っているのだろうか。 或るいは、それは宿命の恋人たちが再び出逢い、エロティシズムの極致の果てに死ぬドラマを異様に効果あらしめるための道具立ての背景なのだろうか。ここにあるのは確かに無意識の裡に醗酵する絶対愛なのだ。「魔笛」 が演奏されている歌劇場で、ルチアに注ぐマックスの眼が・・・モーツアルト・追憶の家の表示があるペーブメントを彷徨するルチアの心がその存在を異様に美しく呈示して くる。この二つのシーンには魂を吸いとられるような戦標があった。この映画には芳醇な陶酔感があったのである。